5: もふもふバーサーカー増幅中
少し修正しました。
「んな所で駄弁ってないで、中に入んな。他の客に邪魔だよ。」
「悪い、…ヌル行くぞ。」
ーシュバッ
「ゴメゴメ、アンナ~! なッ、エルス元気? 毎日毛皮手入れしてる? 揉みくちゃにされてない?」
ヌルボットが謝りながら、アンナに飛び付いて行く。
「なんだ藪から棒に、孤高なあの娘が他人に触らせたり…、手入れを怠ったりしないよ。安心をし。」
店の玄関前でアンナに撫でられ、甘えてすり寄るヌルボットに半目になりながら店に入る。
ーシャララーン
「いらっしゃいませ。」
「「いらっしゃいませー。」」
中に入るとまず見えるのが、2階まで吹き抜けの中央にある洒落た服装を着ている迷いウサギのオブジェだ。
毎月初めに模様替えをするオシャレさんなマネキンである。
ーー 今月は、裾を黄色とピンクの花柄があしらったオフホワイトのワンピースに、翡翠色のポンチョで赤色のリボンがアクセントの春コーデ ーー
その度に写真を撮りに来店する客もいるが、本命は…、この店の看板娘を愛でる人が圧倒的に多い。
オブジェを真ん中に円形で商品が飾られ、所々に影絵のウサギが隠れて描かれている。
店内にある商品は可愛い物から大人で落ち着いた種類の衣類を中心に、男性用まである。
1階は服や靴が置いていて、2階は下着類、鞄やアクセサリーなどの小物がおいてあり、この店だけでトータルコーデ揃えられるのだ。
お客様の好みの物がなくても、オーダーメイドも受付ているため、お客の年齢層と男女の幅は広い。
職人の人達も頼みに来るぼどだ。
ちなみに俺の服装もこの店のオーダー品だったりする。
ー♪~
「相変わらず人気だな。」
「まぁね、御贔屓にしてもらってるよ。」
ーツンツン
「なんだい、坊や。」
「アンナ! エルスはッ、いないのか?」
俺とアンナが歩きながら話していると、アンナの腕にしがみつきながら飛んでいるヌルボットが、服を引っ張りエルスの所在を聞く。
毛玉の同士で助っ人だからかヌルボットも必死だ。
「あぁ、あの娘は今昼の休憩でご飯食べてるね。」
「そんな!?」
「終わったらその内店に出てくるさ。気ままに待ちな。」
「ピー。わかったゾッ、女の支度は時間がかかるもんだしな♪ しょうがないなー。」
「分かってるじゃないか、坊や…、男あげたね。」
いや、それもどうせアイツが教えたんだろ、ヌルボットのヤツ調子いいなー。
俺は呆れた表情をヌルボットに向け、アンナの後ろを着いていく。
俺達は店内の奥にある応接室に案内してもらい、椅子に座って一息ついた。
ヌルボットはアンナの腕にしがみついたままだ…。
まぁ、エルスがいないから、そこが一番安全だからな。
ーチリリン
アンナが机に置いてあった小さいベルを鳴らす。
ーガチャ
ドアが開くと、スーツを着た爽やかそうな男性"ルル"が入ってきた。
「失礼します、御呼びでしょうか店長。」
「あぁ、忙しい所すまないが、御茶を用意してくれるかい。リシャと坊が来たんだ。」
「どーもお邪魔してます。」
「邪魔してるゾ!」
二人揃って片手を上げて挨拶すると、支配人のルルは にっこり笑い目礼してくれた。
「畏まりました。少々お待ち下さい。」
ーガッチャン
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
アンナと三人で最近どうだとか、今日はどうしたとかを話していると、ルルが戻ってきて紅茶とお菓子のクッキーを置いて、ごゆっくりっと言って仕事に戻っていった。
できる支配人である、このツートップが居なけりゃここの従業員達をまとめられないだろう…、そう信じたい…
ーコソコソ
ー・・キャア♪ ヌルボットちゃんよッ、さっき店内に居たわッ!
・・うそ! ヌルちゃん来てるの?! ・・
ー・・我らの二代目もふ様が降臨なされたぞッ!!
・・な…なにィ~!! もふ様だとッ!
・・も、も"、も"ぉふ"ぅさ"ぁま"ぁーー!! 我に力をくだされぇーー!!
ー・・我らのもふ欲満たしてたもれぇいッ!・・
ー・・それ! 歓迎の歌をォーー!! さんはい♪ ・・
~♪
幸せなら毛をもふろうッ!
(もふ、もふ♪)
天国に手を伸ばそうッ!
(もふ、もふ♪)
目の前にはもふ様飛び込もう!
さあみんなで毛をもふろうッ!
(もふ、もふゥ~♪)
……。
ヤバい…バックヤードがカオスってるッ!!
ーブルッ カタカタカタ……
「……おい、アンナ。従業員ちゃんと休んでるか? 病んでるぞ。物凄く危ない宗教に入信してんぞ!」
「ちゃんと休ませてるよ、普通よりね。……あれはもう手遅れさね。」
アンナが諦めてるだと…、重症だな!?
「まぢか…。アイツ等合唱してんぞ、仕事しろよ。……ヌルさん、カタカタ震えてるけど大丈夫デスカー。」
アンナと俺が話している間ずっとアンナの腕に引っ付きバイブのようにブルブル震えているヌルボット。
可哀想に……、あんな狂信者どもに今からつけ狙われ、毛皮を触らせろと囁かれるんだな。
良かった、毛少なくて。
「べ、別に自分ブルッてないッス。ビビッてねーし、拐われル前に自分カラ逝った方がマダ……。いっちょ生け贄に行ってクルヨ。大丈夫サ、身を委ねなサイって言ってたし、大丈ブ……」
ーカシャンッ ウィーカシャンッ
「……。ロボじゃん。」
ダメだ、キャラ変わってるしあいつ恐怖の余り動きが劣化してるぞ。
ーーカクカク軋んで動くヌルボットは一匹バックヤードへと自ら進んでいった…
哀愁漂うその背は涙を誘う……かも…。
ーΣピギャーーーーー!!
ーギャーーー!!
ーアァーー!!
裏で儀式が始まり、ヌルボットの悲鳴が聞こえ合掌…
そうだ、今のうちに荷物をアンナに渡しておこうと荷物を机に出す。
ーコト
「はい、お届けものでーす。サイン下さい。」
「はいよ。坊やはいいのかい…、アタシが言うのも変だが、毛皮狂信者へと職業チェンジしてんだあの連中。あまりオイタしたら叱るけど…。」
「どうもー。ね、どうしようかね。…そんな職業あったっけ? 裁縫師じゃなかったのか…なんであそこまでイッちゃったんだ?」
ーベリッ! ガサガサ
アンナが説明しながら荷物の中身を確認する。
「ああ、うちに居るだろ…、最高級の素材が。あの娘が目の前に居るのに、見ているだけ。焦らしては触らせてくれずフラストレーションが貯まって、暴発。狂信者の出来上がりさ。」
「そして、信者がどんどん増加していくと…。みんなそんなもふもふに餓えてるのか? ぬいぐるみでも作ったらいいのに。」
その内教会建てそうだな。
モフ教会とか…笑えねぇ…
「歳をとると癒しが欲しくなってくるもんさ。それと、ぬいぐるみの話もでた事はあったが、毛質に拘るならやはり本物からと話がでた瞬間計画は即おじゃんになったよ。」
ああ、一応何とかしようとしたのね、何か情況が手を取る様に分かるわ。
「…ああ、職人気質だから拘りたい、でも殺せない、癒しが欲しい…、毛皮が欲しい、クッ無理だッ、殺せない…。みたいな無限ループがあって決まらずおじゃん…みたいな心境か。」
アンナが目を瞬き微妙な表情で俺を見てくる。
それくらい予想できるぞ。
「見て聴いてたように答えるね…、正解さ。…それより、まだ昼御飯食べてないんだろ? ここで食べてきな。後で渡したい物があるんだ。」
「えッいいの? 尋常じゃない位アイツ食うよ、それに渡したい物って?」
まぢかーやった♪ 昼飯代がういたぜ! それに、渡したい物ってなんだろ?
アンナが立ち上がり料理の準備の為か、部屋の出口へ歩いていく。
「任しときな。それは二人揃った時にね、裏が落ち着いたら坊やを回収しに行ってきなよ。」
「了解~」
ースタスタ ガチャン
渡したい物は後で、ヌルボット救質しろと言い、アンナは出ていった。
ーフウーー! モッフモフゥ~♪
信者たちの奇声がこだまする……いつ、解放されるのやら。
ちーーん
ーー◇◆《2時間後》◇◆ーー
すっかり御茶と菓子はなくなり、いい加減腹が減ったと貧乏揺すりをして待つこと2時間、ようやく、裏が静かになった。
長かった…もう14時過ぎてんだけど、えらい時間がかかったなと思い、俺は立ち上がった。
いざッ、バックヤードの様子を覗きに行ってみたらそこには…
妙にお肌がツルツルした女性陣に、目が生き生きとして仕事をする男性陣。
…皆様お元気ソウデスネ…、うちの子どこ連れていった…。
俺が作業場の入り口付近でじとーと見てたら、従業員達が俺に顔を向けて拳を胸元に持っていき、親指を立てた。
ーグッ!
「ヌルちゃんをご馳走さま♪」
「あぁ~天にも昇る気持ちだった…」
「イッテる奴もいるよ! 最高でした。」
「もふ欲充電完了いたしました。どうもッ」
「~♪ ゴチでーすぅ♥」
「もふ様、あなは神かッ! そしてご主人も神ッ!!」
「グッショブッですぞ!?」
「でわ、私は両手でグッショブッ!!」
「もふパーラダーイス! ヒャッハーー!!」
「ちなみに、今度はいつ来ていただけるでござるか?」
「……グッ!!」
・
・
・
・
ーダンッ!!
「喧しいわッ、散れッ!!」
清々しい顔してサムズアップすなッ、こちとら2時間も待たされてんだよ! おいこら、腹減ってイライラしてんのになにが、ゴチです、グッ! だッ!!
さらにイライラ増えたんですけどー
それにヌルボットどこだ? 生きてんのか?
1時間位はまだ悲鳴聞こえてたが、後半は信者どものひたすらはしゃいだ声しかしなかった……、生きてんのか? (大事なので二度目)
作業場の端に寄り、歩いて進んで行く。
視線を動かしヌルボットを探すも見当たらない…なら、あそこかと目星をつけて奥にある従業員達の憩いのスペースへと足をむける。
ースタスタ
「…いた。」
休憩室のドアがなく吹き抜けになっている入り口をくぐり、部屋の中を見渡すと…なんとも微笑ましい…椅子? にいた。
パンダの等身大で、母パンダが子パンダを懐に入れて座っているように見える。
顔は死んでるが……
俺はヌルボットの所まで行き、肩をゆらす。
ーユサユサ
「ヌル…おい、戻ってこーい。アンナが飯作って待ってるぞー」
ーピクピク バッ!
「め、し…。ド、ドコアル、のッ」
「さすが…、お前の食の執念に脱帽だよ。」
これ、いつもの朝の風景な




