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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
2章魔法大国マーリンへ行こう

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89食目、魔法大国マーリン行き五日目~和風の甘味の一つ、どら焼き~

「お待たせ致しました。〝どら焼き〟でございます」

「何やら一見パンみたいに見えるが?彩りが地味でこれは本当に美味なのか?味が想像出来ぬ」

「これは、私の故郷の代表的な菓子の一つでございます。食べてみれば、その美味しさに感激を覚えるでしょう」


 日本で一個200~300円位の〝どら焼き〟だが、現地調達で食材を揃えるとなると、一体いくら掛かるか想像出来やしない。生地は兎も角、その中身であるアンコが問題だ。

 アンコの主原料である小豆は、こちらで見た事も聞いた事もないし、それに大量の砂糖が必要になる。おそらく白金貨数枚は軽く飛ぶだろうな。

 アンコの作り方は至ってシンプルだ。小豆と同じ量の砂糖を一緒に鍋でグツグツと焦がさないようかき混ぜながら煮れば良い。後は根気の勝負だな。甘いものが苦手な者がやると胸焼けを起こすかもしれない。


「うむ、ソナタの故郷の菓子か。それならば、さぞ美味であろうな。では、いただくとしよう」


 はむっモグモグゴクン


「旨ぁぁぁぁぁ!これは甘味の中にコクや奥深さがあり、何個も行けそうじゃ」

「こちらもお試しくださいませ。〝どら焼き〟に合う飲み物でして〝緑茶〟でこざいます」

「うむ、見た事のない色よの」


 ズズズゥゥゥゥ


「この渋みがドラヤキとやらの甘さにピッタリと合うわい」


 やはり和菓子には〝緑茶〟が一番良く合うとカズト自身も思ってる。が、単に緑茶と言っても種類が多彩だ。

 煎茶・深蒸し・玉露・番茶・ほうじ茶等々数えたらキリがない。今日出したのは一般的である煎茶だ。時間が無かったので、煎茶を選択したが他のお茶も試したいものだ。


「私にもそれちょうだい!」

「王妃様、すみませんが〝どら焼き〟は1つきりでございます。明日で宜しければ、ご用意致しますが………」

「明日わね、それで良いわ」


 本当は今直ぐにでも用意出来る。だが、キリが無くなりそうで敢えてウソをついた。それに、俺の秘密である【異世界通販ショッピング】がバレそうな予感がしたのだ。

 日本昔話にある《鶴の恩返し》みたく【異世界通販ショッピング】で買ってる場面を見られるような感じがピピッと頭に過ったのだ。

 何気に昔から予感・直感は当たるので無視出来ない。


「………後で私にはくれるのでしょう」

 コソッとカズトの耳元でレイラが呟いた。レイラは【異世界通販ショッピング】をご存知で〝どら焼き〟を用意出来ると知っている。

 この後、こっそりと賄賂みたく渡したのだ。


 ━━━━━魔法大国マーリン行き六日目━━━━

 

 道中の度々にトラブルはあったりしたが、このまま順調に進めば明日七日目のお昼に着く予定だ。しかし、そう思ってると大抵何かしらのトラブルに合うものだ。だけど、今はこの旅を楽しもう。


「今日の朝食は、〝コカトリスの目玉焼き〟〝デュアルボアのソーセージ〟には、こちらの醤油かソースをお試しを。〝サンサンフラワーのトースト〟には、こちらのジャムを塗ってくださいませ。飲み物は搾り立ての〝オレンジジュース〟でございます」


「なにやら冒険者が酒場で食いそうな料理じゃな」

「えぇそうね。今までの料理の中では霞んでしまいそうですわ」

「父様母様、きっと腰を抜かしますわ」


 そう思ってしまうのは見た目しか見てないからだ。材料は道中に狩った魔物モンスターだが、商人ギルドや市場に出回れば高級食材として扱われる。

 そんな食材を出し惜しみなく使用している。それにシンプルな料理ながらカズトの調理技術が隅々まで行き渡ってる。

 後は食せばその美味に腰を抜かし、自然と声が出てしまう事だろう。料理人は料理で相手を黙らせてなんぼだ。


 はむモグモグ

「ホワァ~、なんじゃこれは!一見、ただの目玉焼きじゃが食べてみると、味は濃く口から頭にドキュンと来る旨さじゃ。バカにしてきた儂が愚かに思えてくるわい」

「こちらもタダの肉の腸詰めじゃないわ。香辛料をふんだんに使われてて、肉の臭みが一切ないわ。冒険者のエサだと思っていた私が愚かだと思えるくらいに」

「そうでしょう、そうでしょう。だって、私のカズトなんだもの」


 自分は何もしてないのにカズトの成果を自分の事のように胸を張って自慢するレイラ。

 トーストやオレンジジュース以外は酒場のド定番メニューであり、俺流にアレンジを加えた。そのお陰で冒険者や一般民が食うようなものでも、上流階級の者が食すに価する芸術へと昇華したのだ。


 ━━━━━カズト一行より2km離れた森の中━━━━━


「ムフフフフフ、順調に進んでるようですね。破滅の時を迎えるとも知らずに」


 《星》の男は切り株に座り込みスコープを片手に片目で覗き込んでいる。

 このスコープは《星》の男しか所持してない魔道具で【千里先の道も一歩から(スコーピオン)】と呼ばれてる、どんな距離でも覗ける探索系の魔道具なのだ。

 ただし、いくつかの制約があり、制約をクリアしなければ使用不能になり、ただのガラスが付いた筒と化してしまう。

 だが、《星》の男にとっては簡単に制約をクリア出来てしまい、無くても有っても同じようなものだ。


「ふわぁ~、超退屈………」

「ムフフフフ、なら手伝ってくださいよ」

「ふわぁ~、無理………超眠たい」


 《戦車》の少女は雑草が生い茂る上で呑気に横となり、今直ぐにでも夢の中に旅立ちそうである。






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