32: し、師匠ォー!
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Status▽
名前:リシャ Lv.33 <ハーフ>
職業ジョブ:運び屋 サブ:なし
状態:良好(※▽)
(※呪《封印》状態)
HP:2400/2400(+210) MP:720/720《封印中(999)》
攻撃力:218(+16)
防御力:180(+53)
術攻力:322(+10)《封印中(999)》
術防力:176(+49)
命中力:154(+13)
集中力:166(+10)
固有:精霊の愛し子▽
精霊たちに好かれやすい《全属性使用可能》
Ability▽
[全武器攻撃可][風魔法][土魔法]
[火魔法][水魔法][闇・暗黒魔法《※》]
※封印中は暴走する
[雷・氷・光・神聖・空間・時間魔法《封印中》]
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「むむむむ……」
「そんなに睨んでも変わらないわよ。現実を受け止めなさいな。」
画面を見ながら唸っていると、呆れたのか正論を言ってくるので、諦めて項垂れた。
「俺って人間じゃなかったのか…しかも、魔法無双できるぐらいのスペックがあるとか……呪われてるけど。まぢありえねぇー。じゃあなにか、あんな怪我とかしなくても相手をのせるぐらい強いのかッ……使い方次第で、下手くそな俺は宝の持ち腐れってかッ!? うがーーーーー!! 納得できんッ!?」
一人頭をかきむしりながら叫ぶ俺をよそに、魔女とクロウェルはお茶を飲んだり、軽食を食べて一服している。
クソッ! 他人事だと思ってくつろぎやがってッ!! 他人事だけども!
「そんなことより、あなたたちの用件はいいの? ここに来た目的は知恵をかりに来たんじゃなくって?」
「おお、そうだったな! すっかり忘れていた。」
忘れんなよッ! いや、俺も若干怪しかったが…
自分の話で狂ったわ。
「ハァ、あらためて…俺はリシャ、そこの黒いのがクロウェル。家に招いてもらって感謝する。」
「感謝するぞ。」
「ふふ、面白そうだっただけよ。私は知ってのとおりこのウェルシュ樹海の魔女。名前は長いからウェルでいいわ。」
「よろしく。」
「ええ。で、どのようなご相談かしら。」
俺はウェルに今まであったことをかいつまんで話して、この大陸から早くでて行きたいと相談すると、難しい顔をして一つ一つ答えてくれる。
「そう、そんなことまだやってたのね……。まず一つ目、大陸から出たいなら船しかないわ。城には転移魔方陣があるけど、ここグレンネス大陸内だけのものだから、あなたが行きたい所へ繋がっている訳じゃないから意味ないでしょ?」
「ああ。…やっぱり船しかないか。」
拳を握りしめながら、無意識に眉間にしわがよってしまう。
そんな俺の様子に、ウェルは次に切り替え話を進める。
「まあ、やりようはあるわ。それで二つ目、裁きの執行の本拠地はプラニボであってるわ。昔と変わってなかったらね。ただし、水の精霊が言っていたとおり、その上層部だけのメンバーってことかしら…全員が敵って事はないわね。」
「なんでそんな事わかるんだ? 正直あそこの連中みんな怪しく感じたぞ。」
「そうねぇ、精霊は純粋たるものとしての象徴だから…嘘がつけないのよ。素直で正直な性格だからたまにグサッて刺さる事もあるけど、そこが面白いのよね。だから、戦うにしても他を巻き込んでは駄目よ。連中と同じになっちゃうから。」
「……わかった。慎重にやる。」
「よろしい、でわ三つ目、アルティール・レブロンについてだけど……流石に居場所は分からないわね。それと、裁きの執行の使徒でもないわ。あの子がそんな玉なわけないもの……私利私欲で自分に忠実、協調性のない性格じゃ組織にはむかないし、なにより自由があの子の存在意義だから、他人には手懐けられないわ。逆に翻弄されるだけね。」
「……やけに詳しいな。」
「ふふ、そうね、あの子についてはよーく知ってるわ♪ バカ弟子だもの。」
「……は?!」
淡々とした口調で爆弾発言をふっかけてくるウェルに、瞬時に言葉が呑み込めずにいた俺は、一歩遅れてから徐々に目開いた。
弟子?! ってことは、あの変態の…し、師匠!?
…なるほど、あの弟子にこの師匠ありってか……悔しい、なんか納得してしまう自分がいる…
凄い言われようだけど。
「だけど、あの子にもあの子なりの事情があるのよ……」
先ほどまでニコニコ得意気にしていたと思ったら、急に憂いをおびた表情にかわる。
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ーーー
ーー
『私にとっての家族は兄なの…。』
『ヌルルンは…いえ、ヌルボットは違う、ただの私の作品よ。ヌルボットが家族とは一言も言ってないわ。』
『貴方は言ったじゃない、いたい…家族は一緒にいるべきって…』
……あの時の場面が脳裏によぎる。
正直いって複雑だ、自分が言った言葉なのにそれが決定打になるとは思いもよらなかった。
「兄貴だろ……だからって俺は許すつもりはない。」
「……そう、知ってるのね。」
「家族が大事だってさ…ヌルボットは違うのかよ、作りてなのに…親も同然なのにッ、簡単に捨てるんだ。なら、作んなって話。こっちが迷惑だッ! 育てる気がないなら初めからやんなっての……」
「……ん~。それはそうね、同情の余地なしだわ。ただ、話くらいは聞いてもいいんじゃない? それからボコボコにしちゃいなさいな♪ ふふ。」
正直な話、腸が煮えくり返っている。
だが、この人にあたってもしょうがない……本人を前にしたら我を忘れそうだけど。
「……師匠の言質とったからな、手加減なんかしてやんねぇ。あと、俺の愛車を弁償してもらうッ!!」
「そうそう! その意気よ♪ じゃあ最後の四つ目、呪いは解けるのかだけど……んー難しいかな。普通の呪いじゃないから特別なキーがないとどうもねぇ。私の勘だとその内に解けるといってるわ。」
勘って……そんな、殺生な。
封印だけの呪なのかも分からないから扱いに困る。
闇系の魔法なんて、暴走するって記載されてるし……とか考えていると、ピコンとひらめいた。
そうだよ、呪いの先輩が身近にいるじゃん! 解き方知ってるかも。
「なあ、クロ。呪い解けたか?」
「ん? 解けたぞ。はれて自由の身だ!」
「よかったなー。ついでに俺の呪いって解けるか?」
首もとに腕を回して寄り添うと、クロウェルは何いってんだ? という表情で、濡れた鼻を俺の鼻に押し付けてきた。
「いや、それは呪いではなく、呪いだ。」
「へ?!」
「あ、やっぱりそうなんだ。闇の色が濃すぎて紛らわしいわねぇ。」
「闇精霊のだからな。だから、解く必要性がない。あったとしたらその時は主の親か、解けるキーで自然に解けるさ。」
「まぢか……」