黒い正義と流動する者その5
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「ふぃ~~」
才賀が行動を始め、食堂で日田が肉うどんをむさぼり食っていた時、白金はサービスエリアの隅にあるトイレから用を済まし出てきた所だった。
「さーてと、日田と合流して「死線」のレッスンと行こうかな」
トイレから日田のいる食堂までは、100m程ある。食堂とトイレはサービスエリア内でちょうど反対方向にあるため、少し遠いのだ。
その間には、地域の特産品や野菜が置かれた商店から、観光案内所、何故あるかわからない服屋などがあった。
「俺もちょっと飯食って~~、すぐ出発かな」
今後の予定を考えながら、白金は食堂に向かって商店を抜ける。
「野菜……野菜ねぇ、「地産地消」ってやつか、生産者の顔写真が貼ってあるぜ」
白金が少し足を止め、3本入りで袋詰めされたキュウリを見た。
中々な人気の様で、おそらく同じ物が大量に入れられていただろうかごの中には、もう1つしかなかった。
「キュウリ……、お好き何ですか?」
「は?……い、いえ、別に。少し見ただけですけど……」
白金は唐突に横から聞こえた声にすこしビクッと肩を震わせ、声の主を見る。
そこに立っていたのは長身の男。特徴的だったのはその髪型。男性にはおそらく少ないであろう綺麗な「おかっぱ」だった。
男性の外国人の様な堀の深い顔と、独特の雰囲気で何とか「ファッション」の枠に収まっているが、常人が同じ事をすれば「ギャグ」になってしまうだろう。
「そうですか……。いえ、いきなりこんな事を聞いてすいません。……では」
そう言うとおかっぱの男性は白金が歩いて来た方向、トイレの方に歩いて行った。
「………っと、いけねぇ。日田の所に行かなければ……」
白金は食堂の方に体を向け、右足を踏み出す。
その瞬間、白金の右足、土踏まずの辺りに激痛が走った。
「っづぁ……!何だ!?」
白金は右足を見ると、そこには白金の靴にベッタリと、何か黒い物がこびりついていた。
「うじゅるるる!!!」
その「黒い何か」は、ウジウジと粘性の体を動かしながら、白金の右足を溶かすようにして傷付けていく。
「くそっ!おらぁっっ!!!」
白金は近くにあったワゴンに右足を叩き付け、「黒い何か」を追い払おうとする。
しかし、そこで「黒い何か」は白金の予想外の動きをした。
「うじゅるるる!!」
なんと「黒い何か」は、自分で作った白金の傷口から、白金の体内に潜り込んで来たのだ。
「うおっ!!何だとっっ!!」
普通の生物ならば、驚いて確実に引くところを、この「黒い何か」はさらに前進することで、白金に致命的なダメージを与えようとしている。
(こいつっ……!ただの「生物」じゃねぇ。おそらくギタイの能力か何か!!)
白金はこの「黒い何か」に自分を襲わせたギタイが誰か、思考を巡らす。
(おそらく……さっきのおかっぱの男!!あいつがこのサービスエリア内で1番接近して接触した人物!!)
白金は後ろを振り返り、おかっぱの男性の姿があるか確認した。
しかし、やはりと言った所か。この商店エリアにはもういないようだった。
「くっ……!しょうがねぇ、取り敢えずこの方向にあるのはトイレだけだ。そこを調査する……」
幸いと言った所か、体内に潜んだ「黒い何か」の進行スピードは、思ったよりも遅い。
(目安としては膝まで……。そこまではおかっぱの男の捜索を優先する……。「黒い何か」が膝まで来た場合は、優先して「焼き殺す」……!それだけだ)
そう白金は決断すると、右足を襲う痛みに耐えながら、おかっぱの男の追跡を始めた。