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ギタイ -全テヲ飲ミ込ム者-  作者: もちのすけ三郎
ブラック・サービス
26/42

黒い正義と流動する者その13

読んでいただきありがとうございます。

才賀の体は、一瞬で燃え尽きた。

先程まで彼のいた場所には、黒いすすの様な影だけが残り、それだけが彼がここに居たことを証明していた。

そこから先の事を、黒鱗はだんだんと普段の調子に戻って来た脳ミソで確認していた。

まず、床に落ちていた小さな手が、ぐにゃぐにゃとこね繰り回されるスライムの様に動き、個室の中に戻っていった。

そしてしばらくすると、バン!と、こちらも猛烈な勢いでドアが開き、そこから高校生くらいの地味な青年が現れた。

「っ……あっ!あーあ、やっぱりきたねぇな、トイレの管の中は……。あー、もう、臭ぇよ服……。着替え多めに持ってきといて良かった……」

よく見れば、青年は体からポタポタと水を滴らせ、髪はペットリと濡れていた。

「ってっ!?おおおっ!?!?おい!おい白金!!大丈夫か!?」

そして青年は、床に倒れた白金を見つけると、慌てて彼を助け起こした。

「って……、まぁ、まぁ落ち着け……。主な出血場所は……、この脇腹の穴か」

少し慌てていた青年だったが、直ぐに冷静さを取り戻すと、白金の傷痕を発見し、そこに右手を重ねた。

「俺の能力が本格的な治療に使えるとは思わんが……、まぁ、応急措置程度にはなるだろ……」

そう言うと、青年は少し白金の傷痕に重ねてた右手に力を入れた様に見えた。

(何かが……始まる……)

黒鱗は直感でそう悟った。

すると、青年の右腕が、はたから見ていても分かる程「流動」した。

肌の材質が、まず変わった様に思えた。

固まっていた氷が溶かされ水になったような……。とにかく、青年の右腕は、スライムの様にヌルンと、白金の傷口の中に入って行った。

「うっし、これで一応止血出来たか……?何分始めてだからわからんぞ……?」

どうやら、今の治療の様に見えた行為は、青年も慣れていない様だった。

(……さて、どうするか……)

そこまで見た黒鱗は、ここからの自分の振る舞いについて考え始めた。

まず、黒鱗の姿は、才賀に使われない限り、常人には見えない。もちろんギタイにも。

才賀日向の能力は、「黒鱗を視認し、使役することが出来る」と言うものだった。

(俺はどちらかと言えば「精霊」の様な存在……。誰かの力を借りなければ白金(あいつ)と接触する事は出来ない……)

不思議な事に、今の黒鱗の頭の中に、「この場からいち早く撤収する」と言う選択肢は無かった。

と言うのも、黒鱗は白金に興味を持ち始めていたのだ。

(日向の「正義」の意思は……、とても俺に理解出来る物じゃ無かったが……。日向自身はそれを信じて疑っていなかったし、実際強かった……。)

それを倒した白金(こいつ)の行く末を見てみたいと、そう思っていた。本当に、彼らなら「ガブ」を潰してしまうかも知れない。

その時だった。

黒鱗に幸運か、不運か。

トイレの入り口のドアが、キィィと開いたのだ。

(そうか……、俺の能力が切れたから……)

「えっ!?ちょまずっ!!このタイミングは……!」

白金を見ていた青年は、慌てて白金を隠すようにその上に覆い被さった。

そして開いたドアの隙間から顔を見せたのは、10歳くらいの少年だった。

(……、少年!すまんがその体、貸してもらうぞ!!)

黒鱗は少年のまだあどけなさの残るその顔に少し躊躇したものの、その体を乗っとるべく、少年の耳の中に飛び込んだ……。

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