3: 珍道中
少し修正しました。
ーガヤガヤ ブロローー
門の一つ、西門にある飛行用滑走路で、俺は愛車を引きながら並んで順番を待つ間、隣の相棒を見る。
いつ見ても不思議なフォルムだ…、ペンギンは間違いないな、翼に尻尾、あいつ(博士)の趣味ッぽそう。
とりあえず、可愛い好きな物を詰め込んでみました♥ みたいな……、ありえそう、変態だし。
ーテチテチ ブンッブンッ♪
「相棒、今日はどこに行くんだ?」
てちてちと、小さい体を一生懸命動かし、尻尾はリズムよく振りながら俺に合わせて歩くヌルボットが聞いてくる。
こいつ律儀にも、俺が歩いている時はなるべく歩いて、飛ぶときは一緒に飛ぶんだと…
クソ可愛い。
本人は『たまには歩かないと、美容の天敵だからなッ! 勘違いしないでよッ!!』と言ってたが顔は照れて、隠せてなかった…
ツンデレ万歳!
「んー。今日は近隣の村と町を2件。ヌルが行った事あるスミスの町とない村、リンドルにな。」
「おおーもりだくさんだな!!」
「んで、村から近いから花の街"ペロ"に連れてってやるよ。今の時期は花が満開で綺麗なんだ。見てみたくないか?」
「見たいゾ! 花も食べたいし!」
「いや、食べちゃ駄目。」
何でも食べたがるヤツだな。
「食べたら駄目なのか!?」
「そうだ、我慢しろよ!」
「が、我慢するゾ…。ショボンッ 」
ショックを受けた顔をしてとぼとぼ歩く姿に若干、罪悪感があったが無視する。
「…我慢はオスの器が試される時! 我慢して、我慢して、理性が…ウッ! と解放されたときの至福と快感があるとかないとか?」
「またアイツかッ!!」
「ん? 博士が言ってた。」
「やっぱかッ!!」
確実に面白がって教えたなッ。
子供にナニ教えてんだ変態うぜぇ。
変な事教えんなよ変態、俺の罪悪感返せッ!!
ーポーン【離陸準備シテクダサイ】
「とにかく順番きたから行くぞ。」
「ピィ~。了解だ相棒!」
◇◆◇◆
ーブーンッ
「ビクッ! 切り裂く風!!」
ーザシュッ!! ブイーン
風で切り裂き傷を付けるが、角をかすった位で上手いこと避けられた。
道中進んでいたら森からいきなり、カミキリ虫の魔物が飛んで襲いかかってきて、度肝をぬく。
なんとか反応出来てからよかったが、あのピエロみたいな奴はどうも好きになれない。
お互いに睨み合いながら次の行動をとろうとすると、ヌルボットの方に逃げやがった!
馬鹿だなー、あいつのが強いのに…
「すまんッ、そっち行ったッ!」
ギ…ギィギィー!!!
「後は任せろ相棒! いくゾ~100万ボルトッ!!」
ーゴロゴロ… ドーンッ!! バチバチ!
ギギ…ィ、ギィ…
ーヒューー バタンッ!
ヌルボットから放たれた雷になすすべなく、あたって黒焦げになった敵は下に落ちていった。
「終了っと。おつかれ。」
「おう、華麗な勝利なんだな♪」
草原が広がり、サワサワと風に遊ばれ草が音をなびかせている光景を上から眺めながら、また出てこないか辺りを警戒する。
今はいないな、フゥー
一息ついて、倒して空から地上に落ちた虫の魔物を見る。
空飛ぶのに邪魔な弱い虫等、魔物が嫌がる香を焚いていたんだが…、なんも反応せずに特攻してきやがった。
あれはビックリした、いきなり視界に入ったから。
なにより白ベースで紫のドット柄なボディ…
気持ち悪かったんだ。
……即攻撃できて本当よかった。
冷や汗をぬぐい、魔物の回収のため下に降りる。
穴掘って埋めたらダメかな…
ーツンツンッ
「なぁなぁ、コイツ食べれる?」
先に降りていたヌルボット、大網の持ち手で魔物つつきながら聞いてくるんだが…、やめなさい、直視したくもない。
「…美味しくないと思うけど、食いたいのか?」
俺は嫌そうに視線を反らしながら返事をかえす。
こんなドット柄の珍妙な奴食うのか。
毒か病原菌もってそうだし、たまにドットの中にハートが混ざっているというメルヘンな虫を。
見つけたらラッキーなんだって…。
俺はアンラッキーだよ…ウプッ
「うん食べたいゾ♪ 何事にも挑戦しなきゃ始まらないからな! 悔いを残さず突き進めッ、がオレのモットー。」
「ハイハイ、立派な教訓だなー。どーせ食欲を満たしたいだけで、教えてもらった建前を言ってみただけだろ。」
俺は食い気より吐き気を及ぼしているが…。
「失礼な奴だな! オレだってちゃんと考えてるゾッ、悔いを残さない様に、買って食べまくって、狩って食べまくって、勝って食べまくって、最終的には飼って食べまくるのが夢なんだ♪」
「欲望の塊だな。どんだけ食に貪欲なんだよ。 あと、飼うって…飼われてんのはお前だよッ。誰が世話すんだ。」
結局最後は俺に頼ってくるに決まってる!!
ミイラとりがミイラになるね!
ヌルボットが瞑想し始めた。
ーピピッ
「デハ、調理をはじめマス。マズは硬い皮膚を剥がしテ、中の身を取り出しマス。」
「俺の話は無視か。」
でたよ、都合の悪いときはスルー。
こいつの悪いクセだ。
誰だ、こんなクセつけた教育したの…変態かッ
たくッ録でもない親だな、知ってたけど!
ーバキバキッ!! ベリッ!
そんな中、ヌルボットは"調理モード"にきり替わって、皮を剥いで身をタッパに積んでいく。
かたちから入るのか、今はもふもふを封印して、コックの格好をしている。
例の体から服と調理器具を取り出していた。
…もう、なにも言うまい。
「次に、食べやすいヨウニ包丁で切って下さい。ナオ、今回の身は柔らかいタメ、隠し包丁ハ必要ありまセン。」
ーザンッ! ザクザクザクザク…
コック顔負けの包丁さばきで淡々と一口サイズに切り分けられていく珍肉。
中の身もドット柄って……ウプッ
胃からあがってきそうなのを、手で口元を押さえて堪える。
食えそうミエナイモノを、顔を青くしながら視界に写らないようにする俺。
なんの修行だろうか…、精神耐性?
口の中が酸っぱい…
「次に、下味をつけマス。塩…少々、胡椒…少々、刻んだ香草を練り込んデ香り付けヲ。少し待ちマス。ソノ間に、フライパンを火で温めバター…適量を投入、溶けだしたラ、肉を投入し炒めます。」
ージュウゥ~
気分を変えるために深呼吸すると、バターのいい香りがしてきたのが分かった。
ジュウシュウ音を弾かせて炒めているだろう珍肉を音が道中で響く。
「身の色が変わったラ、火ヲ消して、蓋をし、余熱で3分蒸しマス。」
ーピッ
蓋に付いている機能のタイマーで3分予約しスタートさせて、フォークを用意するコックさんモードのヌルボットに微妙な視線を向ける。
まともなモードがあって心底良かった、これだけはあの変態に拍手だ。
油断はできないが……
ヌルボットのやつ、一体いくつのモードが備わってんだか。
職業をその時に応じて変えれるのは強味になる…が、あの博士の事だから絶対変なモードはいってそうだ。
「…ハァ。憂鬱だ。」
◇◆◇◆
ーピィピィ♪ ピィピィ♪ ピィピィ~ペポンヌ♪
「3分たちまシタ。仕上げに、粉チーズをふりかけ完成デス。…調理モードを終了しマス。」
「……ペポンヌ?」
ペポンヌってなんだ?
「プハー、疲れた! よし、出来た出来た♪ 美味しそうだな~相棒も食べるダロ? 今回も力作だゾ!!」
「…ペポ、いや、俺は遠慮しとくわ。ちょっと気分悪いし。」
ペポンヌが気になってしょうがないんだけど。
「そっかー。残念だな。確かに顔色が前の時と一緒で変態してるな! 勿体無いし、し、しょうがないから、オレが全部食べて…、ジュルリッ…やるゾ!」
「……。」
ーガツガツ ペロペロ
……残念なイキモノは食事中なり。
だらしない顔をして、食べカスを巻き散らかしているし、最後はフライパンを舐めてる。
まぢで残念な生き物だ、ツッコムのも疲れたな…
「…旨かったか? 満足したろ、そんだけ食べたら。」
「うん、旨かった! でも、まだまだイケるけどね! 腹八分めかな?」
「…あっそ。」
こいつの食欲についてけないわ…。




