SS5-9、猫又の行商~猫と鳥のケンカ~
オババ様と不死鳥女王フォルスが睨み合う中、蚊帳の外に置かれてるタケヒコとライファンで雑談をしていた。
「俺は紹介された通り"棍の勇者"タケヒコだ。よろしくな」
「獣人国家アルカイナ内で棍の勇者を知らにゃいヤツはいないにゃ。近々とお会い出来、光栄にゃ。我、ライファンですにゃ。行商を営んでるにゃ」
お互い握手をし簡単に自己紹介をした。今日、初対面だが二人共にお互いの事を噂程度に聞いた事があった。そんな訳で初めて会った気がしないようで、直ぐに意気投合した。
「ライファンさんも苦労してるようで……………」
「ライファンで良いにゃ。我もタケヒコと呼ぶにゃ。苦労してるのはお互い様にゃ。ズズー」
オババ様と不死鳥女王フォルスの睨み合いから壮絶なケンカが勃発し、部屋の中は惨劇と化していた。
その中でライファンとタケヒコは呑気にお茶とお茶請けを楽しみ、カズトの話で盛り上がっていた。
「タケヒコがカズトと知り合いとは驚きだにゃ」
「えぇ、世界は広い様で狭いと感じてます。先輩は元気でしたか?」
「元気で店を切り盛りしてるにゃ。グフィーラ王国とその周辺にゃら知らにゃい者はいないはずにゃ。今思い出すと、また食べに行きたいにゃ」
ライファンの事が羨ましい。姫さんの事がなけりゃ直ぐにでも会いに行くのに。別に姫さんの事を悪く言う積もりではけしてない。
俺は従者として姫さんを大切に思ってるし、こちらも大切に思われてるのを実感してる訳で不満は更々ない。
だけども、あぁ~先輩の料理かぁ。食べたくてウズウズする。どうにか食べる方法はないものか。
「そうですか。先輩が元気にやってる様でなによりです。それにしても……………先輩の料理を無性に食べたくなります」
「その気持ち分かるにゃ。あれは一種の魔法みたいなものにゃ。人を病み付きにする料理…………まさに魔法にゃ」
そうカズトの料理は何故か人々を魅了する。アルバイトの時から頭角を表し、就職した飲食店でもオーナーシェフよりカズトの料理を目当てで訪れる客も多かった程だ。
「どうにか先輩の料理を食べに行く方法ありませんか?」
ライファンの話を聞いていたら、どうしてもカズトの料理を食べたくなってきた。ぐぅぅぅぅと腹の虫が鳴り、腹と背中がくっつきそうだ。
もうプライドを殴り捨て去り、恥を忍んでライファンに何か方法はないか訪ねてみる。
「一つだけ思いついたにゃ」
「本当ですか!その方法とは、一体何ですか?教えてください。ライファン師匠」
「師匠にゃ?!わ、悪くないにゃ。その方法とは……………今年の世界会議メープルに行く事にゃ。フォルスも行くはずにゃ。そこに着いて行けば、カズトの会えるじゃにゃいか?恐らく、グフィーラ王の護衛として着いて来る可能性大にゃ」
師匠という言葉に気を良くしたライファンはタケヒコに名案を授ける。前回の世界会議メープルが開催時期には、まだ今期の勇者(カズト達は魔王討伐に出掛けていた)が揃っておらず勇者は誰も来ていなかった。
だけど、二人の勇者を除き世界会議メープル出席する各国に揃っている。そういう訳で、恐らくは今年の世界会議メープルには勇者を連れて来るだろうと予測されてる訳だ。
世界会議メープル━━━━世界各国の王族が四年に一度集まり、名前の通り会議をする。その都度、議題は違うが大体は世界情勢や世界を脅かす脅威の対応等々を七日間掛けて話す訳だ。
その日の会議が終了すれば、王族の親睦を深める夜会が開かれる。その夜会での目的は親睦を深める意外にも他の王族…………王子や王女の婚約を結ぶ場でもある。
なので、大抵王様と王妃様と共に何人か子供を連れて来る場合がある。だが、獣人国家アルカイナには無縁な話である。不死鳥女王には、子供はいないのだ。というより、子供を作る必要がない。自分が不死なのだから。
「成る程、ライファン師匠さすがです。姫さんと一緒なら堂々と会える訳ですな」
「本当にゃら我も着いて行きたいにゃけど、王族とその従者又は護衛しか行けない決まりにゃ」
成る程、従者兼護衛である俺は姫さんと一緒に行ける訳ですな。それで先輩と会えれば万々歳、会えなければ次の手段を考えるまでだ。
「良い運動になったのぉ」
「鈍ってないようで、安心したわい」
先輩に会えるかもと考えてる内にオババ様と不死鳥女王フォルスのケンカに終止符したようで、二人ともジョギングから帰って来た後みたいだ。
汗を掻き髪や着物が肌にへばりつき、不死鳥女王フォルスが胸元をバタバタと手の平で扇ぐ姿は、男なら10人中9人は振り向いてしまうだろう。
タケヒコもその一人で、チラチラと指の隙間から覗き見ている。隣にいるライファンはニヤニヤと何も言わずタケヒコを見てる。後で何か言われそうで怖い。




