SS7-8、女婬夢族ジブリールの居場所~ジブリールの服を買う~
「失礼、今よろしいか?」
「はい、いらっしゃいませ。ようこそ、商人ギルドイクナス支店へ」
《正義》とジブリールが並んだ一般客用受付の1レーンを担当する受付嬢は、そこそこ顔が整っており笑顔が可憐な………………十台半ばの少女に見える。
が、耳は尖っており魔力の底が見えない。おそらく、森精族だろう。それなら、外見と中身の年齢は一致しない。
森精族は、成長が遅く【森の気】という種族特有な能力を持っており、魔法に長けてる種族の一つだ。
人間よりも遥かに長命で、外見が二十歳でも内面では300歳とか結構いる。だから、外見に惑わされてはダメだ。
「こちらは衣服を扱ってるだろうか?」
「それでしたら衣服専門の従業員をお呼び致しますので、この番号札を持ってお待ちください」
木札を渡された。この木札には、『32』と書いてあり遅いのか早いのか微妙な数字だ。
急ぐ事ではないし、待たせてもらおう。《正義》の隣に立つジブリールは天使のようにニコニコと笑顔で《正義》と腕を組んでいる。
その様子を通り過ぎる人々10人中9人は振り返り見ている。端から見たら美男美女のカップルに見えてしまう。当の本人達は、そんな事を気にする様子もなく、ただ衣服の担当者が来るのを待ってるだけだ。
「お、お待たせ致しました」
「いや、そんなに待ってないから大丈夫だ」
《正義》の言う通りほんの数分待っただけで、衣服担当の者が走りながらやってきた。
衣服担当の者も森精族なのか?耳が尖っており、まだ人間の年齢だと10台半ばに見える。だけど、実年齢はウン百歳はいってるはずだ。
「わ、私は衣服を担当するフルールと申します。お見知り置きを」
「あぁ、俺は………………カズヤだ。こちらはジブリールだ」
「よろしくなのよ」
「今日は、彼女に合う服を探してくれ」
「彼女さんのですか。男冥利につきますね」
彼女ではないと反論したかったが、ジブリールの頬が赤く染まりウネウネと体をうねらせてる様子が見ていて面白くて、敢えて黙っていた。
衣服担当というフルールが案内をするというので背後を着いて行くと、衣服コーナーと看板に書いてある傍ら男性用と女性用とで別れている。
流石に俺が女性側に入るのは躊躇いがある。入ったら絶対に白い目で見られるに決まっている。
「ここに待っててやるから早く行くと良い」
「えぇ、カズヤさんは来ないのですか?」
魔神教会に名付けられたコードネームでは、流石にバレてしまう可能性がある。
ジブリールのコードネームと顔は流石に加入したばがりでバレてないはずだけど、《正義》は色々と有名過ぎてバレる。
「いや、俺が行ったら色々とヤバいだろう」
「えぇ、良いじゃないですか。私の服を一緒に選んでくださいよ。感想を言ってくださいよ」
俺を社会的に抹殺する気なのか?!それとも、コイツは天然なのか?!まぁ後者なのだろう。
女性用という事は、女性用の下着もある可能性がある訳で、そんな場所に男である《正義》が行ったら変態扱いされる。
「ごめんこうむる。俺は他のところを見てるから早く選べ。感想なんぞ、後で言えるだろ」
「むぅ、良いですもん。絶対に悩殺してやるんだから」
頬を膨らませ怒ってる素振りを見せるジブリール。そんな素振りを可愛く思ってしまう《正義》の心臓はドキドキと煩く高鳴ってる。
何故自分の心臓が煩いのか首を傾げ、感じた事のない感情に戸惑いを表情では出さなくとも内心では混乱している。
でも、今はジブリールの服を買いに来てるのだと半ば強引に、今はまだ理解出来ない感情を押し殺し適当に時間を潰すのであった。
「ふむ、男一人ではダメかもしれぬが……………男女一組で入るなら良かったかもしれぬな」
ジブリールが女性専用の衣服コーナーへ消えた後に男女のカップルらしき二人がジブリールの後から奥へ入って行ったところを見てそう呟いた。
ジブリールの言う通りにして自分も入れば良かったと後々後悔をしながらも後の祭りだと諦めるしかない悔しさを噛み殺した。
「俺も自分の服を見るか」
《正義》は、ただ待ってるだけでは退屈なので女性用衣服コーナーの隣にある男性用衣服コーナーを覗く事にした。
《正義》が今現在所持してる衣服というと地球から召還された時に持っていた衣服のみである。アイテムボックス内は時間経過しないので、ほぼ劣化しないまま保存出来てる。
普段は騎士のような鎧が普段着と化しており、睡眠時は安物の寝間着で済ませてる。
「邪魔するぞ」
「いらっしゃいませ。あら、騎士様で」
「いや、ただの冒険者だ。店主、服を見せてもらっても?」
「えぇ構いません。気に入った服がありましたらお声をお掛けください」




