115食目、森精族から出張依頼を受ける
「わ、分かっておるわい。余だけでなく、そなたらにも食わせる約束をしよう。これで良かろう」
「話が分かるあなたは好きよ」
「父様、大好きです」
「父上、ありがとうございます」
一人や二人増えても問題ない。こちとら、晩餐会に出す料理を豆腐以外はほぼ一人で作りあげたのだ。四人~五人の人数なんか朝飯前に等しい。
むしろ人数が多い方が作り甲斐が合って、料理好きな俺にとっては最高だ。一人ずつ作るよりも複数作った方が俺にとっては手間でない。
「ごほん、聞いてた通りだ。我が家族全員になってしまったが、問題ないか?」
「えぇ大丈夫でございます。毎日のように厨房へ立ってる身であるなら朝飯前でございます。さぞや満足のいく料理を毎回作ってしんぜましょう」
自身満々にカズトは告げる。神樹の森フリーヘイムには、行った事ないが数少ない入った事のある行商人に話を聞いた事がある。
神樹の森フリーヘイムには、天空を突き抜ける程高く聳え立つ世界樹があると。
その世界樹に認められし者には、とある場所に行けるという噂があるという。その場所とは、この世とは思えない程に美味な野菜と果物が成ってるという野菜と果物の楽園があると。
そんな場所があるなら料理人として無邪気な子供のように行ってみたいと思うのは当たり前の心理だ。
「そうか、ならこれを授けよう。これは〝森の証〟と言って、これがなければ我が国には入れぬ。失くさないようにな」
木の葉の形をしたピンバッチのような魔道具だ。衣服の上から取り付けていれば失くさないように出来ているようだ。俺は何の迷いもなく、左胸の上辺りにピンバッチを取り付ける。
「ふむ、やはり同じ勇者だからか?その魔道具の作製者はアシュリーなのじゃよ。普通の者はお主のように取り付けようとは思わん。何処かに仕舞い込むかアイテムボックスに放り込む」
同じ出身地という事もあり、発想が似ているとうより文化の違いか。こちらの世界では魔法が発展しているからか、魔法の研究はされてるが何かを発明するという事はほぼ成されない。新たな魔道具を発明される事もあるが、100年に一度されれば良い方だ。
一方、科学文明が進んでいる地球では発明は日常茶飯事だ。日常を楽に便利に過ごすために科学と発明は切っても切れない関係だ。
「これをアシュリーが作ったのですか。森樹の森フリーヘイムぽくて良いデザインだ。お礼という訳ではありませんが、私からはこれをみなさんにお受け取りを願わくばと思います」
カズトがアイテムボックスから取り出したのは、日本の神社で売ってるような御守りに扮してる魔道具だ。これを、ここにいる王族全員に手渡した。
「これは私の店へ繋がる魔道具です。一回魔力を流してください。それで持ち主の認証が完了致します」
この作業で、もし盗まれても悪用されなくなり、一定時間経つと持ち主へ戻る仕組みになっている。
「使い方としては、起動したまま何処でも良いのでドアを開けてください。それで店と繋がります」
「これは凄いね。転移みたいな事が出来る訳だ」
「限定的ですけど、もし馬車に乗ってる時に盗賊等に襲われたら馬車のドアを開けて逃げられます。因みに、この魔道具の名前は【ドワープ】と仮に名付けました」
ミミが作製した訳だけど、ミミはどういう訳か自分が作製した事を内緒にして欲しいそうだ。理由は特に聞いてないが、俺が作製した事にするという話になっている。
俺が説明すれば、相手側は俺が作製主だと勘違いしてくれるだろう。
「これで頻繁にそなたの店へ行けるのだな」
「あなた、仕事をきちんとして貰わないと困りますのよ」
「それは分かっておる。たまには息抜きも必要だと話しておるのだ」
フレイ王の焦り顔は絶対に仕事を途中で放り投げて来る者の言い分と表情だ。まぁ俺にとっては、誰でも等しくお客様であり神様だ。
「遠慮なく来てくださって構いません。最高のサービスでおもてなしをしてあげましょう」
「ほれ、"剣の勇者"殿も言っているのだ。構わないじゃろう」
「程々にしてください。フゥが呆れても知りませんよ」
ララ王妃に話を振られたフゥに注目の視線が集まると一瞬何かを考えた仕草をした後、フレイ王を見たと思ったらプイっと反対方向へ向いた。
「我が儘を言う父様なんて大嫌いです」
「ガーン!そ、そそそそんな我が可愛いフゥよ。そんな事言わないでおくれ。ちゃんと仕事するからの」
一国の王も大事な可愛い娘が関わると、こんなにも態度が180度変わるのかと呆れる思いだ。ウチの王様も娘に激甘だから仕方ないといえば仕方ないのか。
俺にも子供が産まれたら、目の前の惨劇?のように親馬鹿なりそうで今から恐ろしい。多分、息子には厳しく娘には激甘になりそうだ。




