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ギタイ -全テヲ飲ミ込ム者-  作者: もちのすけ三郎
三つ巴・オーサカ
29/42

三つ巴・オーサカ-1

読んでいただきありがとうございます!

ボッ、ボッ、ボッ、と、苦しそうにガソリンの煙を吐き出しながら、日田達が乗っている小さな車は進む。

「お……、おい、出発してから何度も思ってるんだが……。この車、東京まで持つのか?所々ギシギシ言ってるしよぉ……」

「うん?おお、大丈夫大丈夫。こいつは家が先祖代々使ってる車だからな、ちょっとやそっとで壊れやしねーや」

「うーん……。先祖代々って言われると100年とかそんくらいたってる(もの)だと思うんだけど……。お……、おい、黒鱗は何とも思わないのか?」

日田は白金の返事に若干の不安を覚え、黒鱗に声をかけた。

「さぁ……?別に良いんじゃねーの?「今」壊れなけりゃよう……。ったく、そんなに心配なら……」

黒鱗は適当に返事をしようとしたが、日田の目を見て少し真面目に考え、自らの能力を行使した。

黒鱗の指先から黒い血のように溢れ出した黒鱗の1部は、車の接合部や扉の隙間、隅々までに潜り込み、車を補強した。

すると、今まで走るたびに嫌な音を立てていた車は、新車同然の滑らかな走りをするようになった。

「お……、おお!ありがとな黒鱗!いやー、これで安心して旅が出来る!!」

目を輝かせて喜ぶ日田を見て、黒鱗は小さく呆れた様にため息をついた。

「ったく……、お前はよぅ。こんな車が壊れるか壊れないか位でいちいちドキドキしてたら戦闘で体が持たんぞ……。特に次に来る奴が「時雨」か「玄」が来たら大変だぞ。この二人はボディーガードの中でも好戦的だ。いつ襲ってくるかわからん。才賀と違って一般人がいてもお構い無しだぞ」

小さな少年の口から戦闘だのなんだの物騒な話題が飛び出す事に未だに慣れない日田だったが、何だかんだで黒鱗は日田を心配しているのだった。

「……んじゃよ、その「時雨」と「玄」の能力について教えてくれよ。黒鱗」

ハンドルを握っていた白金も、車の動きが滑らかになった事に気分が良くなったのか、すこし声を高くして、白金が尋ねる。

「ああ、わかった。だがな……、「時雨」の能力は今一わからねぇんだよな……。だがまぁ、「玄」の能力は知ってるから、教えてやるぜ。あいつの能力は……」



昼と見間違うほどに明るい町並みを作るのは、進化した光の技術。

よりエネルギーの消費の少ない電灯が作られ、大量に町に配備されていく。

そんな何時でも光に照らされた町に蠢くのは、大量の人間と、それと違った何か。

ここは食の都、大阪。

人が作る喧騒のなかに紛れ、今日の食料を求めさ迷い歩く一人のギタイがいた。

そのギタイの名は、「玄理(げん・り)」。

大門桜のボディーガードにして、その中でも好戦的な一人。

しかし、その好戦的、という性格も、決して暴れるのが好きという訳ではない。

大門桜を守るための手段として、「殺し」を優先的に選んで来てしまった結果、後からそんなイメージがついてきてしまった。

(本来俺はあまり動きたくない人種だからな……。)

彼は未だに愛用している高校時代のジャージのズボンに両手を突っ込み、かぶっているニット帽のしわを直した。

(しっかし……、「時雨」とも離れちまったし……、どうするか……)

共に電車で大阪に入った「時雨」は、大阪駅から出たとたん、「匂いがする」と、顔色を変えどこかに走っていってしまった。

(まぁ、時雨(あいつ)の能力に巻き込まれるのも嫌だしな……。俺の能力も下手すれば時雨(あいつ)を巻き込む……。離れていて吉かもしれんなぁ……)

しかし、玄は手持ちぶさただった。

速水に続き、才賀も倒されたとあって、焦りと怒りに支配された頭で飛び出してしまったから、速く着きすぎたのかも知れない。

(ギタイは人間を食う……ってもなぁ。そういう事も出来ますよってだけで、飯は普通の物のほうが上手いし……)

そう思いながら、辺りを見回していると、玄はいつの間にか、自分の周りの人混みが無くなっている事に気付いた。

人で溢れる大阪の様な都会では、明らかに不自然な「穴」。

それに気付いた瞬間、玄は即座に自分の中にあるスイッチを押し、頭を切り替えた。

「戦闘開始」のスイッチを。

「……良いね、ちょうど退屈してた所だ……。楽しませてくれよ……」

自分の後ろからもの凄い勢いで突進してくる、自分に向けられた殺気を感じ、玄は獰猛に微笑んだ。

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