SS7-10、女婬夢族ジブリールの居場所~冒険者ギルドへ行く~
ただ衣服を買いに行っただけなのに、どっと疲れた。《正義》とジブリールは、その足で昨晩泊まった宿に再度泊まる事にした。今日は、もう何処かに行く気力がないからだ。
「ふぅ」
部屋に入った途端にベッドへ《正義》はダイブをし、そのまま眠気が襲って来て抗う事なく瞳を閉じた。
直ぐに寝に入ったからかジブリールが何かしら不満たっぷりと文句を言って気がするけども、眠気の方が勝ってしまい全然聞いていない。
「ふぅふぁ~、もう朝か?」
あのまま熟睡してたらしくタイムリープしたと錯覚する程にいつの間にか朝を向かえていた。窓辺から射し込む朝日に対して《正義》は、目を擦るとアクビをし上半身を起こした。
むにゅ
「むにゅ?何だ、この感触は?」
体を支えようと右手を横にずらした場所に何か柔らかい感触のものがある。その感触を確かめようとモミモミと揉んだ。
「あぁん」
「この声は……………」
声がする方向へと《正義》は顔を向けた。そこには、今だに眠ってるジブリールがいる。
そして、《正義》の掌はジブリールの胸に置かれていた。
いや、待て!そもそもジブリールが眠ってる場所がおかしい。ベットは二台あり、ジブリールは確か向こう側のベットに眠ってたはずだ。
と、記憶を探ってみると《正義》はジブリールが眠る前に早く眠ってしまったと思い出した。
つまり、ジブリールが眠ったところを《正義》は見ていない。おそらく《正義》が熟睡になったところを見計らってベットに潜り込んだんだろうと推測出来る。
「……………服は……………乱れてない………………間違いは……………犯してないはずだ」
《正義》は、武力に置いて最強を誇るが女性関連にめっぽう免疫がなく、これまで独身を貫き通している。総本山で、貴族の嫡男みたいな対応したのか自分でも不思議に思ってる。
女性に普通に話す事なら何ら問題はないが、腕を組んだりすると赤面してしまう。だが、教祖様であるカノン様の命令にて《恋人》の相棒となったのだ。
鉄の精神とは言い難いが、《恋人》限定に限って女性関係で動揺しないよう慣れて行く積もりだ。
「ふぅ~、おい起きろ」
「ふみ~、もう朝なの?目覚めのキスしてくれたらおきるぅ」
「どうやら死にたいようだな」
瞬時に聖剣を作製した《正義》は、剣先をジブリールの額に向けている。後、数cm程でグサリと脳天に突き刺さる距離だ。
「じ、冗談よ。その剣を仕舞って、怖いから」
ガタガタと掛け布団を抱き締めながらジブリールは、震えている。だって、武器を向けられる位なら慣れっこなジブリールでも、《正義》の本気で殺ろうとした目だけは怖い。
あれは人間がするような目じゃない。そもそも魔族内でも先程の《正義》以上に本気で殺られると感じた事はない。
普段は優しく紳士的な《正義》だけど、おそらくこの世で一番怒らせたらいけない類いの生物だとジブリールは心の奥底でそう刻んだ。
「着替て朝食を食ったら冒険者ギルドに行くぞ」
「はーい」
あの殺意めいた瞳は、もうしておらず今まで通りに紳士的な雰囲気へと戻っていた。
普段優しい人が怒ると怖い事を実証させられた気分だと内心でジブリールは、ちょっと愚痴った。もちろん口には、出さない。またあんな目に合うのは嫌だから。
「ここが冒険者ギルド?」
「そうだ。ここでお前のギルドカードを作る」
朝食を食べた後、早速冒険者ギルドに来ていた。昨日の商人ギルドとは、うってかわって築年数100年は建ってそうなボロ家だ。
いや、商人ギルドの方が金を持ってるだけだ。商人ギルドと比べるとボロ家と思えてしまうが、目の前の冒険者ギルドも外見上立派だ。
「いらっしゃいませ。ようこそ、冒険者ギルドイグナス支店へ」
柄の悪い連中に絡まれないよう早足で受付に向かう。登録する際に絡まれるのがテンプレだ。ジブリールが一人で入ったならとっくに絡まれてるはずだ。
「彼女のギルドカードを作りたいのだが……………」
「はい、こちらに必要事項お書きの上、実技試験を承けてもらいます」
冒険者は、異世界においてテンプレな職業の一つだが、危険を伴うため実力があるかどうか試験を行うのが冒険者ギルドの規則の一つとなっている。
登録用紙にジブリールがカキカキと必要事項を書き記し受付嬢に渡す。名前はそのままで、種族:人間、職業:魔法使い、と記した。流石に魔族や女婬夢族とは書けない。
もしも書いたら討伐対象になりかねない。
「はい、承りました。試験料として銀貨一枚をお願い致します」
チャリーンと《正義》は、銀貨一枚を受付嬢に渡した。
これで試験が始まるまで暇になった訳だが、冒険者ギルドは何故か酒場と隣接してるらしく五月蝿い笑い声が、こちらまで聞こえて来る。




