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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
3章魔法大国マーリン

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SS8-2、スゥの一日~スゥ、レストランを警備する~

 粘体族スライムであるスゥには、【分眠】という技術スキルがある。【分身体】を使用中に使用出来る技術スキルで、分身が寝ると本体が寝ていなくても寝てるような効果を得る事が出来る。

 この技術スキルにより実質24時間起きていられる。【分身体】で出した分身の一部を寝かせながら、他の分身を活動させる事も出来る。

 ミミの魔法による防御に加え、スゥの監視兼迎撃によりレストラン〝カズト〟に食べに来るお客様とお泊まりされてるお客様の安全を完璧に守る事が出来る。

 スゥの働きに関しては、カズトとミミの二人は気付いている。だから、気を使わない程度に二人でお裾分けを与えたりしてる。

 そして、今日のレストラン〝カズト〟の営業は終了した。食器やキッチン周り、包丁やまな板等の調理器具の洗浄は全てスゥがやってくれた。


「スゥお疲れ様。これ食べるか?」

「イイノ?」


 カズトが差し出したのは、残り物の野菜で作った〝かき揚げ〟だ。特製のタレが掛かっており、出来立てで残り物で作ったとは思えない程の出来映えだ。


「あぁ、スゥが食べないとゴミになっちまう」

「マスターアリガトー。オイシイ」


 スゥが美味しそうに〝かき揚げ 〟を食べてると、カズトの口角が上がり、微笑んでいる。

 カズトが何故微笑んでるのかスゥには理解出来ないが、今のスゥのように作った料理を誰かが美味しそうに食べて貰ってる時が一番楽しそうだと、スゥは感じてる。


「ふぁ~、俺はそろそろ休むな。いつも店を護ってくれてありがとう」


 去り際に何故お礼を言われたのか、理解出来ないスゥだけど、カズトにお礼を言われた瞬間に胸の奥底から、ポワポワと暖かい何かを感じた。

 その何かは、嫌なモノではない。もっと感じて欲しい何か。半透明な体が、若干赤くなってるのは気のせいか?



 ☆★☆★☆


 日本時間にして19時~20時頃、ほぼ明かりはなく、あるのは月明かりのみ。

 地球とは違い、電気がないためランタンか蝋燭で照明を取ってるのだが、油代がバカに出来ない。

 そのため、大抵の一般市民は早くに寝てしまう。魔法使いなら光魔法【光玉ライト】で明るさを保てるが、そんな事に魔法を使う者は逆に貴重だ。

 そんな訳で、暗闇に支配されてる頃合いにレストラン〝カズト〟の前へ不審者らしき人物が3人程月明かりを手掛かりにコソコソと動いている。


「ここか?レストラン〝カズト〟という飯屋は?」

「へい。正確には、飯屋と宿屋を兼業してるみたいでさ」

「一回だけ馳走になりやしたけど、どれも見た事ない料理ばかりで美味でした」

「おめぇ、何勝手に食いにきてんだ!」

「ひぃぃぃぃぃ、すいやせん」

「お頭、声が大きいですって」


 風音しかない屋外では、小声で話していても昼間ならまだしも響く。しかし、誰も起きて来る様子はなく男三人は、慣れた手つきで配置についた。

 今から、レストラン〝カズト〟へと侵入し、店主であるカズトを殺す計画を実施した。

 一人は、裏口から。二人目は、一階の鍵が掛かってない窓から。三人目は、堂々と正面玄関から侵入した。

 バラバラの場所から入るのは、全滅を回避するためだ。噂だが、店主であるカズトは、勇者だという話だ。

 普通ならグフィーラ王国の王都や古都に住んでない一般市民の間ではタダの笑い話になっている。


『おい配置に着いたか?』

『へい、つきやした』

『こちらも何時でも侵入出来ます』

『【隠蔽】を忘れずにな』


【念話】により、それぞれ侵入する場所に着いたと確認した途端、三人の男の気配が希薄に━━━最悪、透明人間になっている。

 盗賊や暗殺者が多く所持してる技術スキル【隠蔽】の効果の一つだ。熟練度が上昇するに連れ誰にも見付かり難くなっている。


『入れたか?』

『へい、誰にも気付いていやせんぜ』

『こちらも大丈夫だ』


 レストラン〝カズト〟の一階は、既に火を消し消灯してりので、辺りは真っ暗だ。だけど、男三人には技術スキル【暗視】がある。

 どんな暗闇でも、暗視カメラのように見えるようにする技術スキルだ。暗闇の中を移動する事が多い盗賊や暗殺者にとって必須の技術スキルとなっている。


『一度合流する』

『へい、分かりやした』

『了解した』


 レストラン〝カズト〟の一階の構造は、ここで食事した事のある男が事前に調べていた。

 なので、二階に上がる階段の場所は判明している。外から見た限りだと、二階から上の階層も明かりはついてなかった。


『この上だな』

『うへへへへ、女はヤってもいいぜすかい?』

『好きにしろ。ただし、カズトを殺ってからだ』

『あっしが調べた限りですと、カズトの部屋は五階です』

 

 他の宿屋よりも階数はあるが、貴族や大商人の屋敷に忍び込むよりは楽な仕事だと、お頭と呼ばれてる男は思ってる。

 だけど、そんな安易な考えが取り返しのつかない事になるとは思わなかった。


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