三つ巴・オーサカ-幕間にふる雨
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その日、大阪某駅前にて、単体のギタイによる大量無差別殺人が行われた。
「死の雨」、「しくらあざみの再臨」とも呼ばれたその事件の現場に、俺達、日田と白金、そして黒鱗はいたのだった。
誰のものかもわからない駐車場に車を止め、日田達は車を降りた。
「おっと黒鱗……、お前は車の中にいろ。何が起こるかわからんからな。その体はなるべく傷付けたくない。……ま、逃げるなよ。飯は買ってきてやる。」
「わーてるよ。「ガブ」とも決別しちまったしなぁ。あ、後飯は牛丼で頼むわ。大盛でよろしく~~」
そう言って黒鱗はヒラヒラと手を振り、日田と白金を送り出し、
「……さて……、何で「起きてられる」……。お前?」
目をスゥ……、と細め、何かを注意深く観察し、自問自答するように口を開いた。
「そういや……、何で大阪で降りたんだ?白金。あのまま直行で東京まで行っちまえば良かったのに?」
「あぁ……、いや、大阪に「竜玄屋」っつー掃除屋があってな。「調整人」は一応デカイ仕事する時は行動報告を掃除屋に「直接」持っていかなきゃいけねーんだ。」
「ふーん。……待て、俺は「調整人」じゃねーぞ。ただのギタイだ。確実に捕まるぞ!」
「おう。だから俺一人で行くから。お前はここら辺ブラブラしとけ。お前を俺の協力者ってことも説明しとくから。」
「た、頼んだぞ……。やべぇ、今になって事のヤバさを実感し始めた……。そうか、俺はそんな大事に首を突っ込んで……」
頭を抱えてブツブツ独り言を唱え始めた日田を見て、これに付き合っていては時間が無駄になると白金は悟り、スタスタと「竜玄屋」に向かったのだった。
彼女の鼻には、風に乗って、ありとあらゆる「匂い」が届けられる。
心地の良い者、鼻を背けたくなるもの、危険なもの……、さまざまな匂いを味わってきた彼女にとって、人々が形成する町の「匂い」というのは、もはや呼吸をするのと同じで意識せずとも行い、そして時に楽しむものとなっていた。
そんな中で、彼女にとって「大阪」の匂いは、人々の活気に溢れ、大量の食物の香りが鼻を通り抜ける、そんな物だった。
しかし、今日、仲間を殺し、大阪に入ったと言われる「調整人」をを殺すため足を踏み入れた大阪の匂いは、いつもの物と違った。
いや、ほとんど一緒だったのだが、ただ少し、その中に入り込んだ、「死の匂い」。
ベットリと体に張り付き、全身に恐怖を充満させる「匂い」。
そしてこの匂いに、彼女……、大門桜のボディーガードの1人、「霧雨時雨」には、覚えがあった。
あの日、家に充満していた匂い。
何事もない、いつもの日常に突如入り込み、時雨から全てを奪い取っていった匂いを、彼女は忘れるはずが無かった。
次の瞬間には、彼女の足は地面を蹴り、共に大阪に入った玄を置き去りにして、その「死の匂い」の出所に、走り出していたのだった。




