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フライングデリバリー  作者: ウラン
第一部
29/40

24: 2段ジャンプ!!

少し修正しました。

 

 空気はピリピリしていて緊迫感がただよっていた。


 あとを追ってくる聖騎士を気にするように振り返りながら城内を走る。

 長く続く薄暗い廊下、横にある窓の外はすっかり暗くなり小雨が降っているのか水滴が流れて顔が歪んでみえた。


 心のなかと一緒だな…。


 唯一、前で飛んでいるヌルボットに、手を一生懸命引っ張る姿をみて、まだ心穏やかにいられるのが救いだ。


「いたぞッ!!」


「チッ…ヌル! ふりきるぞ!」

「ピッ! もう一人で大丈夫か?」


 心配気に聞いてくるヌルボットに、情けなくも嬉しくて、顔にでないように強がって返す。


「…誰に言ってんだ、行くぞ!!」

「ピィピィ♪」


 進行方向から剣を抜き向かってくる二人の聖騎士に、俺とヌルボットが互いに得物(武器)を持って走りながら迎え撃つ。


 ーΣガキンッ!


 金属の合わさる音が響いた。


 グッと手に力をこめながら、事のはったんを愚痴る。


「なあ、あんたらやる相手間違ってんぞッと!」


 胸めがけて蹴ると、合わせていた刃を弾き、後ろに避けすぐまた構えて睨みあう。


「間違ってなどいない、特徴がお前そっくりだッ!」

「何だよ特徴って。」

「陰険そうな雰囲気の顔で、黒髪に目付きの悪い男! 黒、赤、色違いのポンチョを着させた人形をもったッ、イタイ奴だッ!!」

「誰が変態じゃーー!?」


 具体的すぎる特徴に、勢いあまって槍を投げてしまい、相手の股間に鎧を破壊して直撃した。


 あれもう、ただの悪口だろッ!


 あまりの激痛に股間を押さえてうずくまるのを見て、ヤベっついやってしまったと気まずくなる。


 まあいいかと、今の内にと槍を拾い、隣で戦っているヌルボットを横目で確認すると、大網に顔を突っ込み痺れている相手の下半身を、嘴でツンツンして「ほれほれ、弱点はどこだー突いたら痛いゾ~」と、脅し遊んでいた。


 ……誰に似たんだか、フッ。


 その様子を、脂汗をながす奴も虫酸を噛んだ表情で見ていて、下から俺に怒りの目を向ける。


「グッ、…おのれぇ~よく…[ブウォン、Σバシンッ!!]Σも"ッ!!」

「はい、おやすみー。」


 うなりを上げて槍が振られると垂れていた男の顔が引きちぎれるほど横を向いてそのまま倒れた。


 戦闘の音が聞こえたのか、ここに足音が近づいて来る。


「ヌル! 遊んでないで行くぞ!」

「ピィピ! おりゃー!」

 ーΣバチンッ

 電撃で意識を奪い、二人の白目をむいた()を放置して走り出す。


「時間稼ぎしたんじゃなかったのかよ…」


 あの"精霊"さんよ…。





 ーーーーーーーー

 ーーーーーー

 ーーーー

 ーー



「わらわは水の精霊じゃ。」


 魅了するような微笑みでそう言った彼女に、目が点になった。


 そんな事は気にせず、脱出についての言葉をならべていく。


「ここは(エルサレム)の執務室ではないからある程度時間稼ぎができるじゃろ。ここから礼拝堂にある精霊の像をずらして、地下を目指せ! 避難経路の道があるはずじゃ!」


 なんでそんな機密経路を…本当に精霊なのか?

 疑問は尽きないが、今はここで立ち止まって考えてる暇はない。


「また、会いにくるからな!」


 何故その言葉がでたのか分からなかったが、俺の言葉を聞いた彼女が嬉しそうに頷いたのを見て、思念がなくなる。


「…待っておるよ。気をしっかり持って…息災でな。」


 そう言って体がぼやけ始め、ゆらゆらと溶けるように消えていった。

 部屋全体も靄がかかり、あっというまに部屋の装いが早変わりした。


 これも幻術かよ、すげーな水の精霊。

 とか考えながら急いで言われた地下を目指し、部屋を出た。




 部屋を出るとバタバタ、ガシャガシャと金属が擦れる音と足音が聞こえて吃驚する。

 騒音まで防いでたのか…

 これはヤバいと、ほの暗い廊下を走っていくと、話し声が聞こえてくる。

 俺たちは今の状況を知るため、暗い方へ隠れて潜みながら聞き耳をたてた。



「見つけたか?」

「いや、いない。」

「殺人犯とエルサレム様の偽者が城内に侵入するとはッ!」

「……第一発見者って枢機卿(すうききょう)本人だろ?」

「ああ、なんでも用事があったとかで行ったら部屋で司祭様が亡くなっていたらしい…。」

「部屋を出ていくエルサレム様と運び屋を見た奴がいたらしいが、本人が否定して偽者だと発覚したんだと。」

「教皇様の荷物も盗まれたとか癇癪おこしてたな…。」

「『今日中に何としてでも捕らえろ!!』とかさ、横暴だよな、相変わらず。」

「口を慎め! 俺達騎士は上の人、特にエルサレム様の命令には逆らえん。さっさと犯人を捕まえるぞ。」

「はいはい、……()()()()司祭恨まれてたのかな? それとも、運が悪かったのか…。」

「なんにしても、そいつらを捕らえるだけだ!」




 なんか、勝手に殺人犯になってるんだけど…。

 ダブラスって彼女が来る前まで一緒にいた人だよな、殺されたのか…

 偽者にまんまと逃げ出されての腹いせ? まあどっちでも、ろくな(エルサレム)じゃない事は分かった。


 それとさ、本物のエルサレムって彼女が演じてたのと聞く限り正反対じゃね? ダブラスにバレてたりして…。



 話が終わって俺とヌルボットは顔を見合わせ頷き、逃げ出すのを再開したのだ……




 ーーーーーーー

 ーーーーー

 ーーー

 ーー




 月の光がなく、ロウソクの火が揺らめき礼拝堂は不気味な雰囲気でほの暗く拡がっている。

 ステンドグラスもなんだか怪しげで、今にもゾンビやらが出てきそう…軽くホラーハウスみたいだ。


 なんとか追っ手もなく、彼女が言ってた精霊像の前に着いた。


「…想像で作ったにしては似てるな。」

「ピィ?」

「いや、…たしか、像をずらすっだっけ? ……どっちに?」

「ピィピィ! こういうのって罠とかあるかな~?」


 俺が足元にひきずった跡がないか、しゃがんで見ていると、ヌルボットがそんなことを言いだした。


 確かに…敵を欺くために有りそうだけど、今は無いほうがいいなー。


 遠くからこちらに向かって足音が聞こえてくる。


「ヤベ、人が来る! もうどっちで…「アチョー!![Σズズンッ!]ピィ♪」も……何してくれてんの?!」


 奇声を発してドロップキックをかますヌルボットにこっちも叫んでしまう。

 俺等いま隠密行動中だってのに…、音で人が集まる前にと像の方を見ると、斜めにずれて下に階段が現れた。


 斜めって……選択になかったわ。


「…よくやった。行くぞ。」

「ウム! 計算通りだゾッ!」


 うそこけ!






 ◇◆






 金ものが目立つ豪華な部屋に明かりも着けずに、二人の人物か密談をしている。


「まだ、捕らえられんのか!?」

「申し訳ありません。」

「クソッ、折角根回しして()()()の方から来させたというのに! 私の偽者だとッ…忌々しいッ! 材料(精霊)の分際でッ!!」

 ーΣダンッ!


 苛立ちを隠しもせずに机を拳で殴る、身なりのいい男性の前に黒装束を纏った男が発言する。


「…エルサレム様、いま下僕が居場所をつかんだそうです。」

「まことか!! …何としてでも捕らえろ! 生きてさえいれば多少傷つけても構わん。」

「はっ! 畏まりました。失礼します。」


 黒装束の男はその場から闇に紛れて消えて、部屋には壮年の男性だけになり静かになる。


「…ダブラスも惜しい男だ。折角の才能(看破)を潰えるとは…。」




 ーーーー

 ーーー

 ー



獲物(ターゲット)が見つかった。地下迷宮だ。」


 ーヴウゥー、ウォン!


「ああ、死なない程度ならかじってもいいと許可を得た。」


 ーキューン、ヴォン


「そう言うわけだ、行けッ。」


 ーアウォーーン


「……さあ、………(かり)のはじまりだ。」


 ニヤリと笑い、闇に消える男の()()()が妖しく光った。






 ◆◇






「…なあ、めっちゃ迷ってね? 俺ら。」

「ピッ! グルグルっすね。ありゃーまいった。」


 聞いてないんですけど、迷路とか!!


 地下内は洞窟のようで、しんと沈んだ湿気の空気が充満していてべたべたする。



 もう、ここに迷ってどれだけ時間がたっただろうか。

 追っ手はちょいちょい来るが、(やっこ)さんがたも迷っているのか少なくて助かる。

 時々、蝙蝠が襲ってくるが槍ではらったり、ヌルボットが例の団扇でぶっ飛ばしたりとオーバーキルをだしている。




「ん? 空けた所に出たな。なんだあれ? …鉄格子だな、こんな所に牢屋か?」

「ピィピィーーー!!」

「おい! ヌル!! 一人で勝手に先行くなッ!!」


 興奮して叫びながら牢屋の方へ飛んで行くヌルボットに一歩遅れてから俺も走って追いかける。


 なんだってんだ! いきなり!


「バカ! 危ないだろ!」

「ピィーピィピィーー!!」

「…ハァ…聞いてないし。」


 ヌルボットに追いついて注意するも、全く話を聞かない様子にため息がでた。


 なにが気になるのかと、牢屋の中を覗くとそこは…堅苦しい普通の部屋ではなく、ずいぶんと妖しい雰囲気の趣味に凝った部屋になっていて、天蓋付きのベッドまである。


 …どっかの姫様を拐ってきたのか?


「ヌル、何が気になんのさ、早くしないと追っ手が来るかもだぞー。ね、聞いてますかー?」

「Σビィーーーン!!!」


 さっきからヌルボットが号泣しながら、鉄格子にしがみついて中に入ろうと暴れているのを見て、とうとうおかしく感じ注意深く中を見ると、ベッドに膨らみがあった。




「…もう~なぁに、この野獣のような声は~。乙女の眠りを妨げるなんてどういう了見よ!」



 ピンクのネグリジェに金髪長髪のふわふわ髪、色白できめ細かくピンクの唇がキュートな…………







 変態がいた。







「ば、ばがぜぇ~!!! ピィ! アルティール博士ぇ~!!」


「んんぅ? ……あら、ヌルルンじゃない! なんだもぅ~夜這いかと思って興奮したじゃな~い♥ 無事に届いたのねぇ~♪ そして、いらっしゃ~い私の楽園へ!! ……リンリンも♥」


「……まぢか。」




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