三つ巴・オーサカ-序
読んでいただきありがとうございます!
ギタイの存在が公式に認められ、日本の人々に認知されたのと同時に、とある職業が新しく国から各都道府県に設置された。
その名は、「掃除店」。
危険なギタイを捕獲、処分する事を主な仕事としており、時には政治家などのVIPの護衛等も請け負う、かなり危険な職業。
年間での殉職者率も高いが、その分給料も多いので、それなりな人気職業でもあった。
そんな掃除店の中でも、腕利きの1つとして数えられるのが、大阪市に拠点を構える「竜玄屋」だった。
そしてその竜玄屋の店長、「竜森鋼」は、威厳のある顔をしかめ、一つの書類をにらんでいた。
はち切れんばかりの筋肉を必死に押さえつけている様に見える、その巨大な体躯に似合わない小さく真っ赤な掃除人の制服を着込み、竜玄は三人の男を待っていた。
しばらくすると、店長室の巨大なドアが開き、目的の男達がそこに立っていた。
一人はうっすら笑みを浮かべた、黒髪長髪の男。中性的な整った顔立ちをしており、明るい印象を受けるが、その下には、とんでもない悪魔が眠っている事を竜玄は知っていた。
もう一人は背の低い、弱々しそうな男性。くるくると自由に羽上がる茶髪を必死に整えながら、ペコペコと竜玄に頭を下げていた。
そして、もう一人。
全身を包帯で巻かれ、両腕には金属製の拘束具がはめられている。両足にも小さいものの、大量の「重石」がズボンの下に付けられており、移動もままならない様だった。
しかし、他の二人と同じ、掃除人の制服を着ている事から、何とか彼も掃除人なのだとわかる。
「………お前達を呼んだのは他でも無い。……近々、この大阪に「ガブ」大門桜のボディーガード二人がやって来ると言う情報が入った。……写真と能力の情報を渡すから、お前達で処分しろ」
そう言うと、竜玄は持っていた書類を机の上にドサッ、と置いた。
「へぇ……、大門桜のボディーガード……。面白そうですね」
「いっ……いやいや、全然面白く無いですよ、黒瀬さん」
「そうかい有澤、面白いと思うけどなぁ……。君はどう思う?白木原」
「……俺はギタイに会えればそれでいい………」
中性的な顔立ちの黒瀬、背の低い有澤、拘束された白木原と、個性も何もバラバラな3人だったが、この3人がこの「竜玄屋」の中でもトップの実力者だった。
「後、この件には「調整人」も1枚噛んでいる様だ。間違えて殺すなよ」
「「了解です」」
「………そいつもギタイか……?」
竜森は白木原に話が伝わったのか若干の不安が残ったが、どうやら有澤が何とか伝えてくれているようなので、3人を解散させた。
「ふぅ……」
ハンモックに揺られながら、「ガブ」のボディーガードのリーダー、大門千はため息を付いた。
どうやら、才賀は倒されてしまったらしい。
それに伴い、今まで我慢していたボディーガードの中でも武道派の二人、「玄」と「時雨」が飛び出してしまった。
おそらく、調整人が次に行くのは「大阪」だろう。そこで一度止まる。大門には、それが分かっていた。
「まぁ、せいぜい期待するとしよう……。掃除人と共に倒れてくれる事をな……」
そう言うと大門は目を瞑り、微睡みの中に沈んで行った。