SS1-20、帝国の三勇者~黒きリンカ~
「たく仕方ねぇな。同じく風で相手してやるよ。風の聖槍ブリューナク【威風凛々】」
リンカの【風羽根靴】は、足元に一点集中し速度特化してるのに対し、メグミのは体全体を覆うものだ。速度も高めるが、どちらかと言うと防御を高める技術だ。
力を一点集中した技術と命中率を高めるために全方位攻撃する技術の二つがあるとしたら、どにらが攻撃力という観点のみで見た場合最も優れてるのか?もう言わなくても分かるだろう。
そう、リンカ側に軍配が挙がる。それに技術を発動した時間差で更に二人の距離が開いたのも大きい。
「リンカの勝ち」
「チックショぉぉぉぉぉ」
そして、リンカとメグミの差は縮まらず結局リンカの圧勝で勝負の幕は落ちた。
「速すぎるじゃろ!」
「流石は、カズトの妹だな」
勇者といえど相手は女なら、本気を出しての真剣勝負だったなら自分でも勝てるかもとゴンは淡い希望を持っていたが、リンカとメグミの追い掛けっこ勝負を見た後では勝負を受けようという考えは、木っ端微塵に砕け散った。
やはり勇者は勇者という事というのもあるが、リンカはカズトの妹だ。その勇者という血が体中に流れてると考えを改める。
「手加減でもしてるのかしら?何時もよりも遅いわね」
「フゥ~、リンカよりもココアの方が速い。多分、勇者として最速」
メグミよりも速く帰って来たリンカから自分よりもヒラヒラのアイドル衣装を着てるココアの方が速いと言われ、目が点になりながらもゴンとルカールカはココアの方へ振り向く。
「そんな速い私の攻撃を難なくかわして、攻撃をいれてくるリンカの方が凄いんじゃなくて」
「……………其れほどでも…………あるかな」
ココアに褒められ頬を赤く染めテレてるリンカ。そんなところにやっと帰って来たメグミが近寄って来る。
「ハァハァ、あぁ~クソ、流石に速さでは負けるか。リンカ速すぎるだろ」
「メグミが遅過ぎるのです。これでご飯驕り決定」
「くっそぉぉぉぉぉ」
よっぽど悔しかったのか、メグミは地面に膝をつき項垂れながら地面を叩く。その叩いた跡が徐々に凹み続け、クレーターを形成するのが目に見えて明らかなので、ココアが無理矢理にでもメグミを止めた。
「何か剣や槍ありますか?金を払いますので」
「金は良い、この中から好きなのを選んでくれ」
「では、これにします」
リンカが選んだのは、如何にも初心者冒険者が選びそうな安物の槍だ。一見、鋭利そうで何でも貫きそうな見た目だが、それは外見だけだ。
使われてる素材は、クズ鉄で最低ランクと言われても仕方ない出来だ。ただ、柄に装飾品で彩られてるに過ぎない。見かけ倒しも甚だしい。
「それで良いのかい?」
「はい、大丈夫です。どうせ壊れてしまいますから」
リンカが、これから使う技術は代償として今まで例外なく使用した武器を灰と化す。
揶揄でも何でもなく、言葉通りで刃先から柄までボロボロに崩れ修復不可能になる。
もしも、例外があるとすれば破壊不能とされる聖武器のみだ。だが、聖武器の特性上それは無理だ。
「ではでは、いきます。申の聖拳テナガザル裏技術【神獣化:斉天大聖】発動」
発動した途端、リンカの身に異変が生じた。黒い靄がリンカの体にまとわりつき、包んでいく。
人形なのは分かる。それがリンカなのか、それとも別の何か化物になってしまったのか?異様な魔力がリンカだったモノから、ヒシヒシと四人の元へ流れ伝わってくる。
「おい、アレは大丈夫なのかい?!まさか、魔物になったと言わないよな」
「おい、本当に大丈夫なのか?嬢ちゃん意識を保ちな」
黒い化物と化してるリンカにゴンとルカールカは、心配そうな面持ちで声を掛けるが立ったまま反応がない。
リンカにまとわりつく黒い靄は不気味に蠢き、リンカが無事なのか分からない。近寄ろうにも異様な魔力によってリンカに近寄れない。
近寄ろうすると、刃物で切り裂くような痛みが走り常人では先ず近寄れない。
「リンカは、あぁ見えて無事ですよ。そろそろやるみたいなので、もっと離れてくださいね。危険ですので」
「初めて見ると、危険度上位に位置するような魔物に見えるよな」
黒いリンカが足元に転がってる石を拾い指で空中高くへと弾いた風に━━━━見えたかもしれない。
四人ともリンカが石か何かを拾うところまでは、ハッキリと目で追えてたが、速すぎて石みたいな何かを弾く場面を追えてない。だから、曖昧なのだ。
バチン
「痛ぇぇぇぇぇ!」
「「!!」」
「メグミ、石が当たりました?」
後頭部を押さえながら地面に蹲るメグミ。いつもタフで元気が取り柄のメグミが涙を流してる。後頭部には、端から見ても痛そうなタンコブが出来ている。
当たったであろう石コロは、既に消し炭と化し証拠が残ってない。
明日、コロナのワクチン摂取なので、もしかしたら次回の更新は休むかもしれません。




