34: 後ろ暗い真実
医師は嘆いた。まさかこんなことになるなんてと。
教皇という椅子もただのお飾りで、ただ単に石の事を教えてくれたからと皆に祭り上げられたに過ぎず、お偉い貴族の傀儡だ。
あの真相は世間的に悪いため、真実を改竄し、あたかも精霊を尊い存在にし拝めて裏ではその精霊達をぞんさいな扱いをするような教会ができた。
嘘でかためられた宗教などあってはならないと訴えたが、精霊達が世界を救ってくれたのは変わらないんだからこの事は国民には伝える必要はないと、教皇という肩書きなど一切通用しなかった。
ある日、数人の人間達が今度は病ではなく、おかしな現象に見舞われた。
核を呑み込んだ者達だ。
元の瞳の色から、赤・黄・青・緑などの色に変色し、ある者は魔法や身体能力が並外れた力を手にいれたり、力が制御出来ずに発狂し精神が壊れたりとする者が現れた。
それを気にせず皆が力欲しさに欲にかられて呑み込み、新たな力を手に入れた……が、そこには勿論デメリットが生じた。
寿命の短さだ。
個々によって違いはあるが大体五年以内に、早くて二、三年で死ぬ者までいた。
そこで誕生したのが研究者達だ。
のちの裁きの執行だが、昔は名もなく烏合の衆の集まりで、マッドサイエンティストな者もいなく、ただ核の事を研究してどうにか寿命が長くならないかと探しはじめたのが始まりだ。
だけどそんなものなど見つかるはずもない。
自分達の愚かさが招いた結果なのだから。
研究は続いた、そして年月が経つにつれ歪んで行き今では短命なのは先祖と精霊のせいだ、何故今を生きる自分達が尻拭いしなくてはならないのだと、どうせ短いのなら好きにして一生をすごすと一人、一人と拡がってゆき、狂った組織に変わり果てた。
子孫もまた犠牲者なのだ。
昔よりは先祖の血も薄れ寿命が長くなったが、それでも微々たるもので、力を手に入れるかわりに短命というリスクがセットで着いてくる呪いのような体が現在でもあの大陸を中心に集まっているのである。
何故中心に、プラニボ聖国に集まるかというと、それは封印された精霊達に無意識に惹かれる体質だからだ。
ある意味鎖国状態である今では、短命という事も、自分達の先祖が愚かな事をしたとさえ知るのは教会の上層部のみで、移住など考えもしない国民達は自分達の死期が他の大陸の者と比べて、短いなどと思いもしない国になった。
それに、事実を知る者達はそれが負の連鎖などと思いもしないのだろう。
皆が狂ったあの災厄 魔源の暴走、何が原因だったのか……今でもわかってはいない。
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「今は人間というより、珍しい個体を実験するのが奴らの研究対象だ。自然を、自由を愛する精霊から獲れる核を使って俺という器に、な。」
「………。精霊は……この世界を調和する重要な役割をしていた存在だった、それを愚かな人が狂わし今では歪んだ世界が生まれてしまった……呪い、恨まれても自業自得ってところか? だが開き直って他のもの達にまでってのはおかしいだろッ! 狂ってる!」
落ち着けというように尻尾でポンポンとされて、胸が痛む。
だって、その犠牲者が傍にいるから余計に…
「…クロ、いつ? いつ核を呑まされたんだ?」
「……ふむ、数えるのは面倒だから知らん。なんせ主が言うように脳筋だからなッ!」
「ッ! だとしてもッ、短…「気にしてはおらん。」……ッ…」
「それに弱肉強食の世界に長いも短いも関係ないしな。」
それは…そう、だけど………気持ちがついていかない。
俺の内、精霊の気持ちなのか"マタヒトリニナルノ?"と悲鳴が聴こえてくる。
「……神は、………天界の連中は何も感じなかったのか?」
世界を創ったのは神とよばれる。
たが、話を聞いていたら天界の話が全くでてこなかった。
あくまで創っただけで実際は精霊に任せっきりのふざけた世界なのか? それともそういうものなのか……
「あくまで天界の奴らは傍観者だ。自然とともに生き自然とともに死ぬのが定め。失したあとはまた創り直せばよいと考える、自分の感情などない連中だ。」
「ハッ………。」
どいつもこいつもッ……つくってはポイってか!?
憎むぞッ、神様!!
難産……シリアスは苦手です。