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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
3章魔法大国マーリン

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SS7-12、女婬夢族ジブリールの居場所~冒険者ギルド、登録テスト~

「さて、試験を始める。武器は何が良い」


 訓練所の片隅に訓練用の素材が木で出来た剣や槍等々が置いてある。そういえば、武器を使った事は一度もない。

 強いて言えば、自分の爪だろうか。爪を伸ばし、それで切り裂くといった具合に攻撃していた。

 悩んだ末にジブリールが選んだのは、木剣だ。ブンブンと振り手触りと重さを確認しつつ決めた。


「これでいくわ」

「準備が出来たなら、何処からでも掛かって来い」

「なら、遠慮なく行くわよ」


 試験管ゴートに向かって一気に距離を詰める。その勢いで木剣を振りかぶり降ろした。

 Aランクの意地を見せるため、ゴートはジブリールが振り下げた木剣になんとか反応出来、木剣と木剣が交差し競り合ってる。

 木剣同士だというのに、まるで金属の真剣でやってるかのような甲高い音が訓練所内に鳴り響く。


(なんていうスピードとパワーなんだ!これが女のパワーだというのか?!下手したら俺の腕がイカれちまう)

「やりますわね。まさか、我の剣を受け止めるとは思いもしなかったですわ」

(ほざけ!一瞬遅れてたら確実に死んでいた。本当に新人なのか?それとも人間ではないのか?どちらにしてもただ者ではない)


 ジブリールを、どうにか振り払い距離を取るゴート。ほんの数秒程度の攻防で息遣いを取り乱してる。

 それに予想以上にジブリールの木剣が重く、振り払った後でも腕がジーンジーンと痺れ上手く力が入らない。あの細腕の何処に、こんな力があるっていうんだ?!


「それで新人とはやるな」

「お褒めに預り光栄ですわ」

(ウソをつけ!完璧にこちらをなめてる視線だ)


 本来なら新人に本気でやるなど大人げないが、目の前のジブリールは別だ。本気でやらないとマジでやられる。

 Aランクの意地のため負ける訳にはいかない。息を整え、木剣を構える。ここからは魔法も使っていく。魔法と言っても、剣士のゴートには大それた魔法は使えない。

 ゴートが使うのは強化魔法だ。前衛の剣士が良く使う魔法で、名前の通りに強化を施す魔法だ。

 身体能力は勿論、武器にも施せる。強化する内容によって多種多様に及ぶが、今回ゴートがやるのは防御と速度に特化した強化魔法だ。


(攻撃は二の次だ。あのスピードに、あの重さ………………見たところスピードは、まだ上げられるだろう。それに、あの重さで一撃をまともに喰らうのはマズイ)


 ジブリールの速度にどうにか喰らいつき、あの重い一撃一撃を耐え続け勝機を見出だす作戦に切り替える。

 ゴートの魔力量からして強化魔法を使え続けられる時間は、最大10分だ。それ以上やると魔力切れで最悪命に関わる事になる。


「行くぞ!はあああぁぁぁぁぁぁ」


 ジブリール程じゃないにしろ、ゴートは強化魔法にてスピードが段違いに上昇しており、先程のお返しと言わんばかりに一気にジブリールとの距離を詰めた。

 その勢いで振り下げた。ただの新人では、まず目で追いきれず受け止め切れないだろう。

 だけど、ジブリールは難なく受け止めた。


「やるじゃないの。だけど、重さが足りないわね」


 それはゴートにも分かってる。防御と速度に強化魔法を回したからパワーが足りない事に。

 だけど、これで良い。耐え続けば、その内に隙が出来るはずだ。そこを狙い強烈な一撃をお見舞いすれば、こちらの勝ちだ。


「まだまだこれからだ」


 Aランクの冒険者らしく、ゴートは緩急を入れ始めた。フェイントを加え、相手のミスを誘う。強化魔法で強化された速度から繰り出されるフェイントなら、ジブリールも騙せるかもしれない。

 それにジブリールの剣擊が命中しようにも木剣の側面でジブリールの木剣の重心を滑らせ受け流す事が強化魔法で強化されてるなら出来るはずだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 剣は愚か武器に慣れてないジブリールは、ゴートのフェイントに騙され大きく右側へと払った。それが大きな隙を作ってしまい、ゴートに攻撃のチャンスを与えてしまう。


「ソコだぁぁぁぁぁぁぁ」


 ジブリールが右側へ払ったため左側の横腹が空いている。そこに強烈な一撃をおみまいしようと、瞬時に強化魔法を防御から木剣へと切り替え、目にも止まらぬ速度での突きがジブリールに襲い掛かる

 普通の新人ならこれで終わりのはずであった。だけど、ジブリールは底辺と言われるが魔族である。

 それも《恋人》の技術スキルによって底上げされている。軽々とゴートの突きを自分の木剣の腹で受け止めた。


「な、何故だ?!何故受け止められる?」

「惜しかったわね。ゴートさん、あなたが強化魔法を使ってるのバレバレですわ。ゴートさんが強化魔法を使ってるなら、こちらも強化魔法を使うまでのこと」

「そ、そんなバカな!お前、魔法使いのはずじゃ」


 自分だけ使ってたと思っていた強化魔法が相手も実は使っていたという事実にゴートは理解が追い付かないでいる。

 本来なら新人が強化魔法を使いこなす事はありえない事だ。経験を積んでいきながら習得するもので、属性魔法なら発言すれば解るが強化魔法は、目に見えない。

 経験で積んできた感覚で覚えるしかない事と魔法使いは強化魔法を使用出来ない事は常識だ。ただし、それは魔力を感じ難い人間や獣人族の間での事。

 他の種族から言わして貰えば、まだ属性が決定していない無属性の魔力を強化したい部分に流し、そこに魔力を固定化する事が強化魔法の概念だ。魔力を感じ・見る事が出来れば簡単だと言う。

 そんな事を知らないゴートは、ジブリールに防がれたショックで茫然自失になってしまい立ち尽くしたまま動かない。目の前に掌をヒラヒラと翳してもピクリとも反応しない。


「これはどうなるのかしら?勝ったと受け取って良いのかしら?」

「えぇ、そうですね。ゴートさんが、こうなってしまった以上ジブリールさんの勝ちで良いでしょう。まさか、魔法使いでありますジブリールさんが勝つとは思いませんでした。では、次は魔法の実力を見ますので少々お待ちください。別の試験管をご用意致しますので」


 しばらくの間、ゴートは使い物にならないと受付嬢が判断したらしく、訓練所でしばらく待つ事になったジブリールである。

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