SS1-7、帝国の三勇者~盗賊の用心棒~
あれ以来盗賊や魔物に出会う事はなく、順風満帆に鉱石の洞窟ガリウムまで後半日と着く頃合いであった。
だけども、これもテンプレだろうか。もうすぐ目的地に着くところで邪魔者がやって来てしまったのだ。
「先生、あいつらです。俺の部下を無残に殺したのは」
「あの可愛いお嬢さん達で間違いねぇのかい?三人だけで旅をするたぁ実力があるかもしれねぇが………………」
どうやら、ほぼ一週間前に襲って来た盗賊のリーダーの男が再度腕に自信ありそうな男を雇って復讐しに来たようだ。
先生と呼ばれてる男は盗賊よりもやり手のようで威圧感が、こちらまでビシビシと伝わって来る。おそらく名のある冒険者や傭兵なのだろう。
「はぁ~、また来たのかよ」
「そちらの御仁、その男は盗賊と分かってて一緒にいるのですか?もし盗賊だと知らずに雇われたのなら、今直ぐに立ち去りなさい」
「でも強そうなのです………………戦ってみたいかもなのです」
「それは同感だ」
「同意しないで下さい」
メグミ程じゃないにしろ、リンカも強い者と戦いたいという欲求が沸々と沸いて来てる。武道家の血が疼いて来たのだろう。
もうそろそろで目的地である鉱石の洞窟ガリウムに着くというのに本当ついてないとココアは内心思ってる。だけど、けして口に出さない。
口に出してもこの二人を止められないからだ。盗賊をスルーしても良いが、後々面倒臭い事になりそうなのも事実。ここで完璧に潰すのもありかもしれない。
それに有名な盗賊ならば、それ相応な懸賞金が掛けられてるはずで、生死問わずで街の衛生兵に渡せば懸賞金が貰えるはずだ。
「俺は金さえ払ってくれれば、どんなヤツの下につく。それに強いヤツと戦いたいというのは俺も同感だ」
「なら、リンカと戦うのです?」
「あっ!ズルいぞ」
「はぁ~、もう止めないから好きにしなさい」
ココアは完璧に諦め後ろへ下がった。どうしてこうも戦いたがりなのか理解出来ない。
でもまぁココアも自分の命が脅かされた時や自分の意思をねじ曲げたくない時は反抗し戦う時もある。目の前の二人に比べれば、戦闘する確率は低い。
「そっちのお嬢さんは戦わないようだな。二人で掛かって良いぞ」
「先生!」
「戦闘に関しては俺の好きにすると言ったぞ」
「ひっ!先生、わかりやした」
盗賊のリーダーは、ほぼ一週間前に襲った時の威厳が霞程度に落ち込んでいる。
用心棒の男の睨み付けにビクビクとビビり後退りする。本当に、あの時の盗賊リーダーなのか疑りたくなるビビり具合である。
「さぁ、何処からでも掛かって良いぞ」
「分かりましたなのです。リンカから行くのです」
「リンカ、ズルいぞ」
「メグミは一週間前に戦ったのです」
「もう一週間前だろ!ここまで暇だったんだよ」
「じゃぁ、じゃんけん」
「良いぜ」
結局じゃんけんで勝ったのはリンカであり、用心棒の男と戦う事となった。
「お待たせなのです」
「お嬢ちゃんが俺の相手かい。死んでも恨みっこ無しだぜ」
「それはオジサンの方です。リンカが勝つからなのです」
用心棒の男は腰に携えてる刀を抜いき構えた。その刀は、刀身がまるで血で塗ったみたいに全体的に真っ赤でキレイであるが恐ろしくも感じる。
「俺の名は、オドロ丸━━━━《悪鬼羅刹》オドロ丸だ」
「リンカの名前はリンカ━━━━《武神》リンカ、いざ参るのです? 」
お互い構え相手の出方を見る。二人の周囲だけ温度が2℃~3℃程下がってる風に静かで冷たい空気を漂わせてる。
オドロ丸の構えからリンカは強さを判断する。おそらく冒険者として判断すると、最低でAランク、高くてSランクは固い。だから、油断をしてはならない。
ジリジリと出方を見てる間に、コッソリと聖拳スターゲイザーを変化させる。脚を風の聖拳カルデアに、腕を炎の聖拳ホムラに変える。
外見的には、ただ色が変わっただけに見えるが、その能力は大きく変わってる。
「やはり本物の《武神》なのか?!ただならぬ気迫が伝わって来るぜ」
「それはこちらも同じなのです。油断したら、リンカが負けるのです」
お互い距離をジリっジリっと積めながら相手の動向を観察し、間合いに入ったところで刃と拳が交差する。
交差した時に風圧が発生し、見学してる者達までビリっビリっと伝わり微かに肌が痛む。
ガキン
「俺の血鬼丸を防ぐか!中々の業物のはずなのだが」
「それは当たり前なのです。相棒には【破壊不能】が付与されてるのです」
聖拳スターゲイザーにだけ言える事でないが、全ての聖武器共通して【破壊不能】が付与されている。
それが意味する事は、武器だけでなく最強の防具にもなりえる意味もある。今の聖拳スターゲイザーが良い例になるだろう。




