SS7-18、女婬夢族ジブリールの居場所~《正義》VSミスティーナ
Sランク以上の冒険者になると、そこそこ有名になっていく。SSランクにもなれば、まるで冒険者というよりもアイドルに近いモノになってくる。
握手を求められる事もあれば、武器や防具にサインという名の刻印を彫る事が屡々ある。物好きとして決闘を申し込まれる事もある。十中八九、《正義》の勝利となる。
「それで俺がSSランクなら捕まってくれるのか?」
「そんな訳ないじゃん。こんな強そうな男をみすみす逃すミスティーナ様じゃないわよ」
なんだ?ただの戦闘狂なのか。あの目付きは早く闘いたくてウズウズしてるような、そんな目付きをしている。
自分の愛剣を剣先から根元付近までを舌で舐め回してる。明らかに戦闘狂の仕草だ。
「最近は、雑魚ばかりで体が鈍ってるのよね。もしも、ワタシに勝ったら、ワタシの体を好きにしても良いよ?」
「それは遠慮しとこう。お前ら全員をギルドにつきだすだけだ」
「ちぇー、つまらないな。あなた良い男なのに、ワタシの体を抱きたくないの?」
そこら辺の冒険者なら普通にお持ち帰りして直ぐに抱くかもしれないが、俺には間に合ってる。
「悪いな。俺には忠誠を誓った人がいるんだ。それに、俺には精神系の魔法とか聞かないぞ」
《正義》には、【全状態異常耐性】を持ってるため、どんな状態異常も効かない。相当珍しい状態異常なら、もしかすると掛かるかもしれない。
「何よそれ!それじゃぁ、ワタシの格好はどう思わないわけ?」
「いや、普通に目のやり場に困る程度だな」
伊達に千年は生きていない。それに近くに似たようなヤツがいるし、間に合ってる。
パチン
「もう腹が立ったわ」
ミスティーナが指を鳴らすと、服装が下着からビキニアーマーと変化した。露出的には、あんまり変化がない。
ただ、局所的に硬くなっただけに見える。魔法や技術が付与されていなければ。
「今から後悔しても遅いわよ」
「ほぉ、その後悔とやら見せて貰おうか」
負ける積もりは更々ないが、相手はSランクの盗賊団の頭だ。油断は出来ない。
相手の装備を観察すると速度重視に思える。部屋での細剣による突きもかなりの速度が出ていた。
おそらく、あのビキニアーマーにも何かしら速度を上げるような魔法や技術が付与されてるに違いないと推測する。
そうじゃないと、代えた意味がない。
「さて、俺も準備をするか」
【聖武器創造】にて短剣を二本生み出した。元々剣の勇者をやっていた事もあり、やはり剣が一番手に馴染む。
右手側の短剣の柄は薄い緑色で、刃は極限まで鋭く薄く
「名付けて聖双剣フウジンとスイジンだ。うん、今回は良い出来かもな」
「武器を作成した?へぇ、流石はSSランクってとこかな?益々ワタシのオモチャにしたくなっちゃった」
ペロッとミスティーナが唇を舌で妖艶ぽく舐める。
普通ならミスティーナの仕草一つ一つに一般的な男どもは興奮するものだろうが、残念ながら千年は生きてる《正義》には、妖艶なアピールは中々効かない。
「では、殺るとしますか。フウジン【飛刃】」
「おっと、危ないじゃない。こんな可憐な美女に刃を放つなんて」
余裕綽々に回避したくせに良く言う。
そこそこ速度を乗せて放った訳だが、簡単に回避されてしまった。Sランク盗賊団の頭が、こんな程度で殺られるとは思いもしてないが、結構やるようだ。
「次はワタシから行くわよ。【風脚】」
足に風を纏い高速移動を可能にする風魔法の一つ。だけど、バランス感覚が難しく使いこなすには、結構訓練が必要になる。
バランスを崩せば、あらぬ方向へ自分が吹き飛ぶ事になってしまう。
「これは……………早い」
もちろんミスティーナの姿を目の端で捉えてるが、【風脚】を使いこなしており、これは俺を含めると片手の指の数位しかミスティーナを倒す事は困難を強いるだろう。
「うふふふふ、《風の妖精》と呼ばれたワタシのスピードに着いて来れるかしら」
ふとミスティーナから《風の妖精》と口から零れると昔の事を思い出していた。
およそ二百年昔に《風の妖精》の噂は聞いた事がある。だが、その当時の《風の妖精》は上位森精族だと記憶している。
現在のミスティーナみたく肌は褐色ではなく、透き通るような白い肌をしていたという。
誰もが敬う美貌の持ち主であり、風魔法と細剣の達人で、言い寄る屈強な男どもを瞬殺、圧倒していたようだ。
だけど、いつの間にかその話は聞かなくなった。何故なら突然の失踪。突然と行方不明になってしまったのだ。
だけど、自称《風の妖精》と名乗る今戦闘中のミスティーナと同一人物なのか?
もしも、同一人物なら盗賊団の頭をやってるのか?謎が深まるばかりだ。




