SS7-21、女婬夢族ジブリールの居場所~3つの選択~
「更に強くなったか?」
『ギャォォォォォォォォ』
風の上位精霊の風貌が一段と大きくなった風に見える。討伐ランクとしたら、おそらくSランクは越えてるだろう。
こんな化物が、このまま世に解き放たれたら大災害間違いなしだ。
一番理想的なのは魔力切れで消えてくれるのが苦労しなくて済む。のだが、それは現実的ではない。
あんなに濃密な魔力は、そうそう使い切れるモノではない。やはり、倒すしか道はないのかと笑みが溢れる。
久方ぶりにこんな強敵に出会えたのだ。心が踊るというモノである。うん、実に楽しいのだ。
やはり、俺は戦いが大好きでしょうがない。あぁ~、クエストを放棄して永遠と戦っていたいと思ってしまう。
だけど、楽しい事は直ぐに終わってしまうモノである。楽しいけども、終わらせなくちゃならない。
「更にギアを上げるか。【限界突破×30%】」
戦いを楽しむため態とステータスを自ら下げてる。そうしないと直ぐに相手を殺してしまうから。
ただし、強すぎる力には代償が付き物。俺の《正義》の能力自体に一種の制限が掛けられてる。
それは、『無関係な民を一切傷付ける事は出来ない』という制限だ。
ただし、それだけを護れば圧倒的な強さを奮えるという解釈にも取れる。
まぁどれだけ強いのかは自分自身さえ知らない。今まで限界を向かえた事はないのだから。
あくまで【限界突破】は、戦闘を楽しむための自身に掛けてる枷に過ぎない。
それをほんの少し解いだに過ぎない。因みに【限界突破】での最高値は500%だと思うが《正義》自身もそこまで使用した事がないので分からない。
『ギャオオォォォォォォ』
「ほらもっとお前も本気になれよ【炎舞・序章:炎々武装】じゃないと、直ぐに消えるぞ?」
グングニルの刃に纏っている炎が自らの意思で《正義》の鎧になるように纏わりつく。
《正義》の一歩が地面を溶岩と化す程に《正義》の周囲の温度が猛烈に熱くなってる。この熱風だけで、一般の冒険者や魔物は立っていられないだろう。
「おらおら、上位精霊ってそんなものなのか?」
『ギャルゥゥゥゥゥギャオオォォォォォォ』
まるで悲鳴のようだ。灼熱の槍と鎧により風の上位精霊の体が削れ、その度に魔力量が低下している。
その度にミスティーナが魔力補充を行ってるが、補充分よりも排出量が多くて全然間に合ってない。
「もう良いか?ここまで来ると、もう楽しくなくなって来たな。これで決める【炎舞・二章:火星】」
グングニルの刃先に熱エネルギーを圧縮・一点集中させた。そこだけ圧倒的に温度が高いため、グニャリと空間が歪んで見える。
その代わりに、今まで纏っていた炎の鎧が無くなった。防御を棄て、攻撃特化に移行したと言っても過言ではない。
今のグングニルに触れたモノは何でも蒸発するだろう。
ガクガク
「あれは何なの?危険だわ。さっさと殺ってしまいなさい」
『ギャオオォォォォォォ』
風の上位精霊が《正義》に向かって振り下ろそうとするが、もう遅い。
ほんの少しグングニルの刃先に触れただけで風の上位精霊の体が吹き飛んだ。
正確には、風の上位精霊の体を構築していた風属性の魔力がグングニルの熱に耐えられずに周囲の自然へと還っていったのが正しい。
「なっ!わ、私の切り札が…………こんなにいとも簡単に」
「これで終わりのようだな」
「くっ、他の奴らが集まれば、お前ごとき………………楽々に殺してやるよ」
「それは、コイツらの事か?」
タイミング良く廃墟の扉が、ギィっと音を立て開く。そこには《正義》の相棒であるジブリールが立っていた。
「そっちも終わったようですわね」
「鱈腹喰えたか?」
「えぇ、見た目に反して美味しい精気でしたわ」
ジブリールの背後には、山積みされた何かがある。薄暗いが良く目を凝らして見てみると、皮と骨だけとなりミイラ化となった漆黒土精族達の山であった。
「こんな小娘にクズ共が殺られるなんて……………信じられない」
でも、現実は残酷だ。ジブリールの背後━━━━玄関の中には確かに漆黒土精気のミイラが山積みされている。
何回も目を擦っても、その現実は消えない。
「クスクス、そんな絶望に染まった顔………………好きですわ」
「まぁそんな事言うな。仲間が死んで絶望するヤツなんて居ない。さて、お前に迫られた選択は3つ」
「……………3つ?」
ジブリールからミスティーナに振り返り、三本指を立てミスティーナに尋ねる。




