SS1-8、帝国の三勇者~盗賊の用心棒VSリンカ~
「なら、腕と脚以外を狙うまで」
オドロ丸は血鬼丸で腕や脚以外、胴体や頭を中心に狙いを付け切りつけ始める。主に急所を狙ってる。流石Aランク以上の用心棒だ。やる事がエグい。
ただし、リンカも血鬼丸の軌道を読み紙一重で回避する。狙われてる箇所が解りやすい分避けやすい。
「ほぉ、やるな。お嬢ちゃん、ここまで避けられるとは思わんだ」
「お嬢ちゃんじゃないのです。リンカはリンカ、本気で来ないなら殺られるのですよ?」
次は、リンカの番と思わせ振りに攻める。オドロ丸は、リンカとは違い血鬼丸で受け流してる。
Aランク以上となると、回避や防御だけでなく受け流しの技術もピカ一らしい。
「むぅ、殺りずらいのです。なら、これ。ぶっ飛ぶのです。風の聖拳カミカゼ【旋風脚】」
体を捻ってから蹴りを、オドロ丸の体でなく、わざと武器の血鬼丸の刃に当てて来た。
普通なら靴もろとも足が切れるであろうが、聖武器は【破壊不能】なため切れない。壊れない。
それに加え、風属性の魔力を宿ってるため威力とぶっ飛ばし効果が相まって普通の相手なら消して離さない血鬼丸を離してしまう。
血鬼丸は、明後日の方向へクルクルと飛んで行き、およそ目測で500mは飛び地面に刺さった。
「ぐっ!俺の血鬼丸が!」
「相手の武器を奪うのは、戦いの初歩です。それにリンカの攻撃は、まだ終わってないのです」
体を、反転させると血鬼丸を蹴り上げた脚とは違う反対の脚でオドロ丸の胴体を狙った。
血鬼丸を離した反動で防御が間に合わず、もろにリンカの蹴りが入り血鬼丸同様吹っ飛ばされた。
「ぐぉっ!やりおるわい。小娘が!」
「小娘でないのです。リンカはリンカ。オジサンこそ、蹴りの瞬間…………後ろへ飛んだクセに」
「いやいや、痛かったぞ。腹に穴が開くと思ったわい」
でも、平気そうにオドロ丸は、ホコリをハタキながら何も無かったかのように立ち上がった。
「全くトンでもないお嬢ちゃんがいたわい」
「楽しいのです?オジサン顔が笑ってる」
「お嬢ちゃん━━━━━いや、リンカちゃんも楽しそうな顔をしてるぞ」
そりゃぁ、こんなに楽しい闘いは、なかなか味わえない。二人から笑みが溢れるのは自然の事だ。
「こりゃぁ、本気を出さねぇと失礼に当たるな」
「リンカは、いつでも本気なのです。本気のオジサンをぶちのめすのです」
「くっかかかか、本当に面白いお嬢ちゃんだ。来い、血鬼丸!」
オドロ丸の呼応により地面に刺さってるはずの血鬼丸が、クルクルとオドロ丸の手元まで舞い戻って来た。
普通の鉄等の金属や鉱石で出来た武器ならば、オドロ丸の手元へ戻って来た説明が出来ない。
おそらく、オドロ丸の魔法か技術又は血鬼丸が魔刀である可能性がある。多分、後者であろう。
「仕切り直しと行こうか。啜れ【血液充填】」
ズブッ
血鬼丸を持ってない腕を自ら突き刺した。刃先に血が伝わり、誰がどう見ても重症だ。
「せ、先生!」
「安心しな。うぐっ、何度やっても効くなぁ」
血鬼丸を抜くと、腕から大量出血するかと思いきや何も無かったかのように傷口がみるみる内に塞がり治っていく。
その代わりに血鬼丸が、まるでオドロ丸の血を吸ったかのように真っ赤だった刀身が、更に濃い赤色に変貌していく。
「………………魔刀です」
「リンカちゃん、良く知ってんな。そうだ、俺の血鬼丸は魔刀だ。本来の力を引き出すためには自分の血を吸わせる必要がある」
「悪趣味なのです」
「闘いには、リスクは付き物だろう?リスクを冒せば冒す程に楽しくなるものだ」
「ですです、メグミ程じゃないけど………………その気持ち分かるかも?」
「おい!何だとこら。俺が戦闘狂みたいでないか!」
傍観してるメグミが、何か吠えてるがリンカは無視する。メグミの隣で見てるココアも笑いを堪えるのに必死だ。
「俺の本気を受け取ってくれや。【血液武器作製】からの【血流舞踏】」
血鬼丸が妖艶な光を放つと、オドロ丸の周囲に10振りの血鬼丸に似た刀がフヨフヨと浮かんでいた。
その刀が、自ら意思を持ってるかのようにリンカへ襲い掛かる。6割は単純な軌道で読みやすく避けやすい。残りの3割はリンカの死角を攻撃して来る。後の1割が急所を突いてくる。
全部が単純な動きなら簡単にオドロ丸に接近出来るが、これは6割を囮にし、残りで仕留めようとする連携攻撃。
「闘い慣れてるのです」
「何年この仕事をしてると思ってるんだ?悪いが勝たせて貰うぜ」
「それは、リンカも同じです。兄さんと会うまで死ぬつもりはない」
「ほぉ、兄がいるのか?」
「カズトって名前。オジサン知ってるです?」
「なに!か、カズトだとぉぉぉぉぉ」
カズトの名前を聞いた途端、オドロ丸は声を荒らげ額に血管が浮き出て、今にでも破裂しそうだ。




