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ギタイ -全テヲ飲ミ込ム者-  作者: もちのすけ三郎
ブラック・サービス
25/42

黒い正義と流動する者その12

読んでいただきありがとうございます!

また、ゆっくりと自動的にしまった個室のドアの下には、確かに小さな、小さな、人間の右手が、手首から切り落とされる様な形で、ポツリと落ちていた。

「かっ……、こっ……、そんな……そんなそんなそんなっっ!!嘘だろう!?!?」

才賀が髪を掻き乱しながら絶叫する。

そこには先程までの冷静さは後片も無い。戦闘慣れしていない素人以下の人間でも、ここまで動揺するか。それほどの物だった。

「おっ、落ち着け日向!このトイレの出入口は今も俺が防いでいるし、最初入った時にも誰もいなかった事を確認しただろう!?。」

黒鱗は才賀を落ち着けるため必死に声をかけたが、才賀にその言葉は届いているのか。ブツブツと小さく何かを呟きながら、じっと床に落ちた右手を見ている。

(くそっ……!駄目だ。多分あそこに落ちている「手」は、普通の物じゃない……。「何か」がある……。だが、日向にとってはこれでも絶大な効果……)

昔、才賀は1度だけ、戦闘中近くにいた一般人を傷付けてしまった事があった。

その時もかなり動揺、発狂し、仲間の一人の能力で「記憶を改竄」する事で何とか事なきを得た。

つまり、そう言う事なのだ。

才賀にとって、関係の無い者を傷付けてしまうことは、記憶を変えなければいけない程、深刻なダメージ。

「いっ……いいっ……。ぎぃ……」

さらに、才賀の精神が異常な程動揺してしまった性で、能力が上手く使えず、黒鱗の姿は大剣から元の球体の様な姿に戻ってしまった。

そして、「不運」と言うのは、都合の悪い時ほど「連鎖」する物で。

「ごっ……かぁぁっ………!」

爆発的な殺気が、黒鱗の肌を撫でた。

見れば、血の海の真ん中で、倒れていた白金が、片足を立て、姿勢を無理矢理建て直しつつあった。

「何かわかんねーが……、ごっ……、チャンスみてーだな……」

全身から血を流し、何とか炎をまといながら立ち上がるその姿は、地獄の炎を得て舞い戻った鬼神。

その姿は、黒鱗に「死」と言う絶望的な未来を予感させてしまう程の圧力をもっていた。

そしてその未来は、そう遠いものでもない。

バシャ!と血で濡れた床を勢い良く蹴る音が、黒鱗の耳の奥まで響いた。

「日向っ!!不味いぞっっ!!」

そう叫び体の形状を変化させ、体を動かそうとした黒鱗だったが、自分の体が上手く動かない事に気付いた。

(これは………、日向っ!!)

黒鱗は驚愕に目を見開き、才賀の顔を見た。

そこには、無気力な目があった。

小さく動く唇。白金の爆炎で乾燥した室内のせいか、少しひび割れた唇には、生気と言う物が感じられなかった。

そしてその顔は、こう言っていた。

「死なせてくれ」

「………っ!!」

その言葉が伝わった瞬間、黒鱗は喉に何かがつまった様に息が苦しくなり、上手く言葉を発っせなくなってしまった。

(ふざけんな……!ふざけんなよっ!日向っ!!おまっ、お前の正義は……、こんな簡単に折れ……、いや、それよりも……)

大門桜を守ると言う、お前があれほどまで目を輝かせて俺に語った事を、諦めるのかよ……。

「ひなっ……、たっ……」

その声が才賀に届く前に、才賀の体が白金の炎に飲み込まれた。

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