閑話: 暗中飛躍の影
少し修正しました。
一方その頃スミスの街、アルチザンのラボにて…
ヌルボットはリシャを送り出した後、直ぐにソファーで眠ってしまったので、お世話を頼まれたモンジとギンジはリシャから預かった朝御飯の弁当を机に置き、二人も椅子に座った。
「…何で教えた?」
「ん? 何をじゃ?」
強面の顔に更に影がかかって物々しく問いかけるギンジに、モンジはヌルボットを見たまま答えた。
「人種だ…。危険じゃないのか?」
「なんじゃ! 心配してくれたのか。」
茶化した様に言うモンジに、ギンジは溜め息を吐き、淡々と答える。
「アンタは俺の恩人だ…、初対面の奴だろう、信用できるのか? …もし、あの組織にバレたらどうするんだ? …本人の前では許可はしたが、良く知りもしないのに世話焼いてやるとか、御人好しも大概にしとけよ。自分が狙われているって事を自覚しろ。」
ギンジはモンジの正体の事で、色々苦労していたのを心配してか、苦言する。
常に狙われている事もあり、隠れて欲しいのに本人が堂々と自分の事をオープンにしているので、ギンジは歯痒くて堪らない。
今もモンジは視線を変えずに、話を聞いているのか静かにしている。
「…フム、今日はよう喋るのうギンジ。」
「アンタのおかげでなッ! それと、話してる時は相手見ろ!」
「Σいたた! 耳を引っ張るな! ちゃんと聞いておるぞ!」
話しているのに視線を向けないモンジに、ギュムッと耳を引っ張り顔を合わせさせるギンジ。
引っ張られたモンジは涙目になりながらギンジにやっと視線を向けた。
「真面目に聞けよ。大丈夫なのか?」
「……大丈夫じゃよ、あの者は絶対。なによりヌル坊がおるしの。逆にあの者達の方がな…」
ギンジの質問に答えながら、最後には難しそうにモンジは顔を歪めた。
「あの毛むくじゃらがか…? 二人に何かあるのか?」
「…まぁの。あやつ等は、の…「ん~ピカタが……ぶぇくしょん! ……グゥ…」ビクッ!?」
「ビクッ!?」
モンジ達が片寄会って話していた時、ヌルボットの寝言がいきなり聴こえて、二人が同時に驚き体が跳ねる。
バクバクと胸が鳴り、口を手で押さえて振り替えると、手をクイクイ手繰り寄せる様にして歯を食いしばり、眠っているヌルボットがいた。
「「………。」」
二人は沈黙したのち緊迫した空気が解けた。
「ふぅ。この話はここまでじゃな。本人が知らんで話す事でもなかろう。」
「…? 知らないのか?」
「多分…気づいてないのだろう。」
「…そうか。」
日が登り、窓から日差しが入って顔が照らされ、部屋も明るくなり、静かに流れていた時間が動き出した。
二人も、いつもの雰囲気に戻る。
「ほれ、ヌル坊が寒そうじゃ! 上にかける物持ってくるから、お主は仕事に行きんしゃい。」
「…ああ、頼む。」
モンジは、今日の仕事が無く、ヌルボットの世話を全面的に自分がすると決めていた為、ギンジを急かして仕事に行かせた。
こじゃれたブランケットが無いので、タオルケットを持ってヌルボットにかけてあげると、モンジはどこか懐かしそうに、でも眉は悲しそうに下がり、ヌルボットの背中を撫でた。
「……残酷じゃの…、まだ続けるのか…。」
("裁きの執行"めッ!)