黒い正義と流動する者その9
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「な……何だぁ!?」
黒鱗を追跡し、サービスエリアを進んでいた日田の前に現れたのは、数十人の男女が作り上げた人混みだった。
そしてその人混みの後ろには、トイレへのドアがある。
(困った……。俺の体の1部の反応はトイレの中にあるのに……。これじゃ入れんぞ……)
そう思った日田は、人混みの後ろにいた男性に声をかけた。
「すいません……。この人達は、何でこんな所に?」
「あっ、ああ。何かトイレに入るドアが開かねぇみてぇでよ。ここのトイレ、男女共このドア通らねぇとトイレに行けねぇんだわ。……それでこんな人が集まっちまってるんだよ……」
男性は困った様にポリポリと頭をかくと、ここにいてもどうしようもないと思ったのか、どこかに行ってしまった。
(俺の力なら……開けられるかもな)
ギタイの身体能力は、全体的に人間よりも高い。
「す、すいません。ちょっと……」
日田は人混みをかき分け、何とかドアの前にたどり着く。
「これか……」
目の前には、普通の銀色に光るドアノブがある。
簡単に動かないのだろうと思うと、何故だが異様な圧力を放っているようにも思える。
「ふん……っ!」
日田は両手でドアノブを握り、力一杯回し、引いてみた。
ギギッ、ギギギッ!と鈍い音を立て、ドアノブが軋む。
「っつ……!マジかよ……!」
しかし、ドアは開かない。これ以上引っ張り続けると、ドアノブだけ外れて、壊れてしまいそうになる。
「!?」
その瞬間、日田の目に写った物があった。
それは、ドアノブの隙間からニュルリと覗いた黒い液体の様な物。恐らく「黒鱗」だ。
「なっ何だぁ!?」
そして覗き出た黒鱗に気を取られた瞬間、さらに信じられない事が起こった。
ドアノブが、何時間も熱されたフライパンの様に、熱くなったのだ。
「づっあっ、熱っ!!」
そしてそのあまりの熱に、日田は思わずドアノブから手を離してしまった。
(黒鱗とこの異常な「熱」……。まさかこのトイレの中では……)
日田は一瞬ドアの前で立ち止まり、どこかに走り出した。