4: 人気者はツラいよ
少し修正しました。
ーピッ
【認証確認シマシタ。オ入リ下サイ。】
ーヴィンッ ガヤガヤ…
メカニカから一番近い町"スミス"は帝都の第二都市みたいなもんで、ここも機械がたくさん起用されている。
さっき入り口で住民証をかざして門番の役割をなしている機械も此所からの発祥だ。
そして、入り口を通るときに犯罪歴がないかスキャンされる。
なければそのまま通れるが、あれば直ぐ様魔方陣が光り治安機関の施設へと転移される。
いやはや機械様々だな。
だが、コスパが悪いせいか、なかなか地方へとは進展しないらしい…。
たしかに此所と帝都しか見たことないな。
他は門番がちゃんといるから、仕事取っちゃうしね。
ースタスタ ガヤガヤ
「今日は人が多いな…、ヌル肩に乗れ。踏まれるぞ。」
「うん、合体だな♪ よしきたッ」
ーパタパタッ ストンッ!
街に人で混雑していた為、ヌルボットを呼んで俺の肩にのせた。
いつもはこんなに人がいないのに…、何かあったっけ?
このままで情報得るかな、聞き耳たてて。
ヌルボットを肩車しながらキョロキョロして、人の行き交う様子を見て耳を澄まし、観察してみる。
ーガヤガヤ ・・ペロに持っていく準備出来たかい? ・・
ー・・久しぶりに朝まで酒が飲めるぜ~
ハメ外すなよォ・・
ー・・花見だッ! 楽しみだねー♪ ・・
ああ、そうゆうことか!
ーガヤガヤ
「なるほどね…、みんな考えることは同じだな。」
「ピィ? 何が同じ?」
首を傾げて聞いてくるヌルボットに、周りの様子で分かったことを教えてやった。
「ほら、ペロの花が満開だって言っただろ?」
「うん」
「みんなそこで花見がてら宴会しに行く準備を揃えてんだよ。地方からもだから人が多かったんだ。」
俺が説明すると、ヌルボットがなるほど! と掌に拳をポンッと当てて表現した。
「ピィピィ。花見るのに宴会するのか…、ピッ!とゆうことは、食べ物がたくさん食べれるのか?! ヤベッ、お腹すかせとかないと♪」
「だと思ったよ…。お前は花より団子だもんな。」
嬉しそうに俺の髪を両手で掴んで、足はバタバタと振るヌルボットに苦笑いをする。
こら、足を振るなッ、落ちても知らんぞ。
それに、ルンルンなのはいいけど、誰が花見ながら宴会するって言った?
ヌルボットが満足するぐらいの食料なんざ用意してないけど…
……、用意しなきゃダメかな。
今月金欠なんですが。
世知辛いッス…
◇◆◇◆
商店街をぬけて行くと前方に大きな迷いウサギの形をした時計台が見えてきた。
こいつは、純白の毛皮に赤い目で緑のチェック柄ポンチョを着た姿があまりにも可愛すぎて、特に女性に人気な幻獣だ。
あまりにも可愛すぎて、殺せない…、やら
魔物使いはごぞって勝負を挑むが、返り討ちにあう奴が多い。
見た目は可愛いが案外強者なのだ。
だから冒険者の中では"死神ウサギ"と呼んでいる人もいる。
そんで、なんでこの町の時計台は迷いウサギをモデルにしているかというと、単純に『飼えなければ、作ればいいんだ!』と言って職人を集め、試行錯誤して作り上げたらしい。
技術の無駄遣いである。
馴染みの店主いわく、
完成記念日に毎年仮装して祭を開いているんだってさ。
皆、癒しを求めてるんだ……
ーゴーン キュッ! ゴーン キュキュッ!
「今12時か、だいぶ時間がかかったな。」
時計台の人参の形した針が12時をさし、鐘の音に続く迷いウサギの鳴き声が辺りに響く。
「ヌル、先に荷物届けに行くぞ。悪いが飯は後な。」
「いいゾ! あの虫以外と腹持ちいいからまだ我慢できるッ!」
「…へぇーソレハヨカッタ。」
思い出したくない出来事に棒読みして返事する。
当分、ドット柄は視界にいれたくない。
ーテシッ! テシッ!
「ここから近いのか?」
「こら、頭を叩くな!」
「いやーいい位置に有るからつい。」
「ハアー、なんの偶然か、お前も知ってる場所が配達場所だよ。」
「ピィ! アンナかッ、じゃあエルスにも会えるな!!」
ヌルボットが弾んだ声をだして返事を返してくる。
そんなに会いたかったのか。
時計台を通りすぎ進んでいくと、視線の先にY字路があり電子案内板が見えてくる。
左の下り坂の方は研究所がある技術者エリア、右の坂道の方は職人達が個々に店を持つショッピング街となっている。
俺は肩にヌルボットを乗せながら右の坂道をズシズシ踏みしめて歩いていく。
もふもふはいいが、今は暑苦しい…
高台にたどり着くと景色が一辺、キラキラと高級感溢れる町並みに移り変わる。
服、靴、鞄やら、武器屋、防具屋、道具屋など、さまざまな専門の職人達が店を営んでいる。
色々系統の違うブティックがある中で、赤の屋根に壁が白黒でウサギの影絵が其処らじゅうに描かれた外装が馴染みの店"アンルス"だ。
ーザワザワ
「ふぅ…、着いた。ヌル、揉みくちゃにされたくなかったら自分で飛んで避けろよ。今のままだと確実に拐われるからな。」
ーブルッ
「ピ…ピィッ、尻尾だけは死守しなくちゃ! …ダメだったら助けてね。」
いつもの事だが無理だな、どんどん過激になっていくから奴等は…
「…期待はするなよ。あの人達には勝てん。目が血走って笑いながら追いかけてくるんだぞ。どこのホラーだよ。」
女は殴って対処できないから逃げまくるしかないし、男は殴って気絶すればいいのに…、倒れたと思ったら『い、癒しをくれ…』と手を伸ばしてガサガサとゴキブリの如く追いかけてくる。
ゾンビもびっくりだ。
中々へこたれてくれないもんだから、もう諦めている。
俺だけなら被害はないが、相棒が毛玉ときたら…、そりゃ狙われる。
「相棒はなんで毛が少ないんだッ、不公平だゾ! いいもんッ、またエルスに助けてもらうから! …尻尾さえ触らなければ、いい人達なのに…」
「…お前今、頭が砂漠化の方々を敵にまわしたぞ。」
片手を俺にズビシッと向けて訴えてくるヌルボット。
もっとオブラートに包んで優しく発言しろよなー、俺の教育の仕方に駄目だしくらうじゃんかー。
あ、でも、博士が原因って事にしとけばいいか。
ある程度本当だしと、店の前でギャーギャー騒いでいたら…
ーシャララーン
「うちの前で喧しいと思ったら、なんだい…、アンタかい。リシャ…」
「「あ、アンナ!?」」
目的の人物が現れた。