黒い正義と流動する者その6
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おかっぱの男……、もとい、才賀は白金の予想通り、サービスエリア内の個室トイレの一室。洋式トイレに腰を下ろしていた。
「おいおい日向ぁ、良かったのか?あんなわざわざ接近してよぉ……。別に俺の1部を寄生させるだけなら、遠くからでも出来たんだぜ?」
黒鱗の言葉は、才賀への純粋な疑問から来ていた。
黒鱗の能力は、確かに接近戦でも十分戦える力を持っているが、遠くから一方的に敵を倒す事も、時間がかかるが出来る。
そして遠くから姿を隠して攻撃した方が、接近戦よりはるかに安全だ。今回の様に特に急がない任務の場合、遠距離からじっくり殺す方が、リスクは低いだろう。
「確かに、姿を隠して殺す事は出来る……。しかし、それは果たして「正義」なのだろうか?」
「?」
「遠くから姿も見せず、じわじわといたぶり、苦しむ様子を観察する……。それは「正義」が行う行為なのだろうか……?」
「………日向、すまんがもう少し簡単に言ってくれ」
「……つまりは、相手の正面から、相手の攻撃を全て受け止め、そして勝利する……。それこそ「正義」なのではないか」
「………日向、1つ言っとくぜ。戦闘はスポーツじゃねぇ。生きるか死ぬかだ」
「勝利した時、胸を張れなければ、その勝利はまがい物だ。そしていずれ、そのまがい物の勝利に押し潰されて、そいつはいつか破滅するよ。」
「………」
黒鱗は、才賀と長年付き合って来たが、彼とは絶対に、一番大切な所では通じ合えないのだろうと、確信していた。
つまり、どこまでいっても彼らは仕事上の関係から進展することは無いのだった。
「……まぁ、お前がそれで良いならそれで良いぜ。……どうせ、お前はその決断を後悔する事は無いんだからな……」
勝っても、負けても。