82食目、魔法大国マーリン行き四日目~契約の途中で駄女神に呼び出された~
王妃様が用意した契約の儀に王妃様が親指を軽く切った後、血判を押した。その隣に重ならないようカズトも親指で血判を押したところで、契約の儀が光り自動的にスクロールを巻くように巻かれ光に包まれ消えた。
消えて不安になるが、これで成功したらしい。再び同じ契約の儀が出現する時は、違反した時か契約内容を変更する時のみだ。
「これで契約は━━━━」
王妃様の口が止まった。
王妃様だけではない。王様も俺の隣に座ってるレイラも微動打していない。まるで、俺以外の時間が止まった風に見える。いや、確実に止まってる。
こういう事を出来るのは、俺が知る限り一人しかいない。
「はぁ~、何の用ですか?」
ため息をつきつつも俺は何もない空に向かって問い掛ける。問い掛けてから数秒後、俺の目の前にステータスウィンドウに良く似た画面が現れる。
・直ぐに行きますか?
・YES/NO
※もし、NOを選んだ場合はアナタに想像出来ぬ程の天罰が下ることでしょう。ご聡明な判断を期待します。
と、注意書きまで記されていた。
あの方なら本当にやりかねない。もし、戦う事になったなら勝てる気がしないし、俺の死体が残ってたら幸運と思うしかない。おそらく、簡単に消滅する出来る力を持ってるから。
俺は選択の余地がない二択を押し、カズトはこの場から消えた。
「ふぅ、何回やっても慣れないな。シロ様来ましたよ」
ポツンと丸いテーブルが一卓と椅子が二脚があるだけで他は何もない真っ白な空間。カズトがここで暮らしてたら気が狂いそうだ。
「良く来ました。さぁ座りなさい」
良く来ましたじゃねぇよ、ここに来る度に時間を停止させられちゃ俺が勇者でなかったら心が耐えらず廃人になってると、それとなく時間停止の事ミミに聞いてみたらそんな答えが帰ってきた。
でもまぁ、来る度にこう思ってる。見た目は人形みたく可愛い少女と話せるなんて俺は満更ではない。だが、年齢=この世界が出来た日だけどな、それと戦闘力は俺の数倍はあるから下手に逆らえない。
見た目と中身が違う特殊な例だとカズトは考える。まるで羊の皮を被った狼だ。
「はい、お土産です」
シロの目の前に木皿一杯に積まれた〝ポテトチップス〟とそのお供として〝コーラ〟を差し出した。この世界の女神は太らないらしいが、普通なら肥満まっしぐらな油と糖質をたっぷり含んだメニューだ。
「ふぉ、これが人間の王が夢中になっておったポテトチップスとやらか。それにこっちの黒い飲み物はコーラ…………クゥ~、待っておったぞ」
何の躊躇いなく〝ポテトチップス〟に手を伸ばしバリバリボリボリとブラックホール並みにシロの口の中へ消えて行く。度々、食うのを中断して〝コーラ〟をグビグビと飲みほす。
「バクバクモグモグ…………それよりも…………バクバクモグモグ…………あれも…………ゴクゴク…………出さないか」
「食べるか話すかどっちかにしろ!お行儀が悪過ぎる」
それ以前に〝ポテトチップス〟をバリバリと食べてる影響で小さな破片が飛び散って白くて綺麗なテーブルが案の定汚くなっている。それにシロの顔や羽衣までも汚れて女神の面影がなくなってる。
これで太らないんだから、全国中━━━━いや、全世界中の女を敵に廻すな。
「ほら、ジットしろ」
俺は見てもいられず、シロの口周りを布巾で綺麗にする。羽衣は後でどうにかするとして、テーブルを綺麗に拭いていく。料理人であるカズトは汚いものが大嫌いなのだ。
冒険時、名前は忘れたが汚物を撒き散らす魔物に出会った瞬間に汚物消毒という名の自然破壊した事がある。森の一つが消滅した事件があった。
「また、食べれば同じだから━━━」
「あぁん、何だって?」
俺は食べ物を粗末するヤツと汚いものが許せない。
よって、俺は最後まで言い終わる前にシロを【威圧】で牽制した。【威圧】は相手に殺気を飛ばし戦闘意欲を削ぐためのサポート的な技術だ。
中には様々な気持ちを【威圧】で飛ばせる者もいると聞いた事あるが俺はそこまで器用ではない。
「ひぃぃぃぃ!ご、ごめんなさいごめんなさい」
ガクガクブルブルと戦闘力ではあちらが上のはずなのだが、カズトの【威圧】により見事に小さな子供が親に怒られてる風に震えてる。
カズト自身はあんなに震えなくても良いのにと少しショックを受けつつも、シロがボロボロと溢した〝ポテトチップス〟の破片を片付けている。
「妾は女神ぞ。こんな事して許されると思ってるのか!」
「あぁん、もう一回言ってくれるかな?女神がなんだって?」
ニコニコ笑顔でカズトは【威圧】をまたシロに飛ばす。その【威圧】にまたシロはガクガクブルブル怯え震える。これを何回か繰り返した分からない。




