SS8-4、スゥの1日~ブローレ商会~
すみません。少し遅れました。
カズトが男どもを解放してから数時間後、とある男の元に部下から情報が届いた。どうやら、この男がカズト暗殺計画を企てた黒幕らしいブローレ商会の会長であるブラン・ブローレ、その人である。
いかにも、金品を蓄えていそうな風貌で両手の十本の指全てに一般国民が一生働いても目に出来ぬ程の豪華な宝石を装飾された指輪を装着されている。
体型はいかにも毎日豪華な物を食ってるのだろう。肥えて太りに太り、端から見たら豚に見間違えられるかもしれない。だけど、これでも人間なのだ。
「ふん、あのバカどもが失敗しおって」
大企業の社長室と思わせる程に、ただただ広い部屋の中には絵画や宝石等々の装飾品が飾れられ、窓際には偉い人が鎮座するためだけに作製したと言っても過言ではない彫刻が隅々まで施された机と椅子が設置してある。
その椅子にブランは座り、ワインを片手にイライラとしている。今にでも額の血管が千切れる程に浮き出てる。
「ふん、まぁ良い。どんな事をしても、あの若造が砂糖と胡椒を仕入れてるのか突き止めてやるわい」
カズトがレストラン〝カズト〟を出店してから、砂糖と塩の流通が、まだ一割も満たないが明らかに多くなっている。
今までは、ブローレ商会が砂糖と胡椒の流通を独占していた。流通管理する事で、売買価格をある程度好きなように弄る事が出来る。
販売価格は普通、例外はあるが仕入れ価格のおよそ三倍にするのが普通だ。
例えば、砂糖と胡椒の原価、運送費や販売員等の人件費、店舗の維持費を合わせたものが販売価格となる訳だが、これをピッタリにして売れば儲けは、ほとんど出ない。
なので、普通はここに少し色をつける訳だが、ブランの手に掛かれば、およそ5倍~10倍の値に吊り上げても売れる。それだけ、砂糖と胡椒は金がなる木なのだ。
それが独占出来なくなるのは、ブランにとって由々しき事態だ。大量に出回れば暴落する恐れがあり、価格の調整がきかなくなる。
「おい、誰かおらぬか」
「旦那様、何の御用でしょうか?」
「ジョル、失敗したアイツらに刺客を向かわせろ。それと例の件の調査を急がせろ」
「はっ!直ちに」
ブランの命令を聞き颯爽に会長室を後にする執事風の老紳士であるジョル。何でもそつなくこなすブランの右手と言っても過言ではない。だが、それにブランが気づいてるのかは、また別の話。
「おい、今日の売り上げはどうなっておるのだ!」
「はっ!こちらになります」
ジョルの補佐をやってるキランがブランの声がしてから数秒内に会長室へ入り、売り上げが書かれてる資料を手渡した。
普通なら読破するのに軽く一時間は掛かりそうな分厚い資料を、ほんの数分で読み終わり、ブランは大きく息を吐いた。
「全体の砂糖と胡椒の売り上げが5%も落ちてるか。だが、まだ許容範囲なのが救いか」
机の上へ無造作に資料を放り投げる。何枚か床に散らばる資料をキランが拾い上げ、机の上にある資料と一緒に綺麗に纏めブランの指示を待つ。
「他の品は現状維持、異常があった場合につき伝えろ。それと、いつものを呼べ」
「はっ!かしこまりました」
キランが会長室から退室して数分後、獣人の一種である猫人族の女性三人が入って来た。
露出が結構ある衣服を着用し、首には奴隷の証である【隷属の首輪】が嵌められていた。
そう、彼女らは奴隷なのだ。ブランは、大の猫人族好きでも知られており、専属の奴隷商を抱えているほどだ。
「おぉ、来たか。ほれほれ、近くに寄れ」
「「「はい、旦那様」」」
三人の猫人族の女は、太腿の上や腕の中へスッポリと納まった。
「むふふふふ、良い毛並みをしてるな。良いものを食べてる証拠だな」
「はい、旦那様のお陰様です」
「旦那様のお陰様で生きていけます」
「旦那様のためなら何だって致します」
「そうかそうか、お前達可愛いな」
ブランの頬がチーズのように蕩けてる。もう三人にメロメロだ。端から見ても下心丸出しなのが分かる。
頭を代わる代わる撫で続ける。三人とも嫌がる素振りを見せずに、むしろ気持ち良さそうに体を擦り合わせてる。
ブランの外見は兎も角、猫人族の奴隷に関しては甘々だ。猫人族の自由は、ほぼ失くなるが、その代わりに衣食住はしっかりとしている。
一般的に貴族や王族しか入れない風呂も完備されており、毎日のように入浴させれれば、今頭を撫でられてる猫人族の髪質や肌艶になるのも納得出来るものだ。
「今日の疲れも吹き飛ぶわい。ほれほれ、もっと近くに寄れ」
ブランのゴツい手が、両側にいる猫人族の尻尾を厭らしく先っぽから付け根まで擦るように時間を掛けて触れていく。




