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ギタイ -全テヲ飲ミ込ム者-  作者: もちのすけ三郎
三つ巴・オーサカ
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三つ巴・オーサカ-ブラック・ジェリー

読んでいただきありがとうございます!

時雨が走った先にあったのは、大量の人で溢れた駅前の繁華街だった。

目がチカチカしそうな賑わいを見せる人混みの中で、1つだけ異端な雰囲気をまとっている者を、時雨は一瞬で見つけた。

黒く長い髪をゆったりと下ろした、「掃除人」。

(あの制服は……、ここら辺であの制服を着用するのは「竜玄屋」か。成る程、それなら「あの」手際も頷ける……)

竜玄屋に所属する掃除人は、1人と漏れず全員相当な手練れだ。

時雨は慎重に人混みの中で「掃除人」との距離をとり、自分の能力を発動させた。

(私の能力の射程は半径100メートル程……。気付かれる前に!)

同時に、彼女は身に付けていた膝まである黒いポンチョの下から、小さな折り畳み傘を取り出し、迷惑をかえりみずバッと広げた。

「「鉄砲雨」」

時雨がそう呟くと、何もなかった繁華街の上空、夕焼けで赤く染まった雲の隙間から、1滴の雫が漏れ出した。

それを皮切りに、ポツリ、ポツリと大量の雫が上空から人々に降り注ぐ。いわゆる「雨」だ。

しかし、彼女の起こした雨は、ただの雨では無かった。

彼女の隣、時雨がいきなり傘を開いたので迷惑そうに顔をしかめた男性の額に、雨の1滴の滴が落ちた。

するとその滴は、男性の額にめり込み、薄い皮膚を簡単に突き破ると、男性の脳ミソを貫通し、後頭部から再び空気中に飛び出し、地面にぶつかり弾けて消えた。

男性は当然頭から血を垂れ流しながら地面に倒れ、絶命した。

「うぉあああ!!」

「きゃあぁぁあ!!」

「なっ!?何なんだぁあっぽっ!!」

次々に降り注ぐ雨粒は、人々の体を貫き、悪魔の様に次々と命を奪っていく。

その日の天気も晴れだったため、誰も身を守る傘の様な物も持っておらず、パニックに陥った人々の頭には、身を守る手段を弾き出すのに時間がかかった。

これが、霧雨時雨の能力の「1つ」、「鉄砲雨」であった。

降る速度、雨粒の大きさ、透明度や温度。どれをとっても「鉄砲雨」は普通の雨とは変わらない。

しかし、唯一違うのは、生物の体に触れた瞬間、雨粒は極小の弾丸に早変わりし、生物の皮膚を貫き、ダメージを与える。

地面や無生物に当たれば、その瞬間「鉄砲雨」の雨粒は弾け、ただの水となる。

広範囲への無差別攻撃。これが、霧雨時雨の戦い方であった。




休憩中、フラりと竜玄屋を飛び出し、町に散歩に来ていた黒瀬は、信じられない現象に遭遇した。

瞬きも出来ない程の一瞬で、自分の体に大量の「死線」が突き刺さったのだ。その数はゆうに200を越える。

彼は即座に横に跳び、近くのコンビニに飛び込んだ。

顔色に変化は無い物の、ものすごい勢いで飛び込んできた黒瀬を見て、店員は怪訝な表情を浮かべている。

しかし、人からの目線はあまり気にしない黒瀬であったので、弁明も事情も説明せず、じっと外、特に先程まで自分が立っていた場所をにらんでいた。

すると、そこにやって来たのは「雨」だった。

ただの「雨」。地面にぶつかって弾け、いつの間にか消える「雨」。

しかし、その「雨」に黒瀬は何かとてつもない「ヤバさ」を感じていた。

そして、その予感は的中する。

コンビニの前を歩いていた女性が、何か機関銃の様なもので撃たれたかのように全身に無数の穴を開け、地面に倒れた。

「ひっ!ひぃぃぃ!!!」

店員がその様子を見て悲鳴を上げる。

しかし黒瀬には、悲鳴を上げるよりもこの状況……、おそらく、「ギタイ」の無差別攻撃を、何とかするのが優先だった。

(このままでは大量の死人が出る……。……休憩中でしたが……、まぁ、何とかしましょう)

そして黒瀬はゆっくりと立ち上がると、コンビニから「鉄砲雨」が降り注ぐ外へと足を踏み出した。


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