113食目、親バカな森精族の王
「試す真似をして済まなかった。フゥがそなたの大ファンで悪い虫かどうか、余自ら判断しようとな」
つまりあれか?実の娘を溺愛してる親バカという事か?魔法大国に来てからというもの、試される事が多い気がする。
明日には、世界会議メープルの参加国が全て集まる事になる。カズトの勘だが、全ての国から試されるような感覚があり、今から気がきでない。
「それでどうでしたか?」
「見事に合格だ」
「"剣の勇者"様、すごいですの!お父様がお認めになるなんて」
フレイ王から伝わって来ていた【森の気】とやらの嫌な感覚は既になくなっており、俺はホッと胸を撫で下ろしていた。
「"剣の勇者"殿に一つ質問があるのだが、よろしいか?」
「は、はい、何でしょうか?」
「晩餐会に出された料理の数々、どれも素晴らしいものばかりだった。それは認める。もしかして、我々の種族の事を考えながら作ったのか?そうすれば、納得もいく」
まぁあれだけ菜食主義ぽい料理を作れば、誰だって分かってしまう。特に隠す事もないので俺は肯定した。
「そうか……………どうやら"剣の勇者"殿も誤解をしてるようだ。我々の種族……………森精族は、種族の特性上……………肉のみ食べられないのだ。肉を食べると調理の方法関係なく消化不良を起こしてしまうのだ」
「そうなのですか?!なら何故、森精族は野菜しか食べないと広まったのですか?」
カズトが召還されてから、森精族が野菜以外……………魚、卵、動物の乳等々(肉を除く)を食べるなんて聞いた事が無かった。
人間以外の種族からも口を揃って『森精族は野菜しか食べない』と言うのだ。一言も森精族が牛乳を飲んだとか卵を食べたとか聞いた事がない。
「それは我々森精族が野菜以外の食材の調理する知識がない。いや、違うな。調理する術がないのだ」
「食べる事が出来ても調理する事が出来ない。そうなれば、自然と野菜中心の食生活になってしまうのですよ。それに我々森精族が国からあんまり出たがらないのも広まった一つの要因ですね」
うん?意味が理解出来ない。ファンタジーものの物語で、よく森精族は森から出ない種族って聞くけど、料理が出来ないってどういう事?
行動に移せば良いだけのはずだ。行動を制限する呪い的な何かが、それも種族全体規模に及ぶ何かがあれば、話は別だと思うが。
「それは呪いの類いですか?」
「逆にそうだったなら、いくらか楽なのだが……………」
「"剣の勇者"殿、呪いでもステータスに状態異常に表れるのは周知の事実だと思うのだが……………」
「ま、まさか!ステータスに提示されないのですか?!それじゃぁ……………偶然にも種族全体で料理下手だと?」
そんな馬鹿な事があってたまるか!他に考えられる事は……………隠れステータスか?表立って表示されない"隠れステータス"というものがある。
【鑑定】では確認出来ず、ほとんど者が知らずに一生を生きる。それには、プラス方向に働く物があるなら、もちろんマイナスに働く物だってある。
「もしかして……………隠れステータスなのか?」
「隠れステータス?一体何だね、それは?」
「言葉通りです。ステータスには表示されない隠されたステータスの事です。もし、存在していても知らずに一生を終える事がほとんどだそうです」
俺も最初の頃は知らなかった。だけど、女神シロに教えてもらったのだ。隠れステータスを知るには、【鑑定】の上位魔法である【女神の知識】を使用しなきゃならない。
しかし、【女神の知識】は到底人間を含め全種族が覚えられるものでない。したがって、女神シロが気紛れで【女神の知識】を使い神のお告げとして伝える手段しか知る方法はない。
「ほぉ、そんなものが存在するとは……………」
やはり知られていないか。そりゃぁ、確認する術が神のお告げとしてしかないのだから仕方がない。もし知ってても隠してしまうかもな。
「世界会議メープルの終了するまで、私"剣の勇者"カズトが責任を持ち、美味な料理を提供する事をお約束致します。もちろん、お肉を除いて」
「おぉ、そうしてもらうとこちらも大いに助かる。あれ程の料理を手なずけたのだ。明日も期待しかない」
「アナタ楽しみですわね」
「私も楽しみです。明日の事を思うと空いてきました」
「あらまぁ、フゥったら食いしん坊さんなんだから」
ララ王妃とフゥ第一王女殿下は仲睦まじく、その笑顔は見てると癒され、こちらまでつい笑顔になってしまう。もちろん良い意味で。




