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12食目、猫又の商人

 チリンチリーン

 と、お店の扉が開きドロシーが応対すると━━━


「いらっしゃいませ………あっ!ご無沙汰してます。ライファン」


 入店してきたのは、勇者一行としては懐かしい者であった。頭には獣人族特有の獣耳が付いており、腕と足の途中までは毛皮で覆われている。それ以外の外見はさして人間と変わらない。

 獣人族は男女問わず露出が多めの服装を好むそうで、目の前のライファンと呼ばれた獣人族も露出が激しい。

 胸にはサラシ状の布を巻いただけで上だけではなく下にも谷間が出現しており目のやり場に困る。ボトムスも一見短パンに見えるが二本の尻尾を出すために半ケツ状態になってる。


「久しぶりにゃ。仕事で近くに来たから寄ってみたにゃ」


 彼女のフルネームはライファン・トイヴァーン。獣人族の上位種族である獣妖族だ。その中で猫又族と呼ばれる尻尾が二股に別れてる種族だ。出会った当初は猫人族ケットシーと間違えた。

 猫又族は、猫人族ケットシーの上位種族であり、外見とは裏腹に結構強かったりする。

 冒険の最中に偶然会い、その後も度々再会し行商人として勇者一行をサポートした経緯がある。ある意味では勇者一行の仲間である。


「良くぞ、いらっしゃいました。お席はこちらにお願いします」


「ありがとにゃ。それにしても、あのカズトが飲食店をやるとはにゃ」


 感心しながらライファンは店内を見渡し繁盛してるのを確認するとメニューを開いた。とあるジャンルの料理に目が止まった。うっすらとヨダレが垂れそうになり注文する料理が決まる。


「注文決まったにゃ」


「はーい、ただいま。あっ!久しぶりです。ライファンさん」


 レイラが注文に取り来たついでにライファンに挨拶をかわす。レイラにとってライファンは時期は短いが師弟関係であり恩人なのである。


「姫じゃにゃいか。元気だったかにゃ?」


「はい、お陰様で。ライファンさんがいたから魔王城まで辿り着く事出来ました」


「それはお前達の実力だにゃ。我は何もやってないにゃ。それよりもコレを頼むにゃ」


 ライファンはメニューを指差し注文する。猫又なのでもちろん魚料理を頼んだ。

 そして、数分後ライファンのところに料理が運ばれてきた。大皿に魚一匹まるごと鎮座してる。席に座ったままでも匂いがこちらに漂ってきて口の中にヨダレが満タン近くまで分泌してくる。


「はいよ、お待たせしました。鰈の煮付けです」


 運んで来たのは、レストラン"カズト"の料理長シェフ(料理する者は二人しかいないが)である。

 元勇者であるカズトもまたライファンに恩があり大切な仲間だと思っている。もし、ライファンが来たらこの料理を出そうと決めていた。


「美味しそうにゃが、我が頼んだのは別にゃ?」


「これは俺からのサービスです。今までお世話になりましたから。そのお礼です」


「や、やめるにゃ。そ、そんな事言っても嬉しくないにゃ!!」


 頬を僅かに赤らめながら身体をクネクネと動かしてる。動きは気持ち悪いが何かこう………モフモフしたい気持ちに駆られるのはどうしてだろうか?同意なしでやったら犯罪なるから実際にはやらないけどね。


「………!!そ、それよりも、早く食べないと冷めちゃいますよ。良いものが手に入りましてね。きっと気に入ると思います」


 何処からか突然、勇者カズトが寒気を感じる程の殺気を感じ即座に話題を反らした。フッと後ろ向くが誰もいない。結局、誰が殺気を飛ばしたのは分からず仕舞いで勇者に勝てる者なんて、そうそうないからスルーする事にした。


「ふむそうだにゃ………はむ!こ、これは!にゃんという柔らかさで魚の旨味が引き出されてる中で魚臭さがないにゃ。それに………口の中でとろけるにゃ」


 気に入ってくれて何よりだ。こちらはお客様に食べて貰って美味しいと言われるのが嬉しいと思っている。客商売してる以上「お客様は神様だ」という言葉をモットーにやっているつもりだ。


「それよりも、これは何処から仕入れたのにゃ」


 ライファンは水が入ってるグラスを片手にそう尋ねてきた。このグラスに目をつけるとは、さすがはプロの商人だ。

 だが、いくらライファンの頼みでも仕入れの秘密を話す訳にはいかない。話すならカズトの魔法やスキルを暴露しなきゃならない。この世界では、相手のステータスを本人が直接教えない限り暗黙のルールで聞くのはご法度なのだ。


「それは………これだ」


 カズトは口の前に人差し指を垂直立てた。それは秘密という合図だ。これを見たライファンはどうやら察したようで聞く事を諦めかのように見えた。

 見えたが、そこは商人の意地がある。聞けないなら別の方法を取るまでだ。ライファンが取った行動とは━━━


「にゃら、これを売って欲しいにゃ。買値はそちらの言い値で良いにゃ」


 グラス自体はこの世界でも充分に作れる職人はいるにはいるが、質、大きさ、ガラスの厚さ等々を全く全て大量に同じ物を作るとなると話は変わってくる。職人が一つ一つ手作業で作ってるため大量生産の技術は無いに等しく、必ずと言っていいほどムラが生じるだろう。

 そこに目をつけたのがライファンだ。周囲を見渡すとどれも同じグラスでムラが無い事に気づいたのだ。それに商人の血が騒いで「これは良い商売になるにゃ」と感じたらしい。


「うんまぁ、売るなら良いか。食べ終わったら空いてる部屋へと案内させるから、そこで待っててな。持って行くから」


 これにてライファンとカズトの商談妥結する事になったのだ。後にこのグラスはカズトグラスと呼ばれるようになるのだが、それはまた別の話だ。





 

イベント間近なので、次回更新出来るか不明です。

出来たら更新します。

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