SS8-9、スゥの1日~スゥ、ブローレ商会を探索する~
ランファンが商談交渉してる中、スゥはランファンも気付かない内に肩から降り、ブローレ商会の館内を探索していた。
数体に【分身体】を作り半分は監視カメラ役として、もう半分は探索役として、それぞれ分散した。
探索役のスゥは移動速度を上げるため、人形を取った。これで数倍の速さで移動が出来る。
もちろん完璧に全部のスゥが隠蔽をし行動していた。探索する内に分かった事が一つある。
この館は、上の階よりも地下に延びている事がスゥの独特な【探知】により解明出来た。
だけど、その地下に行くためには【探知】で調査しても複雑となっており、これはスゥに骨はないが骨が折れる仕事となる事は明白だ。
だけど、自分の主に手を出した事を後悔させてやりたい一心とカズトに褒めて貰いたい一心で、絶対に地下を解析するという思いだけで動いている。スゥには、カズトだけ尽くしたいという感情しかない。
広大な地下が広がってる事は判明したが、その地下に入るための扉が見つからない。それも地下に繋がる通路の候補が複数あり、複数のスゥがいても時間が掛かりそうだ。
およそ一時間後、地下に繋がる扉があるであろうフロアを、どうにか特定出来、そこまで見つからずにやって来た。しかし、どうにも静かな事が気になる。
だけど、たどり着いた先は一見、何もない壁にしか見えない。が、スゥの【探知】だと、この先に通路と地下に繋がる階段がある。
しかし、扉が見つからない。スゥの【探知】では、仕掛けまでは発見出来ない。そこまでレベルは高くない。
『コチラブンシン1ゴウ、チカニツナガルデアロウツウロヲミツケタ。ソクゲンバニコレタシ』
『『『『『リョウカイ』』』』』
散らばっていた人形の【分身体】が集合し、向こう側に通路があるであろう壁を探り始めた。
ベタベタと壁の一部を触ってる内に【分身体】の一体が偶然ボタンらしき物をポチっと押した。
ダンジョンでならトラップだろうが、隠し扉が音を立てて開いた。【探知】通りに壁の向こう側は通路と階段がある。
秘密の空間らしく薄暗く最低限の証明しか点灯していない。だけど、こんな明るさなら水妖族なら問題無しだ。
『ススミマショウ』
『『『『『リョウカイ』』』』』
人形全員が秘密通路に入った途端に後ろの隠し扉は自動的に閉まり、ますます薄暗くなった。
通路は階段までしかなく、後は階段を降りるしかない。見た限りトラップの類いは確認出来ないが、ここは敵の腹の中みたいなモノだ。
油断大敵、慎重に歩みを進める。まぁもしも捕まってしまってもここにいるのは【分身体】だ。
スゥの任意で消したり出来る。再度忍び込むには難易度が上がるかもしれないが、場所が分かったのだ。後はどうにでもなる。
『モウソロソロシタニツク』
階段の下の方から明るさが見えて来る。階段を抜けた先は、上の階よりも広い空間が拡がっており、様々な種類の獣人族が働かせられている。
首に首輪らしき物体が着けられており、おそらくここの獣人族は、全員が奴隷なのだろう。
だけど、犯罪奴隷という訳ではなく血の気の色は良さそうで、きちんと食事を与えられてる様子だ。
その上で奴隷の獣人族よりも目立つ物体が、この広い空間の真ん中に鎮座している。
『アレハイッタイ?』
スゥの目には、とてつもなく大きい魔道具に見えるが、何のための魔道具までは理解出来ない。
もしも、ここにカズトや他の勇者がいたら別の意味で驚いたに違いない。
何故なら、まるでというよりそのまま…………………何かを大量生産する機械なのだから。
次から次へ獣人族が流れ作業するためにコンベヤが流れている。
その先には、プレス機や一定量の液体を瓶詰めする機械やら数え出したらキリがない。
ただし、これらに共通する事があるとすれば、それは………………この世界の物ではない事だ。
この事は、スゥの目から見ても明らかであり、魔道具という言葉で片付けるには、余りにも異質だ。
『イキナリオオアタリ』
『コレデアルジニホメテモラエル』
『ヤッター』
距離が離れてる分、時間差はあれど今【分身体】が見てる風景は、レストラン"カズト"にいるスゥ本体に直接届いている。
もっと詳しく調査しようと獣人族が密集してるコンベヤ付近へと足を運んだ。
警備が薄いというより警備態勢が敷かれてないお陰で簡単に近寄れた。
獣人族は、それぞれ自分達が担当してる部品を黙々とコンベヤで流れて来る物体に取り付ける作業をしている。
『コレハナニヲツクッテルノカ?』
『アルジナラワカルカモ』
【探知】で調べた時は、このフロアだけではなく、まだ下にも続いていた。
このフロアに、数体の【分身体】を置き残りは下のフロアへ目指す事にした。




