2: ヌルボット=わんぱく坊主?
少し修正しました。
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やべッ 、つい怒りの余り破いてしまった。
こんな説明書でも重要な…、重要か? ん~まだ全部読んでない、しかも人様の物だし。
あぁ、どうでも良くなってきた……いっかッ。
それより気になるのが、よくヌルボットが話す時に登場する博士の印象と、文章を見てやはりかなり濃ゆい人、個性豊かな人物の件だ! ♥がうざかった。
性格が変態変人極まってヤバそうだし、正直、関わりたくない。
俺の危険察知がビンビン反応してんたよな…
しかも、ヌルボットをあげる人、ダーツで決めちゃってるし。
絶対楽しんでるだろ、 天才博士殿。
それと思ったんだけど、リ◯ャって俺じゃね?
真ん中隠してあるけど、まんまじゃん…説明書の注意書きには◯シャって書いちゃってるし、隠せてねぇよ!!
目星、運命? ナニソレおいしいの!? 怖ぇーーー!!
アルティール博士って変態でさらにストーカーなのか? 俺、会った事も、話した事もないんだけど、リンリンって俺の事か!?
なぜフレンドリー、怖ぇーー!?
なんなのまぢで、鳥肌たってきたし、冷や汗かいてきた。
どんどん謎が増えてくんだけど……、答えてくんねぇし。
あぁ、憂鬱だ…、引きこもりたい……
「あ、相棒? さっきから大丈夫か? 顔が赤くなったり、青くなったり、最後は土色になったり、人間ってのはそんな変態生物なのか?」
「いやそれ、死にかけてる。あと、俺は変態じゃねぇ。変態はお前の親玉だ。」
意味が違うがつい変態に反応してしまった。
でも博士と一緒にされてたまるか!! 俺は健全だ。
ヌルボットのキョトンとした面を見ながら、思考を切り替える。
「ハァ~謎だらけでますます意味がわからん。」
ーウルウル
「ピィ…」
「ウッ、…ハァ、仕方ないか。追い返そうにも相手は生死不明の変態。返せても後が怖いし。」
潤んだ目で見てくるとか卑怯だと思う……腹くくるか…
これで追い出したら後悔しそうだし、なけなしの良心か痛む。
「…これもなにかの縁なんだろうな、しょうがないからお前の面倒くらい見てやるよ。」
しょうがないから。
ーキラキラッ
「!ピィピィ~!!」
未だに約束とか、何で俺なのかとか、本当の理由は解らない。
でも、約束があれど、いきなり知らない所に送られて、親には頼れない、必死にこうやって自分の居場所を作ろうとするヌルボットに自分が重なり、断りづらいし、なにより俺の性格上ほっとけなかった。
厄介な事と自分でも思うけど、もう腹はくくったんだプラスに考えよう! 見た目は可愛いもふもふだ、…喋ったら馬鹿だけど。
一緒にいたら学習していくみたいだし、あの片寄った覚えを訂正していこう。
若干、手遅れのような気がするが、これからに期待だな。
ーシュッ
しゃがんで目線を合わし、ヌルボットに手を差しのべる。
「ピィ? …ピッ!」
ーテシッ
ちっちゃい手を握りもふ…。うん、これから楽しそうだ♪
「これから、よろしくな。 相棒!」
「おう! 大船に乗って飛び出そうぜ、相棒!」
「…何か違うが、まぁいいか。」
こうして、ペンギンモドキの相棒ヌルボットはトラハの従業員兼、居候となったのだ。
~(回想終了)~
ミリーヌから荷物を受け取り、依頼人の資料を折り畳み、荷物と一緒に左手にある"トリックボックス"(収納魔具 手袋Ver~)に収納すると、冒険者ギルドの入り口に向かった。
「リシャ、何時も言うけど気を付けて。無事に帰ってきてね。」
「うん。 ありがとミリーヌ、行ってきます。」
ーチリンチリン
ミリーヌに手を振り見送られながら入り口をくぐり抜ける。
外より暗い室内から出たから日差しが眩しく感じる、俺は目を細めながら手を上にあげて、背を伸ばす。
相変わらずガヤガヤと今日も賑わってるねー
歩きがてら、ちらほら知り合いに声をかけられ俺は挨拶をかえしていく。
ースタスタ
「あら、リシャおはよう。今日はりんごが安いよ~、買ってくれたらオマケするよ! どうだい?」
「はよー。商売上手だねぇ、じゃあ2個ちょうだい♪」
「あいよッ! じゃあオマケのオレンジ一緒に入れとくね。ありがとねー」
んーっと口から音をだして、手を上げ相手に挨拶し、その場を去る。
そうそう、ここから家までの道のりには涎したたる屋台の誘惑が待っている。
俺達住民は、そこを"飯テロロード"略して飯テロードと呼んでいる。
家でご飯を作って待っている家族がいるのに、この道に通ったら最後、仕事帰りだから腹が減り、匂いの誘惑に負けて大量に購入してしまい、家に帰れば妻に怒られ、ささいな喧嘩は日常茶飯事だ。
独り身には嬉しい道だが、所帯持ちには苦い道なのだ。
飯テロード、恐るべし。
朝飯まだだったから、腹減ったな…。
何か腹いれてから仕事にいくか、何にしようかなっとふらふら物色しつつ、旨そうな匂いに鼻が刺激され唾液が口にたまる。
サンドイッチにホットドッグ、お! フライドポテトがある! あれ腹持ちいいんだよなー。
でも肉食いたい、あぁやっぱあそこだなと、スタスタ何時もの焼き鳥の屋台に足が向く。
歩いていくと、カラフルな色が目立つ屋台の中で、黒い羽の形をした看板に白色で"鳥旨ッ!!"と書いてあるのが見えてくる。
なんとも主張が激しいが確かに、旨いんだよな…。
なににしようか、今日は塩の気分だな、アイツの分もだから多めに買うか。
なんでロボットなのに食事が要るのか疑問だが……。
確か、美容がなんたらって説明書に書いてあったような…、忘れた。
まあいいや、とりあえず並ぼう!
今注文した客はチリソースに塩か、やっぱ定番にいくよなー、いいチョイスだ。
順番がまわり俺の前の客になって、注文したのは香草焼き…お! いい匂いだ、それも頼もうかなと考えていたら、俺の順番がきた。
ージュウシュウ
「おっすおっちゃん! 今日は塩と香草と5本ずつお願い♪」
「おう、まいどありィ! そうだリシャ、この前はありがとな。」
「いやいや、こちらこそゴチでした。」
炭火の香ばしいかおりで、食欲がわく。
ここの色んな屋台があるなか、この匂いを嗅いでしまうと、もう我慢できなくて、特に腹が減っている時はヤバイ。
それでつい、買い込んで仕舞う俺いる…全種類制覇した時は謎の達成感があった。
財布のヒモが緩くなる時って誰かしらあるよね、帰った後は何でこんなの買ったんだっけ? て、後悔するけど。
その場のテンションでやっちゃうよね、そう、俺達はカモなのさ、商人達の思惑に見事にハマって…飯テロード、恐るべし!
屋台の中は熱気で熱く、汗を首にかけたタオルで拭きながら、おっちゃんがニカッて笑い、焼きたてを袋に詰めてくれる。
「はいよ、おまたせ。この前のお礼で5本オマケだ。」
「おお! ありがとおっちゃん♪ 居候が増えたからさー、助かるよ。」
ラッキー♪ おっちゃん太っ腹だなー、熱い中いつもご苦労様っす!
「ああ、あのヘンテコな成の毛深い坊主か。」
「そう、体は小さいのに大食いなんで、うちのエンゲル係数ヤバイよ(笑)」
おっちゃんと和気あいあいと、ヌルボットの話題で盛り上がる。
うちの子あんな成のクセして俺より食うのだ…どこに栄養いってんだろ? 便所行ったの見た事ないんだが……野グソ?
それに、アイツの体は収納魔具なんじゃないか前から思ってた。
説明書しかり、食い物しかり…あんなものまで。
おっちゃんが言ってた前の出来事なんかさ…
ー・・・
仕事で愛車の飛行バイクに乗って、空を飛んでいる時に烏の魔物-グロース-の大群が現れたんだ。
んで、あぁ…またかと腰からナイフを取り出し応戦しようとしたら、隣で飛行していたヌルボットがもぞもぞしだして、何かを取り出そうとしてんの。
ーガシャガシャ デンッ!!
「…これで♪ ピィピィ~流石博士! 腹が満たせるゾ!」
なんかボソボソと小さい声が聞こえて、何をする気だとヌルボットを見た瞬間、俺は目を見開いて唖然とした。
自分の質量より大きな物体を取り出して、死神の鎌…ではなく。
何故か虫取網と虫取籠を装備して、目をギラつかせ、尻尾を立てながら、涎を垂らしていた。
かわいいお馬鹿キャラはどこいった…、残念な顔になってんぞと思っていたら、隣にいた奴がビュンッと消えて、嬉々として飛び出していきグロースの大群の中へ、一匹で突っ込んで行った。
大網を振り回して叩いては捕まえ、どんどん網の中に黒いのがたまっていく様に、エェーと、口を開けて唖然としていた顔を元に戻し、慌てて俺は加勢しようと近づくんだけど…。
ヌルボットの顔が生き生きとして、無造作に動き獲物を狩っていってるから、巻き込まれそうで近づけない……
それと、何故か晴れてるのに雷が鳴って光ってる。
あいつ大丈夫か? 大群だけど…と、見守っていたんだが、大丈夫そうだった…。
むしろ相手が劣勢だ、見てて可哀想になる…
ガァガアー!
ーゴガーンッ!! バチバチッ
何で網から逃げないんだろ、逃げれないのか? と目をよく凝らして眺めていると、なんかさっきからヌルボットが雷を出してるように見えて、魔法使えたっけ? と疑問に思い、今までそんな素振り一度もなかったと首を傾げる。
いつも足で引っ掻いて敵を撹乱してくれてたけど、戦えんじゃん! 騙された…、俺必死に守ってたんだけど、なんだよ早くいえよー。
あいつ目の前に鶏肉が大量にあるからって欲だしやがったな。
この際だからどれだけ戦えるか観察してやる! 油断しなけりゃ負けないだろ、俺もいるし。
カァカァーーー!!
ーバサバサバサバサッ!!
「そぉーれ!!」
ーブンッ! バチバチッ!!
ガシッ! ドスッ!!
ポイッ! ビリビリビリッ!! ヒュン!
じぃ……フム。
どうやら大網の方は魔具みたいで、殴ってヒットすると、稲光がほとばしり電気ショックで気絶するみたいだ。
網には雷が帯びてバチバチしてるし、魔法じゃなかったのか。
簡単に説明すると、
殴って攻撃+電撃→
(網って武器だっけ?)
痙攣している隙に足爪と尻尾で捕まえる→
(足と尻尾で二刀流。)
嘴で眉間にブスッと刺す→
(暗殺仕事人ッ!?)
大網に入れる→
(瀕死からの電気地獄、とどめをさしたな…)
ある程度網に貯まったら籠に収納。
(天国か。)
勿論、カゴは収納付きの魔具だ。
なるほど、あいつエグいな…
結論、俺要らなくね? だって、一匹無双してんだもん。
グロースってそこまで強くないけど、弱くもなかったような…。
今も、逆にヌルボットに襲われて逃げる鳥たち、でも逃げ切れていない鳥たち、むしろ狩人のスピードか上がった…、あいつ強かったんだな。
ぽくぽくぽくちーん……南無南無。
俺は手を合わせて黙祷した。
ガアガア! ギャーー!!
……悲鳴がうるさい、チラチラと熱い視線が鬱陶しい。
しかたなく、手を合わせていたのをほどいて目を開けると、熱い視線の先は俺へと必死に何かを訴えて逃げ回っている黒い集団だった。
顔がうざい、喧しい、なんのようなのさと見てみると
「オマエ、飼い主ダロッ、何とかシロヨ!!」とか
「降参してるのに聞いてくれナイ~!?」とか
「涎ヤバイ、顔ヤバイ、死神コワイ!!」とか
グロース達の心の声は…、聞こえない、聞こえなーいと耳を手で塞ぎ、目を反らしておく。
俺は今観察で忙しいんだよ、お前らが挑んだ戦場だ、殺るか、殺られるかで、この世は弱肉強食なんだ、諦めろ!
話をそらすが、やっぱりヌルボット強くない? 殺されそうになってたんじゃなかったっけ…こいつ。
これ、逆に殺せる位のレベルだけど…
あの変態、暗殺技術カスタマイズしたんじゃねー? なにが無害なのさ、立派な暗殺人に育ってるよ。
か弱いってなんだ、むしろ逞しいんだけど…、保護者(仮)なしでもう独り立ちでいいんじゃない? 一匹でもやってけそうたぞ。
多分俺より強いよな…自信なくすわぁー。
現実逃避中に「鶏肉捕獲完了ォーー!!フィーバーー!!」と勝鬨を上げていてた。
ああ、もう名前ですらないグロース達に同情して、辺りを見回したら視界に黒い集団は一匹もいなくて、夕日で空がオレンジ色に染まっていた。
あ、察しました…、全滅したかぁ~、狩人から逃げれた者はいなかったんだな。
ホクホク顔のヌルボットが此方にパタパタと飛んで帰ってくる。
よかったなー、これで腹一杯食えるし…俺、毎日ちゃんとあげてるけど足りないんだろうか、虐待じゃないからね、こいつが食い過ぎなだけだから!
あれ…、頭に麦わら帽子が増えてる。
Σワンパク坊主かッ!!
で、夜になると魔物も厄介になるから、俺達は素早く帰宅した。
そして、あの大漁の鳥肉達は、おっちゃんの屋台へドナドナされて、下処理とかを他の屋台の人達も手伝ってくれて、ヌルボットの活躍をみんなで祝いながら美味しく頂きました。
旨かった、ありがとうグロース…多分忘れない…。
帰宅後、俺に黙ってた事でやさぐれた気持ちを、ヌルボットの体、もふもふすることで許してやった。
あいつは「いやん、そこはッ!! ピィ~ご勘弁をーー!」と何か叫んでたが、俺の手捌きで毛皮も揉みくちゃにしてやったら、尻尾丸め涙目になってたけどなッ! ざまーみろ、ケッ!
……という事があった。
ージュウジュウ
「こんな事しかお礼できないが、いつでも来な! 旨いもん食わせてやる。」
「ハハッ、十分だよ、また来るね!」
おっちゃんに挨拶して、早々に家に向かって足を動かす。
グゥ…、腹減ったーー! 話が盛り上がりすぎて、つい長々と居座ってしまった。
ヌルボットも家で待ってるし早く帰ろう。
そんで、食べてからその後は、久々の隣町へと仕事だな。
スミスでリンドル行って、そういえばこの時期って花が満開になる時だったっけ、元気にしてるかなーあいつ。
…うん、人様に迷惑かけてそうだな、回りの方々気の毒に。
折角だ、リンドルから近いからたまにはこっちから会いに行こうかな…。
いつもあいつから会いに来てくれてるし、ヌルボットにもあの景色を見せたい。
きっと、興奮してピィピィうるさいんだろうけど…楽しみだ!
ーガチャ
「ただいま、ヌル。飯買ってきたから食うぞー。その後は、遠出して仕事にいこう。」