黒い正義と流動する者
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白金の車は、白金の高い運転技術も相まってか、信じられない程のスピードで鳥取から兵庫に入り、既に兵庫の半分を通り過ぎ、大阪に入ろうとしていた。
しかし、既に出発してから半日はたち、日田達の空腹は、限界に達していた。
白金は、通り過ぎようとしていたパーキングエリアに車を滑り込ませ、そこで昼食を取ることになった。
「………」
日田はパーキングエリア内の食堂に入り、食券を買おうと、年季の入った券売機の前に立つ。
適当に目についた「肉うどん・大盛」を注文すると、券売機の前から立ち去るため、少し後ろに下がった。
すると、どうやら後ろに人が並んでいたらしい。
ドンッ、と軽く後ろに立っていた男性と肩がぶつかってしまった。
「ああ、すいません!」
日田は反射的に男性に謝った。
「いえ……、大丈夫ですよ。それより、これ」
男性は床に落ちてしまっていたらしい日田の「肉うどん・大盛」の食券を拾い上げ、日田に差し出した。
「ありがとうございます」
日田は頭を下げ食券を受け取ると、顔を上げ、男性の顔を見る。
彫りが深く、どこか日本人離れした顔付きで、特徴的だったのは髪型だ。
眉の上でパッツンと切り揃えられた髪の毛。耳にかかる程度まで伸ばされたそれは、いわゆるおかっぱと言うやつだった。
日田はもう一度小さくお辞儀をし、あまり数の多くない空いている席を探し始めた。
「………中々ハキハキした少年だったな。日向」
「人の多い所で出てくるな、黒鱗。……このパーキングエリアに、「白金」がやって来ていると言う情報があった。……顔は既に割れている。接触しだい、殺す」
「りょーかい、わかったよ」
そう言うと、黒鱗は整えられた才賀の髪の毛を少し揺らし、影の中に戻っていった。
「さて、戦闘開始だ」
才賀は冷たくそう言うと、食券を千切る様にして取り、パーキングエリア内の捜索に向かった。