106食目、九尾と不死鳥
更新忘れてました。少し遅れ申し訳ありません。
着物を着飾る大和撫子の女性は輪入道の隣に立ち一礼する。一つ一つの動作が実に気品に溢れていて、カズトとアシュリーはガチガチに緊張しまくってる。
それでいてマーリン女王が放った殺気を纏わせた魔力とは別の何か……………言葉では言い表せない恐怖感を目の前の大和撫子から感じる。恐らく一般人や並みの兵士なら気絶してる程だ。
並みの覚悟では、この大和撫子の前には立っていられない。俺達二人は勇者だからかギリギリ立っていられる。額から汗が吹き出し呼吸もままらず、この場から早く立ち去りたいが足が動かない。
「閣下、お二人が脅えてます。【恐】はその位で宜しいかと」
「うむ、妾の【恐】で気絶せぬとはのぉ。そちもそうだが、勇者とは強いのぉ」
「はっ!光栄でございます」
大和撫子が【恐】を解除したらしく恐怖感は薄まり、やっと呼吸がまともに出来、汗が引く事が実感出来た。手足も動かし自分の体に異常がないか確かめる。
「「プハァ~、ハァハァ(し、死ぬかと思ったぁ)」」
輪入道とは別に大和撫子の隣にいつの間にか膝をつきかしずく男がいる。それに聞き間違いか?!今、その男の事を勇者と言ったか!
勇者と呼ばれた男も獣人族であるようで猿人族のようだ。まるで西◯記の孫◯空みたいな様相で頭に緊箍児という金属の輪が填まってる。
「よぉ、そこにいるのはカズトと……………アシュリーか?雰囲気とか容姿が見違えたな。一瞬誰だか分からなかったよ。それにしても…………種族が変わっても胸が━━━━」
ビュン
「聞こえ無かったの。もう一回言ってくれないかしら」
アシュリーが孫◯空似の男が言い終わる前に矢を放ち男の足の股下へ突き刺さる。もう少し照準がずれていたら足首を貫いていた。
アシュリーには胸の話は禁句になってる。貧乳の事をコンプレックスと思っており、その話になると容赦がない。
「いや、何でもない。だから、仕舞ってくれ」
「クッカカカカ、難儀よのぉ。何処に行っても男より女の方が強しだのぉ」
「姫さん、笑い事じゃないですよ。もう少しで足に当たるところでしたから。そこも笑ってないで助けても良かったじゃないですか!」
おっと、つい無自覚で笑っていたようだ。こうなる事は最初から分かっていただろうに。口は災いの元と言うように自業自得だと思うがな。
猿人族の男はカズトとアシュリーと同じく地球から召還され勇者となった。アシュリーとは幼馴染みでカズトとは後輩に当たる。
名前は工藤健彦、棍の勇者で獣人族の女王と一緒に来たという事は獣人国家アルカイナにいるのだろう。
「悪かったて。タケ、そろそろ紹介しても良いんじゃないか?」
「納得いきませんけど、こちらにお出でになられたのは獣人族の女王にして我ら獣妖族の女王:フォルス・フェニックス閣下であります」
「妾が不死鳥女王フォルスじゃ。善きに頼むぞ」
不死鳥━━━通称:フェニックスと呼ばれる一族はとある特性により個体数はかなり少なく、もしお目に叶う事が出来るとしたら寿命が伸びるという言い伝えがある程だ。
その特性というのが死ぬ事があれば、自らの炎で再び再生し甦る。この特性の故に不死とされている。
「そしてもう一人……………あっ、降りて来ました。今降りて来たのが、八王の一人にして閣下の姉的存在である九尾タマモ様であります」
「フォルちゃん、早いわよ」
「ふん、そなたが遅いだけじゃ。それに"ちゃん付け"は、あれほど辞めよと申したのに……………」
九尾タマモと紹介された女性も着物を着込んでおり、お尻から尻尾が1、2、3……………と数えてみたら9本のモフモフが生えている。モフモフが大好きなカズトにとって触ってみたい。
それに加え頭からは狐耳が生えピコピコと動いてる。何あれ?!ルーシーの犬耳とはまた違うモフモフ感と可愛さが見ただけでカズトには解ってしまう。めっちゃ触りたい。
「あなた達二人も勇者なのね?タマモは九尾タマモ、タマちゃんでもタマタマでもタマ姉ぇって好きな風に呼んでね」
流石にタマタマはダメたろ。男のアレを連想させてしまう。だから、俺ら二人は九尾タマモをこう呼ぶ事にした。
「タマモさん、剣の勇者であるカズトです。お見知り置きを」
「同じく弓の勇者であります、アシュリーです。宜しくお願い致します。タマモさん」
「うぅぅぅぅぅ~、タマタマと呼んでくれないのよ」
そんなに呼んで欲しかったのか、泣いてしまった。これは絶対に泣き真似だと確信した。何故なら、こちらの様子をチラっチラっと伺ってるからだ。
パシーーーーーン
「これ、勇者の二人が困ってるだろうが」
「うぅぅぅぅぅ、フォルちゃん痛いのよ」
フォルスが背後から突っ込みで使いそうなハリセンでタマモの頭を叩く。痛そうに頭を擦るが鑑定を使ってみると解る。全然ダメージを受けてない事に。




