SS7-6、女婬夢族ジブリールの居場所~とある村の精気を吸う~
ジブリールは《正義》と共にグフィーラ王国の辺境にある村(辺鄙過ぎて名はない)の近くにある街:イナクスという街で宿を取った。もちろん、一部屋である。
冒険者としての《正義》はそこそこ有名であるが田舎といえる場所では知ってる者はごくごく少数のようで、すんなりと宿が取れたのだ。大都市になると、いつもなら人が集まって十数分間は身動きが取れなくなるという。
「今日は、もう遅いから行動に移すのは明日にしよう」
「えぇそうね」
一部屋と言ってもベッドは二つだ。ジブリールにとってはベッドは一つで良かったが、《正義》が譲るなかった。《正義》によると「女子の柔肌に触れるなど紳士のやるべき事でない」と言っていた。
ジブリール的な解釈では、今までまともに女性と付き合った事ないので恥ずかしいと聞こえる。
ここはやはり、《正義》が寝静まったところで《正義》のベッドに潜り込み規制事実を作ってしまえば、《正義》の性格上責任を取ってくれるだろう。
だがしかし、いざ《正義》が寝静まった時間帯になるがジブリールは自分のベッドから動けずにいた。
《正義》は、グッスリと熟睡してるはずなのに………………それなのに、隙が見つからない。それどころか、殺気ではないが殺気に似たオーラ的な何かが《正義》から漂って来る。
ジブリールは直感で自分のベッドから出たらダメなヤツだと察知した。出た直後、何かは知らないが何か恐ろしい事が待っている。そうジブリールの直感が告げていた。
そして、そのまま朝を迎えてしまった。
「ぐっすり眠れたか?《恋人》よ」
「えぇ、眠れたわよ(悔しい程に)。今日の任務に支障はないわね」
「そうか、下で食事を取った後に直ぐ向かうが良いな?」
「それで良いわよ」
今から向かう任務はジブリールのためでもある。せっかく《正義》の相棒になったというのに、ジブリール自身はタロットナンバーの中で最弱と言う他ない。
それで《恋人》の技術による精気吸収でステータスを大幅にアップさせようとする事が半分、初見の技術の実験が半分だ。
「目的地まで歩きで行くからな。大丈夫か?」
「誰に言ってるのよ。人間と違って体力はあるんだから」
誰にも見つからないよう街道は避け、木々の中を進んで行く。元勇者である《正義》と女婬夢族であるジブリールは隠密にはたけており、すいすいと泳ぐように木々の中を馬車の進むスピードよりも早く進む。
いや、もしかしたら自動車並みに早いかもしれない。まぁこの世界に馬車より早い乗り物は存在しないから比較しようがない。
「ほぉ俺の速度に着いて来るとは、中々やるな」
「こんなの余裕なのよ。もっと速度を上げても大丈夫よ」
余裕綽々と告げるがジブリール自身驚いてる。魔神教会に入るまでは、こんなに体力は無かったはずで、こんなに速度を出せるとは思っていなかった。
過去にカズトと対峙した時でさえ、カズトを見失わないよう目で追っ掛けるのに精一杯だった。それが今では初代勇者である《正義》と歩幅を一緒に出来てる。まぁ《正義》がジブリールに合わせてるって方が正しいか。
それでもかなりの速度で駆け巡ってるのに息が乱れない。どうやら《恋人》の技術を身に付けただけでなく、ステータスも大分上がっていたようだ。まるで別人にもなったかのように。
「この村だ。準備は良いか?」
「いつでも良いわよ。耳を塞いでるからやっちゃって」
《正義》は、瞳を閉じ右腕を平行に前へ突き出した。集中するよう右腕から右手に魔力を集め、魔力が目的値まで貯まると右手に何やら出現した。
「出でよ【聖武器創造:聖琴】」
両手で持てる程小型のハープが出現した。《正義》の技術の一つで様々な聖武器を創造出来る。
ただし、今現在の勇者が所持してる聖武器は作る事が出来ないという制限はあるものの強力な技術なのは変わらない。
「そして聖琴の技術【眠りの音色】」
二人が隠れてる木々から目的地の村を包むよう聖琴から音色が流れる。この音色を聞いた者は、みんな強制的に眠りに誘うのだ。
「ふぅ、後は《恋人》……………君の仕事だ。存分に吸ってきたまえ」
「えぇ分かってるわ」
二人が村に入ると、分かってはいたが異様な光景が広がっていた。《正義》によって、眠らされた村の住民達はまるで死んでるかのように眠りについている。
爆弾が爆発しても、おそらく起きないだろう。それほどに《正義》の技術は強力なのだ。《恋人》が精気を吸っても効果が切れない限り気づかない。




