17: 翼の生えた円盤
※少し修正しました。
手の形で赤く彩った葉っぱ、黄色で巾着を逆さにしたような葉っぱ、枯れて茶色い葉っぱが目立つ木々たちに畑が広範囲に広がっている景色。
秋の美しさを飾る町ハーベストに着いた。
このウェンディ大陸で一番、作物を育てて出荷しているので、ハーベスト産の物が多い。
なので別名、豊穣の町と呼ばれることもある。
飛行馬車から降りた俺達は早速ガジルの知り合いに会うため、待ち合わせ場所の冒険者ギルドへと向かう。
なぜ、待ち合わせが冒険者ギルドなのかというと、俺達がペロの家で騒いでいた時に2階に寝込んでいたガジルが事情をその知り合いに直通思念で説明してくれていたのだ。
それだったら、ギルドで指名依頼にするから気軽においでよと返事が返ってきたらしい。
報酬が収穫量につき相談と収穫した作物の一部を譲渡、俺からしたら一石二鳥だ。
お金も食料も貰えるなんて、いい仕事だ!
「ふんふーん♪」
「相棒がご機嫌だ!? 顔が弛んでる、変なもの食べたのか?」
「違うよヌルボット、どうせリシャの事だから報酬に色が付いたから喜んでるんだよ。」
そのとおり! なので、今は機嫌が良いからヌルボットが言った発言は聞かなかった事にしといてやる。
「ピィ? イロ? 芋に色が付いたら嬉しいのか? ピッ甘くなるのか、それは良いゾ!!」
「んーその色じゃないんだけど、解りやすく言うと、リシャが一番大好きな物が報酬の追加となったから、だよ。それに、今の芋は焼くと甘くて美味しいからヌルボットにとっても嬉しい報酬だね。」
「なるほどー! カネだな!! いつもこっそり貯金額を数えてて顔がオークになってるの、隠れて見てたから知ってるゾ! …ピッ! 言っちゃった。」
「浮かれてるから聞こえてないよ。」
いや、聞こえてますけど何か? 言いたい放題だな、しかもヌルボットに数えてたのバレてたのかよ…今度から気を付けよ。
ーガヤガヤ
「次の方どうぞー。」
「すいません。スレイニーで指名依頼が入ってると思うんですが。」
「確認しますね。先にギルドカードを提示して下さい。」
「はい、これで。」
「お預かりします。……Aランクのスレイニー様ですね、はい、ブラウニーさんからの指名依頼が入ってます。受理されますか?」
「お願いします。あと、連れも一緒にとなってる筈なんだけど…」
「えっと、少々お待ちください。……はい、大丈夫です。依頼人数は自由となってました。」
「よかった。」
冒険者ギルドに着いて、スレイニーが受付してくれている間、俺とヌルボットは中で一緒に経営している酒場のテーブル席に座って待っていた。
依頼が張り出してあるスペースはわりと空いていて、見やすかったので座りながら眺める。
やはり、農業関係の依頼が多くあって報酬もいい。
ちらほら他の連中が選んで行くのがみえる。
なかには、土竜の魔物や毛虫の魔物の討伐の依頼が随時依頼になっていて畑の守りは大変そうだ。
「げ?! カミキリ虫の魔物ハート柄の素材依頼とかある…」
「あの美味しい虫か?」
「ソウソウ。……まぢかよ、報酬50,000L! どんだけ欲しいんだ…。願掛けか?」
「ピィピィ! 愛の伝道師だな!」
「俺はそんなもん信じないね。」
「ははッ、リシャは夢がないなー。」
ニヤニヤしながら俺を見るスレイニー。
受付が終わったのかこちらに来て席に座って話に加わる。
「俺は自分でアタックする派だからね。願掛けぐらいで実るなら皆やってるよ。んで終わったの?」
「そして砕けるんだろ(笑)…うん、受理したら依頼主に連絡する様にしてたみたいだから、その内待ってたら来るよ。」
「うるせー、お前も似たようなもんだろ。」
「それは昔の話だろー。今は違うよ。」
「どうだか。」
「ピィピィ、ドングリの背比べ…」
◇◆◇◆
「じゃあ、三人とも今日はよろしくな!」
冒険者ギルドで暫く待っていたら依頼主のブラウニーさんが来て、早速自前の畑へと出発した。
畑に行く間に自己紹介をし合って、スレイニーはガジルの若い頃に似ているやらマイペースな所がそっくりだの、わざわざ依頼にしてもらってすみませんでしたと話をしたら、その分こき使うと笑ってくれたりと気さくな人で大分打ち解けた。
畑に着くとその広さに驚く。
村が作れるぐらいだろうか…え、これ俺達だけですんの? 終わらんぞと固まっていたら、ヌルボットがポンチョを脱いで収納し、鍬を取り出しては側に置いて、準備運動をしだした。
「おいっちにーさんし、ピィピィさんし♪」
「またそんな秘密道具だして…」
「ヌルボット気合い入ってるね! 俺も見習おう、ほらリシャも!」
「あー後で。」
なんか嫌な予感がするんで…
「そうかい? じゃあお先に!」
そう言ってスレイニーがヌルボットの珍妙な体操に加わった。
「ピィ、ピィ、足腰が大事だゾッ!」
「こ、こうか? なんか普通と違うような…恥ずかしいな。」
「普通を追い求めてたらいつまでたっても上達しないゾッ! 羞恥心なんかくそ食らえッ!!」
「そうなのか!? わかった、やってみる!」
二人が腰に手をあてて足をM字開脚し、しゃがんだまま左右に体重を移動させる、そして手を後頭部に持っていきキープして片足に重心をかけた時に胸を張る。
その状態でどんどん上に上がっていき、下がっていくのを繰り返して運動していた。
「……あれは何をしとるんだ?」
ブラウニーが微妙な顔で俺に聞いてきた。
「……多分スクワットの進化系かと。」
ちょっと苦しい返事をかえすが自信ないな、見てて他人のフリしたいぐらいに。
よかった、仲間に加わらなくて…
「ほーう、最近はそんな珍体操が流行ってンのか。おっさんついてけないなあ。」
「…ハッハッハ、俺もです…」
なにやら感心した様で笑いながら仕事に戻るブラウニーに、空笑いを返して俺も軽く準備してから先に仕事に取りかかった。
「ハイ、そこー! もっとスケベな感じでッ!!」
「スケベな!? 俺クローズ派のスケベなんでどんな感じかわかりませんッ!!」
「ピィ~、ムッツリかー。じゃあ目の前で清楚な人が脱いだら卑猥な下着を身に付けてたと想像してドウゾー!」
「卑猥な…!?」
「巨大な腕」
ーΣボコンッ
「「Σあべしッ!!」」
「お前ら公の場で白昼堂々と恥態晒してんじゃねーよッ!! スケベ心は埋めて芋を掘れ! バカヤロー!」
いつまでたっても終らないやりとりに、いい加減働けと魔法で制裁し、据わった目で倒れている毛玉とムッツリに説教する。
時間は有限なんだよッ!!
「イテテテ、何か目が醒めた気がする。」
「ピィ、博士が手を振ってた気がする。」
「そらよかったな。」
黙々と芋を掘り続けてまだ3分の1しか掘り出してなく、憂鬱になってくる。
腰痛いし、腕が疲れてきた…軟弱だなー。
俺の方が先に掘ってたのにスレイニーに負けるって…筋力か? 筋肉モリモリってか? ケッ!
やさぐれてる俺に、ヌルボットが飽きてきたのか畑で城を作りだした。
俺も近くで小休憩をとる。
スレイニーはまだ元気なのか掘り続けている。
目が醒めたって言ってたから独り頑張ってもらおう。
「うぬー! 固まらない。相棒水ちょうだい!」
「直接だと勢い有りすぎて泥沼になるぞ。バケツないの?」
「…んっと、あ、あった。これでいい?」
「……盥…まあ、いいか。」
魔法で水を出して盥に並々と満たしてやると、嬉しそうに水を手で掬い土に振りかける。
こねてこねて、ある程度固くなってきたら城壁を作り始めていく。
そんな様子を見ながら俺も土をいじり、門を作る。
「これドコの城モチーフ?」
「ペロの! メカニカのは複雑で難しいー。」
「確かに…。ああ、そういえば都市伝説であの城、実はゴーレムみたいに人形になって戦うらしいぞ。」
「ピィピ!? すげーー!! 見てみたい♪」
「なー! 俺も見てみたい。まあ、戦争がなくて平和な証拠だけど。」
「ピィー同盟国って良い事?」
「悪い事ではないと思うけどな、俺達国民は。」
「ふーん、いつか平和でも見れるかな?」
「…んー見れたらいいな。」
二人で和んで話していたらいつの間にかフラーワ城の土象が完成していた。
花の模様は落ちていた木の枝で彫って描き、クオリティの高い作品となった。
満足そうに鼻息を吹くヌルボットに凄いなーと頭を撫でてやる。
あ、やべ…泥が頭に付いたと一瞬固まるが、どうせもう汚れてるから一緒かと開き直って、ヌルボットを足で囲んで座り正面から両手でワシャワシャする。
ワックスみたいに良い感じに固まるのをいい事に、前に鬣について憧れてたから、寝ている毛皮を逆立てて襟巻きを作ってやる。
………ブフッ!!俺天才かも…。
「クックックッ…」
「さっきから何してんだ? 楽しそうだな!」
足の間にいるヌルボットに、俺は笑いを堪えてなんとか返事をかえす。
「鬣作ったからスレイニーに格好よくなった所を自慢してこいよ。」
「ピィ!? 相棒、ナイスタテガミ!! 行ってくるー♪」
「ぷッ、おういってら~!」 ニヤリ
嬉しくて堪らないのか、尻尾をブンブン振り回し、両手を広げてスレイニーの所へ飛んでいくヌルボットを見送り、独りニヤニヤする俺。
スレイニーの反応が楽しみである。
「ウオッ!? 円盤? …ヌルボットか!? どうしたんだそれ…ドーナツの穴に挟まったみたいに、益々丸い顔になってて可愛いな! イメチェンか?」
「Σピィ!?」
「ブフッ! アッハッハッハ!!」
「? リシャは何笑ってんだ?」
「騙したなーーーーーー!?」
思い描いたとおりの展開に笑いが止まらない、苦しくて涙が混じる。
そんな俺にプンスカ怒って追いかけてくるヌルボット、俺は追いつかれない様に逃げだす。
走りながらも笑いは止まらず、後ろを振り返ってまた笑いがおきる。
翼が生えた毛深い円盤が真っ正面のまま追いかけてくるようだ。
ああー面白かった!
「おーい! そろそろ手伝ってくれー!!」
あ、仕事だって事忘れてた。




