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14食目、鶏の唐揚げ

 アリスとシャルがレストラン"カズト"に宿泊してから一週間経っていた。異世界アグドでの一年間は地球と同じ365日で、12ヶ月なのだ。そして、今は2月で少しは日は長くなってきたが、まだ肌寒い季節なのは変わらない。

 こんな寒い日の夜、およそ誰もが夕飯を食べてるであろう時間帯にガチャンガチャンと騎士が着てる鎧が擦れるような音をしながらレストラン"カズト"の扉が開いた。


「いらっしゃいませ………あら、ユニ隊長じゃない。二週間ぶりかしら?」


「姫、ご無沙汰してます。今日は仲間と共に食べに来ましたが、よろしいでしょうか?」


 今、入ってきたレイラと親しげに話す女騎士はユニ・バレンタイン。王族直属騎士隊の一つである第零騎士隊隊長の肩書きを持っており、二つ名に関しては多過ぎて本人も把握仕切れない程である。

 第零騎士隊は唯一女性のみの騎士隊であり、王都花形とされる騎士隊で何かしらの王都でやるパレードにも参加を義務付けされている。そのため通称:赤薔薇隊と呼ばれている。

 それ故に、騎士隊ではなく水商売だと勘違いしてしまう者もたまに存在する。その者の中には第零騎士隊にちょっかいや乱暴を働き掛けるヤツがたまにいるが必ず返り討ちに合い牢獄行きとなる。

 女だからって甘くみると痛い目に合うという事は、何処の世界でも共通してるみたいだ。余談だが、知らない者の方が多いけど騎士隊の中で最強を誇るのが、何と第零騎士隊なので怒らせないように注意だ。

 ついでにユニの二つ名の中で有名なのを紹介しよう。戦乙女ワルキューレ、戦姫、赤の死神、戦女神等々他に紹介したらきりがない。

 レイラはユニに尊敬しており、彼女を真似して防具をビキニアーマーにしていたのだ。

 なので、カズトから見たらユニも目のやり場に困ってしょうがない。余談だが二つ名にある赤の死神は赤いビキニアーマーからきている。

 ユニの後ろには部下らしき女性が五人程入り口で待っている。隊長がレイラと話されているからかずっと待ってるようだ。


「レイラ、入り口で話してないで席に案内したらどうだ」


 そこに立っていたら、お客さんが入ってこれないので上司として注意してやった。本来なら親しい二人はもっと話したいだろうが入り口にいるせいで、いつの間にかに行列が外に出来てるんだもの。注意せざるえない状況である。


料理長シェフすみません。こちらへどうぞ」


「すまんな。私が話したせいで………怒られてしまったようだ」


「いえいえ、私も話し込んでしまったんでおあいこです。それではご注文お決まりになりましたら呼んでください」


 ペコリとお辞儀をし、レイラは他のお客様の対応へと行った。その代わりとしてカズトが出てきた。


「ユニさん、いらっしゃいませ」


 水が入ったグラスを置くついでに挨拶をした。レイラは元々王族だからユニとは面識はもちろんある。カズトは勇者の実力を示すために一回だけ試合を行ったのだ。勝負の結果は………みなさんのご想像にお任せしよう。


「いつ来てもここの水は美味しいな」


「お褒めにさずかり(あずかり)光栄です。ご注文はお決まりでしょうか?」


「ふむ、そうだな………今日は新人の歓迎会も兼ねてるのでな。あれを試してみようか。〝鶏の唐揚げ〟を頼む。味はお任せでな。それに………生を人数分だ」


「「「「「!!!」」」」」


 ユニの注文に他の部下全員が驚いた。異世界アグドでは、鶏肉を食べるなんて常識的にありえないからだ。前に説明した事があるかもしれないが、卵を産むために鶏は存在し卵を産めなくなった鶏だけが市場に出回るがほとんど売れない。

 その理由は一つだけだ。痩せこけて硬い肉だからだ。そんな肉をワザワザ買う人なんて本当に金に困った者だけだ。


「かしこまりました。それにしても………相変わらず、目のやり場に困るっていうか━━━」


 隊長のユニだけではなく、新人という他のメンバー似たようなビキニアーマーなのだ。冒険中はレイラがビキニアーマーなのもあってどうにか多少耐性出来た。最初の頃なんか鼻血が出そうで大変だった。


「うわっははははは、勇者殿も相変わらずだな。それじゃぁ、サクッと夜にヤるか?」


「普通は光栄だと思うところだけど、後々怖いんで遠慮しときます。それでは、お待ち下さい」


 カズトはユニから逃げるようにそそくさと退散した。あのままいたら、()()の従業員に何を言われるか分かったもんじゃないからな。俺はまだ死にたくないんだ。


「ちっ、逃げられたか」


 本当に狙ってたようで厨房に引っ込んだカズトの背中がゾワァっと寒気が生じた。


「隊長ちょっと良いですか?」


「うん?なんだ、言ってみろ」


 五人を代表として新人のリーダー各の女が手を挙げユニに質問する。


「先程の注文で聞き間違いではなければ、"鶏"と聞こえたのですが………」


「あぁ言ったな。安心しろよ。そこんそこらのヤツとは全くの別格なものだ。大人しく待っていろ」


「「「「「………」」」」」


 自分達の隊長にそこまで言わされ黙るしかなかった。だが、もう一つ質問があり口を開ける。


「今の方が勇者カズト様なんですか?」


「あぁそうだが………」


 次にくる質問が予想出来、ユニはグラスの水をチョビチョビ飲んでる。


「勇者様と隊長の関係って………質問を変えます。単刀直入に隊長は勇者様の事好きなんですか?」


「「「「ドキドキ」」」」


 新人のリーダーは目をキラキラと他のメンバーは隊長よりも緊張してる様子だ。


「それは………好きだが何か悪いか。つうかよ、勇者殿なら誰だって好きになるんじゃないか(モテそうだしな)」


「うーん、それは違うと思います。どちらかと言うと尊敬………憧れの方が強いと思います。だいたいがラブじゃなくライクです。隊長の場合はラブですね。

 おそらくですが、自分より強い勇者様に好意を持ってしまったんですね」


 部下の推理にユニはグゥの音も出ない。正しくその通りだからだ。普段は戦闘バカのユニだが、恋愛に関しては態度で周囲から丸分かりである。ただし、カズトにはなかなか届かない。

 先程の夜の誘いもふざけてるとしかとらえていないのである。

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