SS1-29、帝国の三勇者~リンカ、風の奥義を使う~
「なっ!俺の拳を止めた事も驚きだが、何故吹き飛ばないんだ!」
「さぁ?何故かな?」
リンカは足裏から杭を地面に伸ばし刺していた。これが無かったらいくら防御に優れた土属性の聖拳でもリンカの体重では吹き飛ばされていた。
防御にステータスを割り振れられる分、速度ががた落ちになる。ノックバックされちゃたまったものではない。
「でも、ボーッとして良いのです?これで捕まえたのですよ?」
ガシッとジャックの拳を捕まえ離さない。当のジャックは力のある限りリンカから逃れようと体を引いてるが、まるで地面ごと引っ張ってる感覚でびくともしない。
それならばと片腕と両足で殴りと蹴りを連続で与えてるがリンカは、びくともしない。まるで山の梺を殴ってるみたいにジャックは感じている。
「それで御仕舞いなのです?なら、今度はこちらから行きますのです【加重岩拳】」
ジャックの拳を掴んでるのとは反対の腕を振り上げ渾身のストレートパンチを繰り出した。
メキメキバキバキボキボキ
リンカの拳がジャックの腹に食い込み、何やら折れるような嫌な音が響き渡る。
端から見てもただのストレートパンチに見えるが、その威力は絶大で戦車を一撃で壊す程に匹敵する。
「グハァッゲロブロバラァッ」
凡そジャックは数十m程ぶっ飛び、悶え苦しんでいる。リンカによると手の感触から肋骨5~6本粉砕と内臓破裂に等しい程のダメージを負ったとのこと。
「ゲホゲホ、ハァハァ死ぬかと思った」
ほんの2~3分程でジャックは立ち上がった。普通なら重症で病院送りになってるはずだ。それどころか即死してもおかしくはない程の傷であった。
「予想以上よりもタフなのです」
「いやいや、正直なところ危なかったぜ」
ジャックのタフさに観覧してる三人は、「「「いやいや、普通死ぬから」」」と内心で呟いた。
リンカも仕留める積もりで放った一撃だったにも関わらず、何も無かった風に立ち上がったジャックに対して驚きを通り越し呆気にとらわれている。
「タフさならSランクにも匹敵するのです」
「お褒め頂きありがとよ」
「バカにしてるのです」
本当はあれよりも強力な土の聖拳:ガイアの技術があるにはあるが、ギルド地下を破壊しかねない。
そうすれば、いくら死なない結界に覆われようともジャックは甦る事はなくなる。ジャック自身の強化魔法による治癒でも無理だろう。
なので、リンカは土の聖拳:ガイアを解除し代わりに風の聖拳:カミカゼを再び形態変化させた。
「喰らいやがれ【烈風脚】」
「甘いのです【烈風脚】」
お互いの足が交差しビュービューと二人を中心に風が荒れ狂う。小さな台風の中にいると錯覚してしまう程に観覧してる三人のところまで突風が来ている。
「ほぉ、凄いものだねぇ」
「この中で呑気に紅茶を飲んでるギルマスの方が凄いと思いますわよ」
「何を言ってるんだい?こんな戦い中々見れるものじゃないよ」
「世の中は広いぜ。こんな変人がいるんだからよ」
「ワタシの事を言ってるのかい?」
こんな台風並みの風の中で平然と紅茶を優雅に飲んでるクラインしかいない。
当のクラインは特に気にする様子もなく、リンカとジャックの戦いを観戦している。
やはりギルドマスターになるだけあって、リンカとジャックの速度に視線がついていってる。
「ちっ、怒ると思ったのによ。つまらないぜ。お前、強いだろ?」
「挑発には乗らないよ。引退して身体は鈍ってるんだ。メグミちゃんと戦っても負ける事は目に見えてるさ」
「ちゃん付けで呼ぶな!」
「メグミ、止めなさい。失礼でしょ」
メグミの頭にココアの拳骨が落ちた。歌の勇者らしく音速の拳骨で端から見ると何をやったのか目に見えない。
メグミが頭を押さえ静かになった中、リンカとジャックの戦いはもうそろそろ決着がつきそうな終盤に差し掛かっていた。
「ハァハァ、リンカのお嬢ちゃんもタフじゃないの。息一つ乱れてないなんて」
「こんな程度で息を乱れていたら武士道の恥なのです。もう限界なのです?なら、決着にするのです」
リンカがそう宣言すると、リンカを中心とした数mの範囲で大気が震え出した。
リンカの両腕両足に風が渦巻き、そこだけ小さな旋風と化している。
「風の聖拳:カミカゼ奥義【四風烈嵐陣】」
「えっ?消え━━━━」
ジャックは最後まで言えなかった。
リンカの右フックがジャックの顎にクリーンヒットし、数m浮いた矢先にリンカの右腕に渦巻いていた旋風が無くなり、その代わりにジャックを逃がさないよう旋風から進化し小さな竜巻で拘束している。
宙に浮いたままジャックは動けないでいる。




