83食目、魔法大国マーリン行き四日目~魔神教会の目的が判明する~
「すびばぜんでじだ。もう、よごじばぜん。ごぼじぼじまぜん」
シロの涙混じりの声に流石にやり過ぎたと━━━いや、女神相手に殺す程度がちょうど良い。
むしろ、【威圧】だけで済ませたのは俺の優しさからだ。まぁ戦っても勝てないけど。
「反省してるようなので、こちらは〝フォンダンショコラ〟と〝ココア〟でございます。どうぞ、ご堪能くださいませ」
ニパァ~と先程の涙は何処に行ったのか新しい玩具を与えられた子供のような満面な笑顔に早変わりし、フォークを手に持ち今度はお行儀良く綺麗に食べている。
でもまぁ、それでも頬や唇周りとかにはチョコが少なからず付いてしまっている。先程と比べると可愛いものだ。
「ほわぁ、これは何とも言えない甘さで脳内にズキュンと来るの。今までの疲れが吹っ飛ぶようじゃの」
あっという間に〝フォンダンショコラ〟を平らげたシロはゴクゴクとグラスに手を伸ばし〝ココア〟を一気に飲み干した。
「プハァ、似たような味わいなのに、こっちは固形物、こちらは液体とは何とも面白いの。実に美味じゃ」
せめてケーキとジュースと言って欲しかった。
美味しいと言われたのに固形物と液体と言われては、料理人として戦いには勝ったが勝負には負けた感がすごくあってしょうがない。
でもまぁ、まだシロをダ女神と思えばどうにか立ち直れる。
「何か失礼な事を言われた気がしたのじゃが………」
ギクッ
「気のせいですよ」
そうだった、シロは相手の心を読めるのであった。こんな美少女の為りでダ女神様(笑)だもんな。おっと、いけねぇ。心を読まれる。
「シロ様に聴きたい事がおありなのですが、よろしいでしょうか?」
「失礼な事を考えていたようじゃが、寛大な妾だから許そう。して、何じゃ?聴きたい事とは?」
寛大というよりは、むしろ花より団子━━━食欲旺盛なだけではないか?ともかく、話を聴いてくれるという事なので質問しようじゃないか。
「魔神に何か心当たりはありますか?」
魔神という言葉にシロはピクッと反応した。どうやら知ってる様子のようだ。後はちゃんと話してくれるかどうかだ。
「心当たりもなにも、妾と同じアグドの神七柱の一柱だったヤツじゃ。どんな訳かアグドを滅ぼそうとしたのだが、妾を含む五柱で封印したのじゃ」
七柱なのだから、残りシロを加えて六柱で魔神を封印したんじゃないのか?
「遊戯神というふざけた馬鹿者が面白そうという理由で魔神側へついたのじゃ。そいつはボコボコにして、今頃何処かで妾の父上に性根を叩き治されてるじゃろう」
な、成る程!それにしても、シロのお父さんってどんなヤツなんだ?やっぱり神なのか?まぁ神の一人である遊戯神と何処かで暮らしてるから神なのだろう。
「妾の父上か?妾の父上はアグドを作製した神…………創造神じゃ。今頃、何処かで世界を作ってる事じゃろうて」
想像はしていたが、何かとんでもない話を聴いてる気がしてきた。
「話は反れたが魔神は七つに分割して封印しておる。見た目は何ら変哲もない道具であったり、武器であったりと様々じゃの」
「封印を解く方法はあるのか?」
方法を知ってれば、魔神教会の邪魔を出来るやもしれない。神が何人かでようやく封印した化物だ。封印が解ければ、どれだけの被害に及ぶのか想像出来やしない。
「何じゃったかな?昔の事ゆえ忘れてしもうたわ。わっははははは」
笑い事じゃねぇよ。やはり、ダ女神だったか。こんなヤツが神だと不安要素しか残らねぇ。
俺より強いから口には出さないが、本当にダ女神だな。イラついたので、二回内心で思った。
「もし、封印が解けても今のお主なら倒せるじゃろうて(多分)」
「今、多分って言わなかったか?言ったよね!」
「気のせいじゃろう。それよりも、まだ旨いもんがあるのじゃろう?」
いつもはデザート(菓子)系を出していたが、ここは趣向を変えて肉料理にすりのもありだ。今のところカズトのアイテムボックスにはたんまりと討伐で狩った魔物の肉が入ってる。
「分かりました。では、ちゃっちゃと作りますんで、少々お待ちください」
「それは楽しみじゃ。ほれキッチンはあそこじゃ」
シロが指した方向には確かにキッチンがある。それもカズトの故郷である日本の最新式のだ。
でも、ここに来た時にはなかったはずなのだが、シロの何らかの能力によって今出現させたのか?!それも俺でさえ使った事ない最新式の調理器具が揃い踏みだ。ここはグッジョブと言う他ない。




