SS1-21、帝国の三勇者~黒之槍と黒之剣~
「さぁさぁ、痛がってるメグミは、ほっといて実演やりましょうか」
「可愛い見た目をしといて、お主も酷いのぉ」
「ゴンさん、見た目で判断したら痛い目見ますわよ」
【神獣化:斉天大聖】を発動したリンカの横には、予備として追加で大量に安物の槍に加え剣が置かれた。
その大量な槍の中から一本を掴むと槍に変化が起こった。槍の刃先から柄の後端まで、まるでドス黒い血管が走るかの如く黒い線が表れた。
リンカの後方で、その様子を見てる四人は、その禍々しさに息を飲む。ただ見てるだけなのに、肌がチリチリと焼けるみたいに痛みが走るような感覚に陥る。
「おい、本当に大丈夫なのだろうな?」
「その気持ち分かるぜ。俺も初見の時は、ビビったもんよ」
「大丈夫だと思いますが一応障壁を張って置きます。【音響障壁】」
ココアは、他の勇者と違い属性系の技術が使えない代わりに音や声を媒介にした万能性な技術が使える。
故に〝万能〟という二つ名で呼ばれる事が屡々ある。
「流石、〝万能〟やないな。こんな障壁見た事あらへん。どんな属性にも属しておらん」
ゴンゴンと自分達の周囲に張られた障壁を叩き興味津々に確かめるルカールカ。
土精族は、武器・防具だけでなく種族間で苦手な土以外の魔法やそれ以外の超常的現象に興味津々な種族であるのは、あまり知られていない。
「俺の相棒でもコレを破るには一苦労しそうだぜ」
ゴンゴンとゴンも障壁を叩く。
「簡単に破れるようでは、ワタシの立つ瀬がありませんわ。でも………………今のリンカが放つ攻撃を防ぐ自信はありません」
「リンカ、こっちは何時でも準備OKだぜ。一発ぶちかませ」
「ギャォォォォォォォ(黒之槍・爆砕陣)」
今のリンカにメグミの声が聞こえてるか不明だが、槍投げの選手の要領で体を捻り、体全体を使って黒い線に染まった槍を投げた。
リンカの手元から離れた槍は、ほんの一秒足らずでパァンと音速を越えた時に聞こえる音が聞こえたと思いきや、数秒後には地下の端まで到達した。
槍の刃先が端に到達した瞬間、爆弾が投下されたように爆発した。もしも、ココアが障壁を展開してなかったら爆風により皮膚が焼け爛れたかもしれない。
「「…………………」」
「うっはははは、流石だぜ。何度見てもすげぇな」
「全くです。地下が崩れるのではないかとヒヤヒヤしましたが、大丈夫なようです」
ゴンとルカールカは、あまりの衝撃にアングリと口を開け固まってる。威力だけ捉えたら最上級魔法と対して変わらないから、二人が固まるのは無理はない。
「おっ、今度は剣を試すみたいだぞ」
槍の次に剣へ手を伸ばすリンカ。槍と同様、剣も剣先から柄の尻まで黒い血管みたいな線が全体に走る。
これも槍と同様、あんな凄まじい爆発が起こると考えるだけで恐ろしいのかゴンとルカールカの二人は、障壁が張ってるのに後方へ下がる。
ココアとメグミも若干だが冷や汗を掻いている。リンカが持つ剣に威圧でもされたかのようだ。
「ギャルルルルル(黒之剣・殲滅の黒光閃)」
剣道でいうところの両手持ちによる上段の構えから時間がスローモーションになったと錯覚する程にゆっくりと振り下ろす。
振り下ろしてから数秒後に黒い斬撃が周囲の空間が、まるで引き裂かれるように歪みながら前方へ進んでいく。
向こう側の壁に斬撃が到着すると、槍と同じかそれ以上の爆発音が鳴り響き爆風により巻き上がった砂埃が、こちらまで振り注いでくる。
ココアの障壁により爆風は届いてないが、砂埃で周囲の様子とリンカが無事か分からない。
「リンカ無事か?」
「ギャル(無事)」
「どうやら無事のようですね」
「今ので伝わるとか、お前ら半端ないな」
「地下が揺れるとか、今までなかったぜ」
勇者三人に対してゴンとルカールカの二人は、驚き半分呆れ半分で三人を見詰めている。
数分後にようやく砂埃が晴れ、リンカが何事もなく無傷で立っていた。槍と剣を扱う前と比べると、今だに黒いリンカのままだが別人のように雰囲気が様変わりしている。
あの黒い霧の薄気味悪さ失くなり、その代わりにリンカの全容が視認出来るようになった。だが、手元にあった剣は跡形もなく塵となり、崩れ落ちる。
まるで小動物のような可愛さにゴンとルカールカは、目をパチクリと何度も黒リンカを見た。
「障壁を解きますね」
ココアが障壁を解いたと同時に黒リンカが寄って来た。あまりの可愛さにルカールカは我慢出来ずに頭をナデナデと撫で、自然に口角が上がり微笑んでしまう。
「こんな妹が欲しかったんだ。こいつをくれ」
「ダメです」
「ダメだな」
リンカの可愛さを理解してる二人がリンカを手放す訳がない。
次回は、資格の試験が近いので休みとさせて頂きます。
更新予定は、10月6日になります。




