三つ巴・オーサカ-ブラック・ジェリーその6
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ギタイと人間の身体能力のスペックは、ギタイが人間のそれを遥かに上回る。
いくら優れた武器を用意しようと、その圧倒的な身体能力で何人もの掃除人の命が奪われて来た。
それゆえ、掃除人達をとりまとめる上層部の人間達は、何か新しいギタイへの対抗術を開発する必要があった。
そして完成したのが、死亡したギタイの能力を採取し、その能力を特殊に加工することで、それを一時的に人間にも扱う事を可能にする薬品だ。
ギタイの能力を扱う事が出来るようにする事から、その薬は「ギノウ薬」と呼ばれるようになった。
「しかしまだまだ開発段階……、さすがにサンプル品、右手がバキバキですよ。でも、発動した「電撃」のダメージはしっかり遮断出来ているようですし、十分と言えば十分ですね」
黒瀬は筋肉をほぐすように右手をぐるぐると回し、カチンと黒烏を鞘におさめた。
「さて……、彼女、「雨使い」さんをどうするか……」
黒瀬は地面に倒れる時雨のすぐそばまで近付くと、無造作に彼女の首に触れた。
「おや……、驚きだ。まだ生きている……!電気が水を伝って周りに逃げたか……」
見れば、だらしくなく開いた口から伸びた舌が、ピクピクと小さく動いている。
黒瀬は時雨の、ギタイの生命力に改めて驚愕しつつも、彼女がまだ生きているのには、ただ単に「ギタイは生命力が強い」と言うだけでは説明出来ない、何か強い物を感じた。
「ふむ……?もしかしてあなたも、私に何か大切な人を殺されて、復讐にやって来た方ですか?すいませんが私、殺したギタイの事はあまり覚えて無いんですよ。私にとってギタイとの戦闘は画面の向こうのゲームとあまり変わらないので……。だってRPGで殺したメタルス◯イムの数なんて覚えてます?」
黒瀬は聞こえていないとわかりつつも、煽るように時雨に語り続ける。
「いえ……メタルスラ◯ムにも及びませんか、あなた方ギタイは。ゴキブリと同じくらいどこからでも沸いて出てくるのに、経験値は雑魚モンスター以下ですよ」
どこか嘲笑うかのような口調で一通り時雨に語りかけた黒瀬は、小さくため息を付くと、
「………つまらないですね。まぁ、楽にしてあげますよ」
黒瀬はゆらりと光を反射して鈍く光る黒烏の刀身を鞘から抜き放ち、時雨のうなじに、向けて振り下ろした。