プロローグ・出会い・その2
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「さて……ここでいいかな」
白金は屋上の手すりに体を預け、日田の方を見る。
夕焼けで赤く染まった屋上の景色は幻想的だが、それを塗り潰してしまうほどの緊張が、日田の中に合った。
日田は白金の目を見る。
口調は柔らかいが、その目は笑っていない。
真実を見逃さないために研ぎ澄まされた、鷹のようやく目だ。
「……まぁ、単刀直入に言うぜ、日田。お前、ギタイだろ」
「!」
見抜かれた。
日田の体の中で、心臓の音が大きくなる。
白金の言うとおり、日田はギタイであった。
人を食べ、殺す。人類にとって害虫のような生物。
「………何を言っている……。そんなわけが無いだろう」
日田は何とか言葉を吐き出した。喉がきつく絞められているかのように、一言一言が中々出ない。
「いや……お前はギタイだ。分かるんだよ、俺には」
「はっ……はぁ?」
白金は日田の言葉を受けても、自分の意見を全く崩さなかった。何故か自信に満ち溢れている語気で言う。
「俺は……鼻がきくんだよ。ギタイの匂いが分かるんだ」
白金はトントン、と自分の鼻をつつきながらそう言った。
(………つまり……)
「君は、何の証拠もなく、そんな事を俺に言っているのか?」
「証拠?証拠ならあるぞ。俺のこの「鼻」だ」
「いや……だから……」
日田は言葉が、先程とは違う意味で言葉が出なかった。
「………いや、じゃあ、俺帰るぞ。ったく、妄想を押し付けるのは止めてくれよ」
「いや……妄想でも何でも無いんだが……、しょうがねぇ……」
白金は後ろを向いて屋上から出ようとする日田の姿を見ながら、嫌そうに頭をかいた。
「……!!」
日田は背中に感じていた屋上の空気の温度が、一気に上がった気がした。
屋上の異様な空気に、日田は思わず後ろを振り替える。
そこには、体の右半分に赤黒い炎を纏った白金の姿。
「はっ……はぁ!?」
「めんどくせぇから……これで正体現せやい!!」
白金が右手を前に突き出す。するとそこに炎が集中して集まり、直径1メートルほどの炎球を作り出す。
「おっらぁぁ!!」
白金はそれを野球のボールを投げるようなフォームで日田に向かって投げつけた。
「はっ!?」
あまりの出来事に、日田の思考は一瞬止まり、そのせいで足も動かなくなってしまっていた。
(まずっ!!かわせなっ)
「ちくしょおお!!」
日田の下半身、足から腰までが液状に変わる。
スライムより柔らかく、水より粘性のある物質。
下半身が液状になったことにより、上半身の位置が一気にさがる。
次の瞬間、先程まで上半身があった場所を炎球が通過し、壁に当たって熱気を撒き散らしながら消滅した。
(………)
日田は何とも言えない顔で、白金を見た。
「よぉー……。正体表したな。日田」
そこにあったのは、白金の笑顔。
テストで自分の答えが予想通り合っていた小学生の様な笑みで日田の姿を見下ろしていた。