108食目、一日目の晩餐会メニューを考える
ニヤニヤとタマモとカズト以外の全員が微笑んでる理由をタマモは理解してないようで、頭を傾げてる。
「タマモよ、お主が恋路に疎いのは当の昔から解っておるが……………流石にそれはないだろう」
不死鳥女王フォルスはタマモに対して呆れてる。指摘してから数分間理解出来てないタマモであったが、みるみる内に顔全体が真っ赤に染まっている。
「あ、ああああぁぁぁぁぁひゃぁぁぁぁ」
「やっと解りおったか。鈍過ぎて妾までもが恥ずかしいぞ」
「だって………………だって………………」
タマモは両手で顔を覆い隠し地面にひれ伏してる。やられた側のカズトだって穴があったら入りたい気持ちだ。当分の間、両人は顔を合わせられないのか、距離を開けて立っている。
「閣下、もうそろそろ時間でごさいます」
「そうか、では向かおうかのぉ。タマモは何時まで恥ずかしがっておる。早よぅ、せい」
「フォルちゃん待ってぇぇぇぇ!」
不死鳥女王フォルスの背中を追い駆けて行く。その際に軽く振り向き、カズトへウィンクと手を振った。どうやら気付いたのはカズトだけらしく、他の者は誰も気付きしなかった。
カズトも胸元まで手を挙げ軽く振ってあげた。ただ羞恥心があっただけで、別に嫌ではなかった。
「さてと、俺も行くか。一応、姫さんの護衛なんでな。城の中にいれば、直ぐに会えるだろ」
「俺は晩餐会の準備をしないと……………」
「私も陛下の護衛に戻らないと……………」
各自がそれぞれ持ち場へ戻り、今日の予定は細やかな晩餐会を残すのみとなった。
主の元へ戻ったアシュリーとタケヒコは各々の主の護衛と称した雑用をしており、地味に忙しそうにしている。
残りのカズトは厨房へと戻った時には、ボーロの指揮の元、大量の豆腐が生産されていた。これだけあれば、今夜の晩餐会には足りるだろう。
ここからはカズトの仕事だ。今夜の晩餐会の特別メニュー:豆腐のフルコースを用意する積もりだ。
ボーロは補助として手伝うと申し出てくれたが、カズトは断った。豆腐の作り方は教えたが、この先は企業機密なのでカズト一人で仕上げる。
カズトが作ろうとしてる豆腐のフルコースメニューは次の通りだ。
~豆腐のフルコースメニュー~
・前菜:冷奴
・スープ:豆乳のポタージュ
・魚料理:湯葉の刺し身
・肉料理:豆腐ハンバーグ
・メイン:稲荷寿司三種盛り
・サラダ:豆腐サラダ
・ドリンク:豆乳カクテル
・デザート:杏仁豆腐
以上がカズトが監修したフルコースメニューのリストになる。
普通なら、この量をこなすには各々の料理担当をする料理人数人で作る訳で、けして一人で作る仕事量ではない。
それをカズトは一人で作りこなそうとしている。一人でやる理由は三つある。
一つ目は、料理人として命より大事なレシピを漏洩を防ぐため。豆腐のレシピをボーロに教えたのは、豆腐自体が料理というより……………まだ、食材寄りという点だ。食材なら別に問題無しと判断した。
二つ目は、カズト一人の方が早く作れる点だ。一々指示を出さなくても済むし、ボーロを含む魔法大国マーリンの料理人ではカズトの足元に及ばない。
三つ目は、カズトの技術である【異世界通販】の秘密があるからだ。これは嫁達にも秘密というか理解出来てない(ミミだけ理解してる)。
「さぁてと、調理開始しますか」
料理の聖剣エックスを構え、超特急で調理を開始する。
前菜である〝冷奴〟は簡単だ。小鉢に正方形の絹ごし豆腐を盛り付け、その上に薬味であるすりおろし生姜と刻んだネギを少々ちょこんと乗せ、最後に鰹節を削りパラパラと振り撒けば出来上がりだ。
後は小皿に醤油を入れ、これを一緒に提供し今日来た神樹の森フリーヘイムと獣人国家アルカイナ、主催国である魔法大国マーリンの三か国からの参加者に掛けて貰えれば問題ない。
スープである〝豆乳のポタージュ〟はとある道具を使用すれば、簡単に出来る。
一口大に切ったジャガイモとみじん切りにした玉ねぎをオリーブオイルで柔らかくなるまで炒め、それをミキサーにトロトロになるまで掛ける。
このミキサーが、この料理の秘密兵器だ。ミキサーがあるのに、すり鉢で磨り潰すのは馬鹿馬鹿しく感じる。そんな事やっていたら、大量に作れない。
トロトロになったジャガイモと玉ねぎを鍋に入れ、豆乳と一緒に煮込み塩胡椒で味付けし完成だ。後は皿に盛り付け、パラパラとパセリを飾れば良い。
ドリンクである豆乳カクテルは、豆乳に合わせる酒の種類によって無限大の楽しみ方がある。
今回は大人用として豆乳×ウイスキー、子供用として豆乳×バナナリキュールを用意した。




