三つ巴・オーサカ-2
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玄の能力は、五体。頭、右手、左手、右足、左足の中から素材とする部位を選び、その部位を巨大化させたかの様な姿をした怪物を生み出すと言うものだった。
素材とした部位には鎖のような刻印が巻き付き、怪物が死ぬか自分で能力を解除するまで、一切動かす事は出来ない。つながっている感覚があるだけの、ただの肉の塊になってしまう。
(とりあえず……、右手っ!!)
そして玄は能力を発動。右手から感覚が抜けていき、だらんと垂れ下がる。
その時には、既に群衆の中から突撃して来ていた掃除人……白木原は、玄の目と鼻の先までやって来ていた。
「があっ!!」
白木原の口が大きく開かれ、もはや人間の物とは思えない、綺麗に生え揃った牙が、玄の顔面を引き千切ろうとした時、
白木原の体が、大きく横に吹き飛んだ。
バアンッ!!と、大量の風船が1度に割れたかの様な破裂音と共に、近くにあったビルのガラスが飛び散り、そこに白木原が横たわっていた。
「ぐっ……」
白木原は小さく呻き、ゆっくりと立ち上がる。常人なら確実にダウンしている所だが、白木原にはまだまだ余力があるようだった。
「ちっ……、化け物かよ……!」
玄はその様子を見て、苦い顔を浮かべた。
今まで玄はこの能力の攻撃をまともにくらい、立っていられた者をほとんど見たことが無かった。
そしてこの攻撃を受け、立ち上がった者……、それは玄の命を消し去る力を持っていた者で、「ガブ」の脅威となり得る者だった。
「だが……、俺は本物の化け物従えてんだ……。負けっかよ……」
そう言う玄の後ろで、巨大な何かがゆっくりと動いた。
うなだれていた竜が頭を上げた様な、威圧感。
しかし、玄の後ろにいるものが上げたのは、頭では無かった。
そして、「上げて」もいない。正確には「開いた」。
バキリ、バキリと、凝りをほぐす様に動く、5本の指。1本で横幅1メートル、縦3メートルあるそれらを支えるのは、電柱よりはるかに大きい太さを誇る手首と、真ん中に巨大な眼球が埋め込まれた手のひら。
玄の右手から作り出された怪物が、そこにはいた。
「あ……?んだそりゃ……。そいつもギタイか……?」
しかしその異形の姿を前にしても、白木原は一切怯んでいない様だった。それどころか、微笑んでいる。
「良いぜ……、良いぜ……。この人間のいない空間……。最高だ!ギタイと!意味の分からん怪物しかいねぇ!!」
体を震わせ、白木原の全身を喜びの感情が満たした。
「体調も万全だぜぇ!!ははははっっっ!!!」
その言葉がはったりでは無いことは、1番近くで白木原と相対している玄が理解していた。
(こいつ……。確かに力がドンドン上がってやがる……。何なんだ、本当に……)
玄はいつの間にか両手をきつく握りしめていた事に気付き、腰を沈め、再び突撃の姿勢をとった白木原をいかに対処するか。それだけを考えたのだった。