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フライングデリバリー  作者: ウラン
第一部
30/40

25: 一時停止!

※本日は二話同時投稿します。

少し修正しました。

 

「やだヌルルン! ますます毛艶キレイになったんじゃなぁい♥ 毎日可愛がってもらってんのネ!」

「ピィ♪ お風呂入った後に直ぐ寝たいのに、相棒が毎回触って寝かしてくれないんだゾッ! 終わった後もベッドで離してくれないし~。」

「ちがッ…「きゃーーー♥ ナニナニ! もっと詳しくぅ~♪」このッ…「あのね、あのね! 触り方が優しくてー、ナデナデ、クニクニ、サスサス、クンクンってするのが好きなんだ♪ 尻尾が敏感なのって言ったら直ぐに擦ってくるから、もう、ぐでんぐでんになって火照るし、痙攣するしで大変だゾッ!」言い方…「いやぁ~ん♥ 案外リンリン積極的ィ~♪ もうそんなに好みの調教シテたのね! 若いって早いわ~♥ もちろん最後までシタのよね?」してな…「ピィピィ♪ 博士に言われた通りに、身を委ねたゾ! 相棒は欲が満たされて、満足そうでしたッ!!」……。」

「やだぁーーー♥ もう、リンリンってば(ケダモノ)♪」

 ーΣダァンッ!!

「「…………。」」


 ロンギヌスを振りかぶり博士(変態)とヌルボットの間に突き刺した。


「お前ら俺の話を聞けーーーーー!!」


「「……いやーん過激ィ~♥」」



 もうやだ……この変態どもッ!! 全然反省する気もない!

 ヌルボットも博士(変態)がいるからか、いつもより強気だし。

 さっきのもヌルボットは素直に話してるが(言い方はあれど…)、博士(変態)は分かってて話を卑猥に持っていくからタチが悪い!! さすが本物だ! クソッ、会いたくなかったぜ…!!


 俺の手に負えねぇ…


「でぇ? 何でここに~? 捕まっちゃったの?」

「いや、アンタこそ何でここに捕まって…るのか? 牢の鍵開いたよな…」


 ヌルボットを撫でながら俺を見つめる博士に、俺も疑問を返す。


「ん~一応、捕まってるわね。自由にしてるけど♥ で? 何で? ヌルルンを匿って欲しくて届けたのに、なぁ~んで逆に届けられてるのよ、おバカさん♥」


 そう言われた瞬間、ヌルボットを掴んで懐に抱き寄せ、警戒しながら博士から距離をとる。

 冷や汗がながれ、いつもより目付きが鋭くなるのがわかる。


「ピィピィ! …「黙ってろ。」…ピ。」


「……そんな猫みたいに警戒しなくても~。」


「何で知ってる。…俺達がここに来るようハメられたって!」


 槍を持つ手に力が入る。

 この人も、やはり裁きの執行(クルス)なのか?


「…ふぅ~。見たからよ。」


「…見た?」

「ピッ!」


「そう、貴方達が侍祭に要件を話してた所も、礼拝堂に入って来たのもね。だって、……アタシもあそこに居たから。」


 唇を人差し指をあててニッコリ笑う博士に、言われた内容を理解して一驚する俺に、ヌルボットは、やっぱり! と納得顔で尻尾を振る。


「ピィ! やっぱりー! 博士の臭いがしたと思ったんだ♪」


「そうそう、ヌルルンが動きを止めて臭いを嗅ぎだした時はバレるかと思ったわ~。騒ぎを起こすと閉じ込められちゃうし、テヘ♥」


 舌を出して小首を傾げる…極まった変態に、なんとも言えない気分になる。


「もう、捕まってるのにか? そもそも自由な事が意味わからん。」

「ピィー! 博士だからなッ!!」

「……そんな根拠のない…」

「博士は博士だゾ! イッツフリーダム♪」

「……。」


「ああ~それね、ほら、メカニカの研究所で襲撃されて捕まったじゃない? それから初めは教内にちゃんと鍵もかけられて窮屈だったんだけどぉ、フラストレーションが溜まっちゃったというか~、憂さ晴らしがしたかったというか、持ち込んでた新開発の薬があったから実験台になってもらってぇ、異臭騒ぎになったりぃ、あ、あとあらゆる体毛が抜け落ちたりして、制限はあるけど自由にしていいから大人しくここに居てくれ~て、地下に移動させられちゃってさ、珍獣扱いよぉ~失礼しちゃう!」


「……まさにフリーダム。」


 博士に関してだけど……まあ、ようは、閉じ込めて被害が出るよりも、ある程度自由にさせといた方がお互いに良かったって感じか…。

 捕まえた意味あんのか? …そこまで博士を置いときたかった理由って…


「なあ、博士。アンタには色々聞きたい事がたくさんあんだけど…俺にヌルボットを預けた事とか、約束とか…。でも、今は逃走中だから早くここを離れたい。アンタはこのままここにいるのか?」


「んぅ? そうね~、相手の思惑は、成功であり失敗でもあるし、このままここに居ても退屈なだけだしねぇ。着いてってい~い?」


 思惑…、(おび)きだす事がってこと? ヌルボットにとって育て親だし、あんなに懐いてるんだ、博士もヌルボットを逃がしたくらいだから、お互いに大切にし合ってたはず…少なくとも可能性はあった。


 ただ、疑念がある俺にはどうしても聞きたい事があった。


「一つ聞きたい…アンタは味方か? 信用してもいいとヌルボットに誓えるか。」


 俺は、真剣な眼差しで博士に問い掛けると、いままでのゆるーい雰囲気を止め、神妙な面持ちで見つめ返してきた。


「わたしは家族よ。家族を裏切ったりしないわ。質問も答えてあげる。だから、一緒に連れてって! 一人は寂しいのよ。」


 そう言って眉を下げて、悲しげに片手を前に出してきた。



 ………ハァ、完敗だ……、そんな事言われると共感してしまう。

 俺だって、…家族は分からないけど…ヌルボットと一緒いて、家族ってこういう事をいうのかな…とか思ったりする。


 腕の中にいるヌルボットを見ると、ずっと俺を見つめていたのか、大丈夫だよ…オレを信じて! と、目で訴えていた。


 ………しょうがないか、と博士の差し出された手を握り、苦笑いで答える。


「……わかった。ヌルが信じるアンタを、俺が信じる。一緒に行こう。」

「ピィ~♪ 相棒ーーー♥」


「んフフ♥ ありがとう。こんなに愛情をあげてくれて。じゃあ、ここから出ますか!!」


 ヌルボットを抱き締めながら、立ち上がった博士を見て、そういや俺ら迷ってたんだったと思い出す。


「俺ら迷ってここにたどり着いたんだけど、出口ってわかんのか?」


 俺がそう言って博士に近づき、用意しているのを見ていると、こちらに振り向いてニヤリと笑ってきた。


「リンリン~、アタシがここにどれだけ居たと思ってるの~? 暇で暇で探険してたからあらゆる場所も把握づみよん♥」

「ピィ♪ さすが博士~頼りになるぅ!!」

「任せなさ~い♪」


「……頼んだ。」


 俺がそう言うと、嬉しそうにウインクをして、「おっ任っせあれ~♥」とルンルンとスキップして歩きだしたので、俺達も続くように歩きだした。






 ◇◆◇◆






 警戒しながら出口へと進む中、たくさん話した。


 なぜ、俺の事を知っていたのか…それは、先代トラハの主人、エルヴィスと知り合いだからだった。


 昔、一緒に旅をしていた事があって、別れてからもメカニカで再開し、また交流が始まって、俺を先代から聞いて知ったという。

 灯台もと暗しとはこの事だ…、先代かよッ!!


 んで、必然的に知り合いの…しかも店の後継ぎの子だったら! っていう一方的な配慮でヌルボットを送ったらしい。


 色んな話を聞かされたんだろう…下戸めッ! 口が軽すぎるぞ!!


 それで、約束とは…俺に家族とはどんなものなのか、俺と一緒に居てやって欲しいという、ヌルボットと博士の約束だったらしい。

 これも先代と話して、でてきた孤独な俺を思い出したんだってさ…。

 だから、襲撃された時に丁度いいとヌルボットに約束をとりつけて、送ったんだって…クソ爺!! 全部のはったんは先代かよッ!!


 秘密にしてたのは、いきなり届いて、しかも初対面で『家族になってと約束したから』なんて言ったら、ソッコー熨斗(のし)付けて送り返されるし、怪しまれて取り合ってくれないと予想したからで……さもありなん…。




「疑いは、晴れたかしら?」

「…なんか、すんません。(先代がッ!!)」

「うふッ、いいわよ~♥ エルヴィスから、た~くさんリンリンの事聞いたから♪ 例えば~「勘弁して!?」…ウフフ♥」

「ええー!! 例えばなにー!!」

「聞かんでいい!!」

「ぶーぶー!!」


 頬に空気を溜めて、膨らんだ所を両手で押してぶーぶーとするヌルボットに、俺は両手をのけさせて、代わりに頬を押してぶーぶー鳴らして誤魔化していると、やり取りを見ていた博士がクスクス笑いをもらしたのち、ふいに後方を見つめて顔を歪ませた。


「しッ……足音が聞こえる…。2…3?」

「……いや、……4だ!しかもこの足音…、人間じゃない?」

「ピィ! 獣の臭いがする!」

「いたのか魔物?!」


 そう言って博士を見ると、何か考えているのか、難しい顔をしている。


「…いえ、ここにずっと居たけど、今まで会ったのは、蝙蝠とか普通の虫ぐらいよ。魔物はいなかったわ。」

「なら、なんだ…? 痺れを切らして、野犬か番犬でも放ったか?」

「ピィピィ! 足並み揃ってるゾ!」

「んぅ、集団で統制とれてるってこと~? それって…」



 ーアォーーーーーン


 近くから複数の足音と、獣の遠吠えが聞こえて直ぐ、黒い影が飛び出してきた。



「ああ、おいでなすった! ……まぢかよ…ヘルハウンドだッ!!」




 漆黒の毛皮、牙は鋭く尖っていて、簡単に手足を引きちぎれる程…体格もよく、体全体的に筋肉質っぽい姿で、こちらを黙ったまま、動向を眺めて対峙する。


(ん? 1、2、3……? 一匹足りない…!! どこだ!?)


 目だけで探すと、通路の奥に…他とは違う、桁違いに強いオーラがあるスラッとした奴がいた。


「博士、一番奥にいる一匹、見えるか? あれってブラックウルフ?」

「ん? …紅い瞳? 亜種かしら……ヌルルンわかる?」

「ピィ! たぶん合ってるゾ!でも、あれ()()()()()。だから紅い!」

「……混ざる? なんだ…「リンリン!![Σバンッ、Σキャワン!]よそ見禁止よ!」すまんッ!助かった。」

「今はとりあえず、このコ達をどうするかを考えなさい!」


 考えに沈んでしまい、近くの一匹が、隙をついて噛み付こうと飛びかかってきたが、博士が気付いて銃を打ち、弾が鼻先をかすって怯んだ隙に俺は距離をとり、礼を言って再度、槍を構える。

 こういう油断が、未熟なんだと自分を叱り、反省した。


 攻撃を受けたヘルハウンドは、態勢を低くして、鼻先にシワを寄せながらヴウゥと低くうなっていて、周りの奴等も同調し、うなる。


 緊迫する洞窟内に、紅い瞳のブラックウルフが、のそっと動き、「ヴォン」と短く吠えると、合図だったのか、一斉に動きだし襲いかかってきて、俺達も迎え撃ち、戦いの火花が散った。




 ーΣガアッ! Σガキンッ

「グッ、重ッ……らぁッ!」


 グワッと牙をむき出して噛みついてくるのを槍で受け止めて、力強く前へと振り払い、いったん距離を保ち、態勢をととのえる。


 三人に一匹ずつ応戦して、リーダーのブラックウルフは高みの見物をしていて余裕そうだ。


 走りながら幾度となく牙と爪で攻撃をしてくるのを、必死に捻って避けたり、槍を振って反撃したが、跳んで避けてと素早く動いて噛み付こうとしてきた。

 それをガキンッと受け止めてギチギチ力の押し合いをしていると、ふいに相手が力を抜いて後ろに下がり、バランスを崩した俺は少し前のめりになってしまったのを狙ったように、突っ込んで爪の連続攻撃がきた。

 態勢をくずしたままなんとか槍で弾いたり、転がって避けたりするが、全てを弾き返せずにガリッと腕に爪がかすり、焼け付くような痛みがして血が流れる。


「ッ、てぇな! …切り裂く風(ウインドカッター)!」

 ーΣキャウンッ!!


 風の刃が放たれ、魔法がくると思わなかったのか、胴体にザシュッと当たり相手が怯んだ…、今だッ!! と槍で下から上へと顎を薙ぎ払い、空中で仰向けになった所で、腹に槍をザンッと振り落とす。

 肩で息をしながら、斬り落としたヘルハウンドを見ると、腹が裂けて血が溢れ、中の臓物が飛び出して重症ながらもこちらを睨んで荒い息を出している。


「はぁ…はぁ、…まだ死なないのかッ…」


 時間の問題だが、手負いの獣ほど、何をするかわからないため、歯をギッと食い縛りながらトドメにと、詠唱し魔源を集めていると、ドスンッ、ビチャっと押し潰された音がして、詠唱を破棄して見るとそこには、腹を臓物ごと踏んでトドメをさした紅い瞳のブラックウルフが、俺を見据えていた。


 ギラリと獲物を見つけて嬉しそうに…。


 息をのみ、背中に冷や汗が流れる……無理だ、コイツは倒せない!! なんとか逃げなければ……



 殺られる(狩られる)ッ!!




「……たぎってきた! 俺も殺りたい!!」


「ええ!? 喋った!!?」


 尻尾をブウォンブウォン振って、マテをするブラックウルフ、言ってることは過激だが、『早く散歩に行こうよ!!』とお座りして待っている仕草が、外見を裏切っていて、一気に殺伐とした空間が消えて、微妙な雰囲気になる。


「ん? 俺はマガイモノ(フェイク)だ。何を驚く事がある? ……あそこの珍妙なチビも似たようなモノだろう。」


「………は?」



 時間が止まった。



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