三つ巴・オーサカ-3
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「ひゃはははっ!!!」
白木原は痛みを忘れたかのように笑うと、地面を蹴る。
「ふっ!!」
すかさず玄は巨大な怪物へと姿を変えた自分の「右手」を操り、白木原を迎撃する。
広げていた指を再び握りしめ、巨大な岩石のように姿を変えた「右手」は、白木原めがけて一直線に降り注いだ。
「ははぁっ!!」
白木原は肘の辺りまである手錠で拘束された両腕を鞭の様に振るい、玄の「右手」にぶつけた。
巨大な力と力のぶつかり合いは、流石に玄の「右手」に分があったらしい。
白木原の両腕は空しく弾き飛ばされ、白木原の両腕からビシッ!と何かが壊れる音がした。
「はっはぁ……。これだぜ、これ。さすがに両腕が拘束されてちゃぁ戦いにきぃ……」
見れば、手錠の玄の右手とぶつかった部分に大きなヒビが入り、ボトッ、と地面に落ちた。
その手錠の厚さからか、白木原の両腕にダメージはない。
「これでやっと「五体満足」ってとこか……?感謝するぜ、ギタイィ」
ニタァ、と口角を吊り上げ、粘着質な笑みを浮かべる白木原は、数少ない夜の闇も相まってか非常に不気味で、玄は咄嗟に「右手」で追撃を仕掛けた。
「ははぁ……。デカブツがぁっ!!!」
白木原に向きって突撃していた右手に、白木原は野球の投球フォームの様な構えから繰り出した右ストレートで迎え打った。
ボギュアン!!と、骨がぶつかる音と筋肉がしなる音が同時に響き、白木原の雄叫びが町を揺らす。
「こいつっ……、嘘だろ!?」
白木原とぶつかった玄の「右手」は、止められていた。
白木原の10倍以上の大きさのある「右手」が、白木原の右手一本で止められていたのだ。
「ひひひっ!ははははぁっっつ!!どうしたどうしたどうしたぁ!?」
そして何と驚く事に白木原の右手が玄の「右手」を押し返し始めた。
「ちっ!!」
玄は即座に左手を素材とし、新しい怪物「左手」を作り出した。
同時に玄の左腕から力が抜け、扱え無くなるが、それすら玄にはどうでもいい事だった。
渾身の力を込め、玄は「左手」で、未だ「右手」と力比べを続ける白木原を横から薙ぎ払った。
ドパァン!と巨大な破裂音の様なものが響き、通りに風が吹き荒れる。
しかし、肝心の白木原は、その攻撃を受けてもまだ、その姿勢を崩してはいなかった。
「握り潰すっ!!」
「左手」が、獲物を飲み込む様に大きく手を開き、白木原を握り潰そうとする。
「左手」から逃れようと「右手」との力比べを止めれば「右手」の隕石の如く一撃を喰らう事になり、「右手」との力比べを続ければ「左手」に塵一つ残さず握り潰される。
白木原にとって、どちらをとっても地獄に直結する、答えの無い選択肢が提示された。