18: 二度あることは三度ある
※少し修正しました。
「これさー、今日中に終わるのか?」
「んー難しいかもね。」
「ピィ……ん?」
昼休憩が途中であったけど、中々進まない芋掘り。
やっと半分、まだ半分…明らかに人手不足だと思うんだけど、そこんとこどーよブラウニー! と本人を探すも、そうだいないんだった……『可愛い嫁さんが家で昼飯作って待ってるから後はよろしく!』とか言って帰ったのである。
その時俺とスレイニーの心が一つになり『『リア充爆発しろーーー!!!』』と叫んだのは当たり前の事だ。
なんか芋が嫌いになりそう。
このまま続けても中途半端で終わりそうだし、この町に留まる事になるかも、効率いい掘り方ってないものか…。
俺が心の内で文句を言いながらも芋を掘っていると、ヌルボットが離れた所でしゃがんで何かを覗きこんでいるのが見えた。
おいおい、堂々とサボりやがって俺も仲間にいーれてと便乗してヌルボットの方へと歩く、すると後ろからズルいと聞こえて足音がついてくる。
「なーにサボってんの! ヌルさん。」
「相棒ー、これなんの穴? 深くて見えない。」
「これは…大きさからして魔物かもしれない。」
「なーんか見た事あるような…」
俺がウンウン悩んでる間、ヌルボットに危ないから近づいたら駄目だよと注意しているスレイニー。
どこかで見たんだよなこの穴、なんだったっけ? 畑…だろ、虫? いや、なんかピンとこない。
両腕を広げるくらいの大きさ…ん? 穴の左側に盛り上がった土がある、……ああッ!! あいつか! リンドル村で退治を手伝ったわ! と思い出してスッキリする。
てことはだ、上手くいけば残りのやつ丸投げ出来るかも♪ と、ある提案を思いついて気合いをいれ直す。
よし、皆に協力してもらおう。
「なあ、鞭もってない? もしくは縄でもいい。」
「……なんかのプレイ?」
「相棒がついに扉を!?」
「どっちも違う!!」
残念な顔すんな! 腹が立つ、今は真面目な話してんの!!
「なーんだ違うのか。」
「ピィ! 博士喜ぶのにー。」
「面白そうなネタが出来たと思ったのに。」
「相棒のメモリアルに書こうと思ったのに。」
「え! なにそれ面白そう! 見たいな!」
「ピィ! 有料なりー。」
「お金とるの!? ちょっとリシャ! ヌルボットにまでそんな事をさせるのはどうかと思うよ!」
「守銭奴上等~ピィ!」
「はい、ギルティー巨大な腕!!」
ーΣボコンッ
「「Σだべしッ!!」」
無詠唱で唱えたから威力が下がったがまあ、いいだろう。
綺麗に顎へヒットしたし。
「なんだよー? もう一発くらいたいってぇ~? お前ら物好きだなー! あとヌルボット、日誌没収な。」
「「い"、いっでない……」」
顔を空に向けて飛んだ後仰向けに転がる二人に
近づいて行き、とりあえず道具を持ってなさそうなスレイニーを足で転がし、うつ伏せにする。
「んで? 持ってんのか、無いのかどっちなんだ? えぇ?」
スレイニーを左足で背中を踏みつけながら脅す俺に、何で俺だけ足蹴に…と下から聞こえるがスルーしてヌルボットを見ると、視線があった瞬間ハッ! となってゴソゴソしながら鞭と縄、蝶々型な仮面に網タイツを出してドウゾー! と俺に捧げてきた。
「……ハハッ、流石だ変態こんなもんまで…炎の追球!」
「Σああー!? SMセットがあぁー!!」
「ええー、エスエムッ!? 「ムッツリ天誅!」Σフギャ!」
上手く仮面とタイツだけを燃やす一仕事を終え、俺は鞭と縄どちらも手にすると打ちひしがれているヌルボットの首根っこを掴んで引きずり穴に向かって歩く。
「行くぞー。」
ムッツニーは後頭部に足跡をつけて返事がない、ただの屍のようだ。
◇◆◇◆
穴を覗きこみだいたいの深さを推測する。
俺が覗いている間もヌルボットは手と膝をついてまだ打ちひしがれている(orz)から、正気に戻れと頭を叩く。
ーΣペシッ
「Σピ!」
「いつまでそうしてンだ。」
俺がそう言うとヌルボットが起き上がり、じとーとした目で見てくる。
あんなもの使う機会は一生ないから問題ないだろと思うも、しゃがんで地面に文字を書き出したヌルボットに妥協してやる。
「しょうがねぇ…フゥ…今からヌルボットには任務を与える! 重大な任務だッ!!」
「ハッ! 重大な…!? な、なんでありますかッ!!」
軍隊風が好きそうだったからそれ仕様で話すとバッ! と此方を輝いて見つめてくるので作戦を教える。
「俺が、いや私がこの穴に水を流し込むから一緒に電流を流してターゲットを誘き出して欲しいッ! ただし! 殺さない程度でだッ! 加減がこの作戦のキーポイントとなる。出来るかね、ヌルボット隊員!」
足を肩幅に広げて胸を張り、腕を組んで告げるとヌルボットが敬礼をして返事をかえしてきた。
「ピィ! 任せて下さいッ! 隊長!」
「いや、団長だ!」
「じゃあオレ隊長がいいです団長!!」
自分の設定を押しつけるとヌルボットも願望を言い出したので、テンションがノってきたから威厳に満ちた顔のまま口調をゆるーくして攻撃してみた。
「まだまだお前には早いわ~! チョップッ!!」
「!? ズルいであります! この~モフモフテールッ!!」
「Σグッ! ご褒び…ゴホン! なかなかやるでわないか~からの目潰し!」
「Σピィ! そっちがその気なら~からのキツツキ攻撃!」
「Σウオッ!? 危な! なら、これでどうだ! ロンギヌスよ、私に力を~からの薙ぎ払い!」
「Σピィピ!? 武器とか卑怯だゾッ! 怒ったもんね、大網ゴロゴロからの~電げ「何で争ってるの!?」…ピ?」
「おお~救世主よ助かった! …止めてくれるのを。」
屍から復活したボロ雑巾のスレイニーがやっと此方に来てこの惨状を止めてくれた。
いつまで続くのかと焦ったぜ。
あの大網はシャレにならん…。
「喧嘩にしては過激だったよ! なにが原因なんだ?」
「「いやーノリで…」」
「あえて言うなら準備運動?」
「デンジャラスだな!?」
ヌルボットはそのままで俺は槍から鞭に装備を変える。
スレイニーには余った縄を渡して準備完了!
「…今から何するの? 何で俺、縄?」
嫌な顔をしたまま聞いてくるスレイニーに顔を向けずに面倒くさ気に答えてやる。
「はい、もうその件はやったから戦闘準備を一応しといて。」
「投げやり感半端なくない? …扱い悪いよー。」
ブーブー言う奴を無視して続ける。
「所詮お前は万年平隊員だ、ヌルより下だ。この世は縦社会なんだよ。諦めろ。」
「なんだそれ、パワハラだーー!!」
「何でもかんでもパワハラの一言で良いと思うなよムッツリ。これだからムッツニーはいつまでも平隊員なんだ。その得意な妄想で心の目で見て感じろ! 無駄にムッツリしてないで空気になれ!」
「やめて!? ムッツリ連呼しないでッ!!」
「ピッ、アニキィはムッツニーに進化した。」
「ヌルボットまでーー!?」
叫んでる野郎はほっといて俺は詠唱し始める、それを見たヌルボットが同じく電撃の準備をして、大網が雷を帯びる。
「流水!」
「電流!」
ーバシャー! ビビビビ Σビチビチビチ!
ーΣモグーーー!? ゴッゴッゴッ!
「よっしゃ! かかった。出てくるぞッ!!」
「ピィー! 何かな何かな♪」
「この鳴き声は、土竜の魔物? なんでまたわざわざ…?」
地面が揺れて段々音が近づいてくると、不意打ちの攻撃にビックリした茶色い物体が太陽を背に飛び出てきて着地に失敗。
ーΣドスンッ!!
「今だッ!! ムッツリ縛れ!!」
「もはや名前が入ってないぞ!? …まあ行くけどッ!!」
文句を言いながらもしっかり役割をこなす働きにニヤつきつつ、ヌルボットに暴れる様ならまた同じヤツをくらわせろと指示をして、俺は鞭を握って土竜の魔物に近づいてく。
スレイニーには離れてもらい、簀巻きみたいにグルグルにされてモゾモゾしている土竜の魔物に注目してもらうため地面に向かって鞭をふるう。
ーΣバチンッ!! Σモグゥー!?
「はい、ちゅーもーく! 土竜モドキ。」
「モ、モググギッ!」
「おーおー、威勢がいいねぇ元気がある方がこっちも嬉しいぜ。」
「ヴヴゥー!」
ーΣバチコンッ
「Σモグッ!!」
「今からお前にやって欲しい事があんだよ。あ、勿論これ拒否権無いから。暴れるなら…」
ーΣドゴーンッ!! バチバチ…
ヌルボットに合図を送って、雷を顔の横に落としてもらった。
「丸焦げです♪」
「お揃いだゾ♪」
「えげつない…。」
ニッコリ笑って目だけ鋭く見つめると土竜の魔物は冷や汗をたらしながら怯えた表情をかえしてきた。
「なあ、人様の畑を勝手に掘りたぐって餌を食べるとかさ、いいご身分だよな。俺だったらサクッと手足切り落として、傷口エグって最後に謝ったら首跳ねるね! そこんとこどう思う? 土竜モドキさん。」
「…モ、モグ…「ま、どっちでも殺るケド」Σモグゥー!?」
えらい人間臭い魔物だな、話が通じるなら何でもいいや。
コイツにはこれから大仕事をしてもらう、"残りの芋掘りを"、掘るのが得意なんだから楽な仕事だろ。
「と言う事で頼んだぞー。……そうそう逃げようとしたら空の毛玉が間違って雷を落とすかもしれないから、くれぐれも、仕事に専念するよーに!」
「ピィ! するよーに♪」
「……モグゥ…」
項垂れた土竜の魔物の縄を外して一応首だけ残し犬のリードみたいにするとヌルボットに渡す。
よしよし、じゃあレッツ芋掘りー!!
「うわ…手懐けちゃった……リシャがどんどん鬼畜に「聞こえてンぞー巨大な腕!」Σフビラッ!!」