SS7-4女婬夢族ジブリールの居場所~初代勇者が生きていた~
「教祖カノン様、ただいま戻りました」
「私達も今戻ったところよ」
黄金像からでは解らなかったが、初代勇者改め《正義》の髪は黒く短髪だ。黒い髪は珍しく、召還者以外だと東方の人々が黒い髪をしてるらしい。
顔はイケメンの部類に入り、背丈が180cmあるだろう。楽々ジブリールや教祖カリンの背丈より高い。しかもキラメキ笑顔が乙女心にキュンキュンとくるものがある。
「教祖カノン様、これを納めください」
「ずいぶん狩りましたね。魔神様も喜ばれる事でしょう」
「教祖カノン様にお褒めに頂き光栄でごさいます」
《正義》が教祖カノンに何やら袋を渡すと、ひざまづずき教祖カノンの手の甲へキスをした。まるで少女マンガのワンシーンを見てるかのようだ。
「おや?可憐な女の子がいますね。迷子なのかな?」
こちらに気付いたようだけど、ずいぶんと失礼な事言ってらっしゃる。私は、これでも立派な大人の女性です。こじんまりとしてるけど、立派な大人のレディーです。
「この方は、今日から我々の仲間になった《恋人》です」
「へぇ~、魔神教会へようこそ。歓迎するよ、マドモアゼル」
ヤバい、ドキドキしてきた。"剣の勇者"よりも良い男じゃない。多分だけど、私の頬が赤く染まって瞳がハートになってないか心配だ。恥ずかしくて、まともに顔を見られない。
《正義》とジブリールの様子に《世界》と《愚者》が笑いを堪えようと、口を閉ざしてるが体が震え我慢してるのがバレバレである。
しかし、ジブリールは《正義》しか目に入ってないようで気付いてない。
「顔が赤いようだね。具合でも悪いのかい?」
「い、いえ!だ、大丈夫です。はい」
この心が締め付けられるような感覚って一体何?!"剣の勇者"とか他の男どもには感じなかった。だけども、けして嫌な感じではない。
女婬夢族として〝あり得ない〟感情だけど、このドキドキ感は自分でも間違いないと確信を持ててしまう。
ヒソヒソ
「これは……………ほぉほぉ…………これはこれは」
「なに?あれはそういう事なの?」
「あの二人をくっつけたら……………新しいオモチャが手に入るわね」
教祖カリン、《愚者》、《世界》の三人がジブリールと《正義》から少し離れたところでヒソヒソと噂好きなオバサンみたく、こちらを見て小声で話してる。
だけども、こちらに声が丸聞こえだ。
「ちょっと!そこで何を話してるのかしら」
「もっと《正義》と話していても宜しいのですよ」
「えぇ、そうね。この際、《正義》と仲良くなったら?」
「くっつかないと面白くないじゃない」
真面目そうな三人であるが、それは大いに間違いだ。実は、この三人は大の噂好き………………というより、楽しい事が好きなのだ。
「……………??何の話をしているか分からないが、魔神教会の仲間として歓迎しよう」
《正義》は、三人の話が理解出来ず首を傾げるが、ジブリールを仲間になった事を心の奥底から歓迎してる。
ポン
「コイツは鈍いから、まぁ頑張れ」
ポン
「クスクス、応援してるわね」
ポン
「楽しみにしてる。教祖命令で、成り行きを逐一報告する事」
と、それぞれジブリールの肩を叩き総本山の奥に消えて行った。物凄く追って文句を言いたいジブリールだが、隣に《正義》がいるため追えなかった。
「そういえば、伝える事があったの忘れてた」
「うわっ!」
去ったはずの教祖カリンがジブリールの側へ急に現れた。教祖権限である転移(全)だ。魔神教会の信者と幹部の所へ転移出来るという限定的な転移であるが、敵から逃げるのには最適かもしれない。
「急に現れないでよ。ビックリするじゃない」
「これが私のみ使える魔法。で、連絡事項。《恋人》と《正義》を相棒とする。これ、決定事項だから。《正義》、ずっと相棒を欲しがっていたでしょ?」
「教祖カノン様、有り難き幸せ。これからもアナタについて行くとお約束致しましょう」
「それと…………《恋人》…………まぁ、頑張って。良いご報告を待ってるわ」
ジブリールには、それだけ伝えると教祖カリンはそそくさと転移して去って行った。これでジブリールと《正義》の二人きりとなった訳だ。
「ふむ、新たな相棒として良しなに頼む。《恋人》よ」
「えぇ、こちらこそよ、よろしく」
内心女婬夢族らしくないドキドキがいまだに鳴り響いている。
嬉しい半面、あの三人にオモチャとして弄られると考えると不安しか残らない。だけど、《正義》と二人になる機会が増えるとすると、そう悪くない気持ちだ。
オモチャにされるのは釈だけど、《正義》と一緒にいられるなら我慢してあげるじゃないの。
「《正義》、質問良いかしら?あなたの事、全然知らないから。教えて欲しいの」
初対面で何も知らない相手を好きに…………一目惚れするとは、女婬夢族から見たら恥ずべき行為だけど、どうでも良い。《正義》と一緒にいられる事が、今のジブリールにとって全てなのだから。




